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ネリアン王国の端には、コイズという村がある。
通称、はじまりの村。
そこは、異世界から召喚された勇者が、最初に訪れる村ということで有名だった。
コイズ村には特産品もなく、有名なものは何一つない。
あえて挙げるとするならば、宿屋の一人娘が、田舎に置いておくには惜しいくらいの美人だということくらいだろうか。
宿屋の一階にある酒場は、彼女目当ての男たちで毎夜大盛況である。その恩恵を受けて、客室のグレードは王都のそれに及ばないものの、田舎にしては豪華だと評判は上々だ。
村の周辺では、ただの村人が鍬や鎌といったどこにでもある農具で倒せそうなくらい弱っちいモンスターたちが、のんびりと草原を散歩している。
主に生息しているのは、サイダー味のゼリーみたいなモンスターとか、毛玉にコウモリの羽が生えてるみたいなモンスターである。
つまり、勇者なりたての新米を放り出すのに、ちょうど良い環境なのだった。
「ああ! 困ります、勇者サマ!」
コイズ村の村人Dことダグラスの家に不法侵入を果たしているのは、何を隠そう新米勇者のオリヴァー・ハミルトンである。
陽の光が当たるとキラキラと光り輝く金の髪。前髪は年頃の青年らしく綺麗にセットされている。
サイドをツーブロックに刈り上げているせいか、少々ヤンチャそうな印象ではあるが、それを補うくらい、オリヴァーの顔面偏差値は素晴らしい。
まさに世界屈指の美術館に飾られた絵画のモデルのように、その顔にはあらゆる宝が寄せ集められていた。
綺麗な弧を描く眉、スッと通った鼻梁、厚すぎず薄すぎない絶妙に上品な唇。
そして何より印象的なのは、その目だ。清く美しいその目は赤子のように曇りなく、翠玉を削って嵌めたとしてもここまでの凛々しい輝きは放っていないだろう。
だが、彼の素晴らしさは顔面だけに留まらない。
今は質素に村人と同じような布の服を着ているが、だからこそ、彼の肉体の素晴らしさが際立っている。やり過ぎない程度に鍛えられた筋肉、スラリと長い手足、しゃんと伸びた背。やはりこちらも、美術館に納めたい彫刻のような肉体美である。
およそ欠点らしい欠点が見当たらない。
通称、はじまりの村。
そこは、異世界から召喚された勇者が、最初に訪れる村ということで有名だった。
コイズ村には特産品もなく、有名なものは何一つない。
あえて挙げるとするならば、宿屋の一人娘が、田舎に置いておくには惜しいくらいの美人だということくらいだろうか。
宿屋の一階にある酒場は、彼女目当ての男たちで毎夜大盛況である。その恩恵を受けて、客室のグレードは王都のそれに及ばないものの、田舎にしては豪華だと評判は上々だ。
村の周辺では、ただの村人が鍬や鎌といったどこにでもある農具で倒せそうなくらい弱っちいモンスターたちが、のんびりと草原を散歩している。
主に生息しているのは、サイダー味のゼリーみたいなモンスターとか、毛玉にコウモリの羽が生えてるみたいなモンスターである。
つまり、勇者なりたての新米を放り出すのに、ちょうど良い環境なのだった。
「ああ! 困ります、勇者サマ!」
コイズ村の村人Dことダグラスの家に不法侵入を果たしているのは、何を隠そう新米勇者のオリヴァー・ハミルトンである。
陽の光が当たるとキラキラと光り輝く金の髪。前髪は年頃の青年らしく綺麗にセットされている。
サイドをツーブロックに刈り上げているせいか、少々ヤンチャそうな印象ではあるが、それを補うくらい、オリヴァーの顔面偏差値は素晴らしい。
まさに世界屈指の美術館に飾られた絵画のモデルのように、その顔にはあらゆる宝が寄せ集められていた。
綺麗な弧を描く眉、スッと通った鼻梁、厚すぎず薄すぎない絶妙に上品な唇。
そして何より印象的なのは、その目だ。清く美しいその目は赤子のように曇りなく、翠玉を削って嵌めたとしてもここまでの凛々しい輝きは放っていないだろう。
だが、彼の素晴らしさは顔面だけに留まらない。
今は質素に村人と同じような布の服を着ているが、だからこそ、彼の肉体の素晴らしさが際立っている。やり過ぎない程度に鍛えられた筋肉、スラリと長い手足、しゃんと伸びた背。やはりこちらも、美術館に納めたい彫刻のような肉体美である。
およそ欠点らしい欠点が見当たらない。
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