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第四話 お約束は身を助ける

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 幸いにして、馬車置き場にまで情報は及んでおりませんでしたので、のりこみ公爵家の王都タウンハウスに戦略的撤退逃げるんだよぉでございます。ガラガラ回る車輪、馬車はタウンハウスに向かいます。お父様もとい公爵家当主さまは、風見鶏のごとく強いほうになびく方なので、何がどう転がって政務要員として差し出されるかもしれません。ピンクさん(仮)は政務をやる気があまりみうけられませんでしたし?

  わたくしは、ほっと息をつきました。気が抜けたのか右脚と頭わき腹が叫びたくなるように傷みます。わたくしは手のひらに意識を集中させ水回復初級ヒールを唱えました傷む場所に順繰りに当てて痛みの軽減を念頭において魔法を発動いたします。そして水継続回復初級リジェネも順繰りに回復させました。雀の涙ほどですがやらないよりはマシです。タウンハウスまで香茶がさめない距離程度の時間がございます。
さて、どういたしいたしましょう?

『さてどうする?お譲さん』

「貴方はどなたですか?」

『さてね?言ったところで信じるも信じないのもお嬢さん次第だがいきさつはちと長い。とりあえずはお嬢さんの危機意識が生み出した空耳だと思ってくれ。おちついて身体と貞操が安全なら、お前さんが望むなら語るさ』

「では空耳さん、どうすればいいと思われますか?」

『お嬢ちゃんイイ性格してんなー好きだぜそゆの、ん-とりあえず優先目的とかシンプルに並べて行こうか、お父ぁんはさっき見たけど駄目っぽいんだな』

「ええ、まぁそういう方なので高確率高い値をつけた所に売られますね」

『世知辛いねぇ』

「仲良くしろとはいわないのですか、大抵のかたは親子の融和や道徳をお出しになりますのに」

『ひとによりけりだよ、臨機応変で?』

 くつくつと意識の中で苦笑する青年はおそらく『売られた』経験者だ。垣間見えた青年の記憶に、憧憬をもって見上げる天空の飛影と水中から槍をたずさえて躍り出る面影、後悔と苦々しさと困惑が絡みつく黄金の薔薇……なんとなくわたくしに声をかけた理由と彼の出自を察してしまう断罪の広間の緋色の石、『売られた』経験王国の秘された歴史でなんとなく該当者がいるが、ソレは今問うべきことではないのですわ。



『こゆのどぉ?目標~~俺氏からの提案です。』ファンファーレを口ずさむ青年はごく軽い調子で立案提案してきた。

1生き延びる(父公爵はアテにならない)
2貞操を守って逃げる。国外がベスト  海越えれたならなお善し
3下半身厨達にぎゃふんと言わせる(これは最終目的かな)

『俺氏的的オススメコースは、王都公爵邸タウンハウスで物資補給してそのままアシ(馬)確保で南下ここ王都だろ、南下すりゃ海に出れる、海に入ればアレの追跡は切れる。アレが出てきたらペロッと無かったことになってたぶん一番酷い結果になると思う。アレから逃げろ王家から逃げろ。俺からはなーただ、王家に期待すんのはやめとけ』

『で、どうよ、逃げる場所アテある?』

  誰かが俯瞰視点でこの会話を見れば奇妙だと感じていただろう、流れ落ちる血を拭うのも時間がもったいないと策をねり最善を探る令嬢と、ハナから救助や弁明を切り捨てて逃亡前提で案を出す思考の声、どちらも踏みつけ搾取され蔑ろにされ情など蒸発して歪み切った人格達の会話だった。真摯に対応して積み上げてきた成果と努力を、高位の尊い身分の気まぐれでなかったことにされてきた諦念と妄念の結果の歪んだ結果の会話である。

「ありますわ、母の母国南諸島国ですわ。あちらもいろいろゴタゴタしてますが、ハルバリアよりはまだマシかとなにせ食料が自給できてますし、冒険者組合もありますし」

『南諸島国!そうか千年結界が無くなったんだな、母君の母国ってぇと1世代前以上に交流できてる?海超えいいねぇアレの支配は海を超えれねぇこれいい選択だ』

「ええ?そうですの。万が一南諸島王家がハルバリアと呼応してもあそこは島々からなる国、最悪板切れのような小舟でも潮さえ読めれば渡れますの。わたくし机上ですが全部頭に入っておりますので。売られてもなんとかして……ですわね」

『あちらの親戚もアレ?』

「言わぬが花ですわ、誰もが自分と自分の近しい身内が可愛いモノですわ。でなければハルバリアこの地獄で王妃候補なぞやっておりませんわ」

  困っている時都合よく助けてくれることなどそうあるものではない。たいがいが困っている時したり顔で手を差し伸べて高く売れる方向へと手を引いていく輩はいる。そういう輩のにおいというか言い分はたいてい
「あなたの為」
という、お題目……だいたいはそいつの懐のためか愛でている身内の為になのだたいていは毒親毒友毒親戚というやつだ。彼はまず聞いてきた『助けはいるか?』と助けを押し売りしてこない分だけまだすこし信用してもいいかなとは思ったのだ。

  『うん、イイネイイネ、ノッて来たついでにステータスオープンとアイテムボックス試してみようか?』

「すてーたすおーぷん?あいてむ??あれは伝説の勇者プレイヤー様の専用の御業では?」

『あ、知ってるんだ(*^-^*)良き良き説明省けてラッキー、俺氏がくっついているんだアルかもしれない。俺氏のは使えんかったwもしかしてお嬢さんのほうがメインとしてくっついているかもお試しお試し♪いっちゃえー……タダだし』

「え、ええまぁ試すだけなら期待しないで下さいよ?」

 わたくしは、ノリノリの空耳の勢いにやや引きながらやけくそで唱え、中に手をかざし念を込めて叫んだ。

「ステータスオープン!」
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