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さて勇者一行はどちらに、とアリスは会場を見回した。
誰とも会わずに済ませられるなら、それに越したことはない。
オリヴァーのことは気がかりではあるが、今更だ。別れも告げずに逃げ出したアリスに、オリヴァーを心配する権利なんてないのだから。
と、その時だった。
「あーら、アリスじゃないの。役立たずのくせに、ちゃっかり会場に潜り込んで……恥ずかしくないわけ?」
甲高い声で嫌味ったらしく。忘れもしない。この声は、ミモザだ。
アリスは「見つかるの、早すぎ」と肩を落とした。
ミモザにはアリスを見つける探知機でも搭載されているのではないだろうか。
会場は広いのに、ものの数分で見つかってしまった。
せっかくのかわいい顔を醜く歪めて、ミモザは足早にアリスへ向かってくる。
途中、飲み物を配るボーイからワインを奪うのも忘れない。
その後ろを、忠犬アスターと忠犬グロリオがついてきていた。
(まさか……まさかとは思うけど、それを私にかけるつもり⁈)
グラスを持つミモザの手が、大きく振りかぶられる。
(いやいや、待って! このドレス、マシュー殿下からの贈り物なのよ⁉︎ 台無しにするわけにはいかないわ!)
カツン、とアリスの足が後退る。
だけど、それくらいで避けられるものではない。
グラスからワインが飛び出て、アリス目掛けて降り注いで──
──バシャン。
ワインが滴る。
ドレスと同じ、深緑色の髪から。
(……知ってる。ミモザはこういう女だった)
ミモザはアリスのことを、敵視している。
こんな華やかな場であっても、アリスに恥をかかせるためならば、喜んでワインをぶっかけるだろう。
そのあとは決まって、「わざとじゃないんですぅ」だ。
(だけど、この場合はどうするのかしら?)
誰とも会わずに済ませられるなら、それに越したことはない。
オリヴァーのことは気がかりではあるが、今更だ。別れも告げずに逃げ出したアリスに、オリヴァーを心配する権利なんてないのだから。
と、その時だった。
「あーら、アリスじゃないの。役立たずのくせに、ちゃっかり会場に潜り込んで……恥ずかしくないわけ?」
甲高い声で嫌味ったらしく。忘れもしない。この声は、ミモザだ。
アリスは「見つかるの、早すぎ」と肩を落とした。
ミモザにはアリスを見つける探知機でも搭載されているのではないだろうか。
会場は広いのに、ものの数分で見つかってしまった。
せっかくのかわいい顔を醜く歪めて、ミモザは足早にアリスへ向かってくる。
途中、飲み物を配るボーイからワインを奪うのも忘れない。
その後ろを、忠犬アスターと忠犬グロリオがついてきていた。
(まさか……まさかとは思うけど、それを私にかけるつもり⁈)
グラスを持つミモザの手が、大きく振りかぶられる。
(いやいや、待って! このドレス、マシュー殿下からの贈り物なのよ⁉︎ 台無しにするわけにはいかないわ!)
カツン、とアリスの足が後退る。
だけど、それくらいで避けられるものではない。
グラスからワインが飛び出て、アリス目掛けて降り注いで──
──バシャン。
ワインが滴る。
ドレスと同じ、深緑色の髪から。
(……知ってる。ミモザはこういう女だった)
ミモザはアリスのことを、敵視している。
こんな華やかな場であっても、アリスに恥をかかせるためならば、喜んでワインをぶっかけるだろう。
そのあとは決まって、「わざとじゃないんですぅ」だ。
(だけど、この場合はどうするのかしら?)
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