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魂の在り処-プロローグ-
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闇夜の木々の狭間で、光が踊っていた。
両手で包んでしまえそうな、小さく穏やかな光の群れ。人型に発光する妖精たちが、森の中を散策するように、ふわふわと飛び交っている。
草花を覗き込んだり、泉の上で密集して輪をつくったりと、気ままな様子でじゃれていた。
そんな戯れを、不意に一陣の風が乱した。妖精たちがわっと散らばり、茂みや木の葉の陰にそれぞれ身を潜める。
一匹だけ、取り残されたように、宙にいた。
その風を巻き起こして行った二人の後ろ姿を、じっと見て、首を傾げるような所作をした。
それはきっと、よく、似ていたからかもしれない。その二人が、妖精たちと。
二人は木々の間を抜け、空高くに場所を移した。
どちらも、飛んでいた。妖精たちのように。
ただ、妖精たちとは異なり、背には翼があった。
妖精たちの光をかき集めたような、神秘的な光の翼が。両肩の間で、虹色に明滅する美しい結晶を生やし、そこからこぼれ出るようにして。
「お願いっ! もとのお姉ちゃんに戻って!」
二人のうち、一人が訴えかけるように叫んだ。
人形のような美貌をした少女だ。そして、相手も同じ顔だった。
銀に海の色を混ぜ込んだような髪に、翡翠を削り取って嵌め込みでもしたような切れ長の瞳。胸元で輝く結晶は、群を抜いて、美しかった。
明確な違いは、髪の長さくらいのものだろうか。
悲痛な顔で訴えている少女は短く、空虚な表情で応じないでいる少女は、腰まで長く伸びていた。
両者ともに、胸や背にあるものと同様の結晶の花を、両手に咲かせていた。
髪の短い少女は、両手の甲から槍の穂先が突き出るようにして。
髪の長い少女は、両手自体が結晶に包まれて鋭く伸び、曲剣のように。
不意に髪の長い少女が動き――瞬間、二つの結晶が激突した。カッと、光が弾けたあとには、髪の短い少女が、どうにか両手を交差させて、長大な刃をその間で受け止める姿があった。
「もう、やめて! お姉ちゃんっ!」
刃の先で押し込まれながらも、髪の短い少女が、必死に呼びかけた。
髪の長い少女が、眉根をわずかに寄せたように、なった。どこか、悲しそうに。
それは、呼びかけた側の願望がみせた幻だっただろうか。
かすかな変化に希望を抱いた髪の短い少女が、刃越しに跳ね除けられ、闇空を降下させられていった。
やっとのことで、体勢を立て直して顔を上げ、
「お姉ちゃ――」
絶句した。
髪の長い少女が、煌々とした光を長大な刃に溜め込み、振りかぶっていたのだ。
あっという間もなかった。
刃が振り下ろされ、解放された光の帯が、闇夜の空を大きく斬り裂いた。
壮絶でいて、神々しい光の奔流だった。
開闢さながらの光景は、奇跡の一つでも、穿たれた暗闇から生み落としても、不思議ではなかった。
しかし、過ぎ去ったあとには、なにも残さなかった。
髪の長い少女も、髪の短い少女も、いなくなっていた。
ただ、遥か遠くに聳える大樹だけが、不変の異彩を放つばかりでいる。
絶えず、虹色の輝きをまき散らしつづける――虹の大樹だ。この世界のどこにいても、見失わないでいられる存在。
その樹はなにもかも、知っているかもしれない。
二人の少女の行方を。その行く末すらも。
両手で包んでしまえそうな、小さく穏やかな光の群れ。人型に発光する妖精たちが、森の中を散策するように、ふわふわと飛び交っている。
草花を覗き込んだり、泉の上で密集して輪をつくったりと、気ままな様子でじゃれていた。
そんな戯れを、不意に一陣の風が乱した。妖精たちがわっと散らばり、茂みや木の葉の陰にそれぞれ身を潜める。
一匹だけ、取り残されたように、宙にいた。
その風を巻き起こして行った二人の後ろ姿を、じっと見て、首を傾げるような所作をした。
それはきっと、よく、似ていたからかもしれない。その二人が、妖精たちと。
二人は木々の間を抜け、空高くに場所を移した。
どちらも、飛んでいた。妖精たちのように。
ただ、妖精たちとは異なり、背には翼があった。
妖精たちの光をかき集めたような、神秘的な光の翼が。両肩の間で、虹色に明滅する美しい結晶を生やし、そこからこぼれ出るようにして。
「お願いっ! もとのお姉ちゃんに戻って!」
二人のうち、一人が訴えかけるように叫んだ。
人形のような美貌をした少女だ。そして、相手も同じ顔だった。
銀に海の色を混ぜ込んだような髪に、翡翠を削り取って嵌め込みでもしたような切れ長の瞳。胸元で輝く結晶は、群を抜いて、美しかった。
明確な違いは、髪の長さくらいのものだろうか。
悲痛な顔で訴えている少女は短く、空虚な表情で応じないでいる少女は、腰まで長く伸びていた。
両者ともに、胸や背にあるものと同様の結晶の花を、両手に咲かせていた。
髪の短い少女は、両手の甲から槍の穂先が突き出るようにして。
髪の長い少女は、両手自体が結晶に包まれて鋭く伸び、曲剣のように。
不意に髪の長い少女が動き――瞬間、二つの結晶が激突した。カッと、光が弾けたあとには、髪の短い少女が、どうにか両手を交差させて、長大な刃をその間で受け止める姿があった。
「もう、やめて! お姉ちゃんっ!」
刃の先で押し込まれながらも、髪の短い少女が、必死に呼びかけた。
髪の長い少女が、眉根をわずかに寄せたように、なった。どこか、悲しそうに。
それは、呼びかけた側の願望がみせた幻だっただろうか。
かすかな変化に希望を抱いた髪の短い少女が、刃越しに跳ね除けられ、闇空を降下させられていった。
やっとのことで、体勢を立て直して顔を上げ、
「お姉ちゃ――」
絶句した。
髪の長い少女が、煌々とした光を長大な刃に溜め込み、振りかぶっていたのだ。
あっという間もなかった。
刃が振り下ろされ、解放された光の帯が、闇夜の空を大きく斬り裂いた。
壮絶でいて、神々しい光の奔流だった。
開闢さながらの光景は、奇跡の一つでも、穿たれた暗闇から生み落としても、不思議ではなかった。
しかし、過ぎ去ったあとには、なにも残さなかった。
髪の長い少女も、髪の短い少女も、いなくなっていた。
ただ、遥か遠くに聳える大樹だけが、不変の異彩を放つばかりでいる。
絶えず、虹色の輝きをまき散らしつづける――虹の大樹だ。この世界のどこにいても、見失わないでいられる存在。
その樹はなにもかも、知っているかもしれない。
二人の少女の行方を。その行く末すらも。
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