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番外編
6、仲いいな
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王宮から少し歩いた森の中に、塀が建ててあった。
そういえば、以前から工事をしていた気がする。アフタルの管轄だから、シャールーズは関わっていなかったが。
「その中なんです。入ってください」
アフタルに指示され、彼女を抱えたままシャールーズは塀の中に入った。
塀は三面だけあり、残る一面は湖に面している。湖畔の近くに、広いくぼみがあった。
くぼみの全体は、大きめの石で覆われ、その中には水が満ちている。
池かと思ったが、よく見ると風に湯気が流されていた。
「ね、素敵でしょう? 温泉なんですよ。カイたち、騎士団の体力が余って掘っていたら、温泉が出たんですよ」
「ほう、そうだったのか」
シャールーズは納得したが、温泉ってのはわりと深く掘らないと出ないんじゃなかったか? 故郷のシンハは火山島だったから、熱水泉や温泉もなじみがあるが。
(あいつら、どれだけ体力がありあまってんだよ)
「こっちも見てください。そのまま湖に出られるように。ほら、もう波が打ち寄せる場所なんですよ」
アフタルは頬を上気させて、いくつかの温泉を案内してくれた。
大小合わせて五つ。サラーマにあった公衆浴場ほどの大きさはないが、屋内の施設だった公衆浴場とは違い、空の下なので解放感がある。
「ゆくゆくは、国民のための公衆浴場も造りたいと思っています。男性、女性それぞれに分かれますが。古くからある社交場ですからね」
「それに財源にもなるしな」
「まぁ、シャールーズったら。そんな……まぁ、一つの意見として聞いておきますけど」
施設を見せたことで、アフタルは満足したようだ。
心配したほどには酔っていない。かといって、完全に酔いが醒めているわけでもない。
これくらいなら平気だろ。
「じゃあ、戻りましょう」
「え? まさかもう終わりなのか?」
さも、驚いたような声を、シャールーズはあえて出した。
首を傾げるアフタル。そして警戒の色を露わにするラウル。
うん、お前は立派な守護精霊だよ。
アフタルを害する者が、なんであってもお前は彼女を守るだろう。
(けどな、ラウル。間違っちゃいけない。俺は例外で特例で、特別枠なんだからな)
「アフタル大公殿下」
「はい、なんでしょう?」
シャールーズの呼びかけに、アフタルがにこやかに返事をする。
「俺、風呂に入りたくなりました」
「あらまぁ。そうですね、さっき戻ったばかりですものね。お湯も入ってますし、どうぞ。ゆっくりくつろいでくださいね」
にこにこ。アフタルは優しい笑みを浮かべる。
だが、それもここまでだ。
「俺、大公殿下と一緒がいいです」
「はい?」「はいー?」
アフタルとラウルが声をそろえた。お前ら、本当に仲いいな。こちとら二日間も王宮を空けていたんだ。ちょっと嫉妬しちまうぞ。
「あ、あの。シャールーズ。冗談はよしてください」
「俺はいたって本気だが」
「無理ですよ。外ですもの」
「けど、外で入るために周囲を塀で囲ってんだろ。自然の風を感じて入るんだよな。じゃなかったら、ちゃんと建物の中に温泉を造るだろ」
シャールーズの指摘に、アフタルは口ごもった。
困ったようにラウルに視線を向けているが、ラウルもどう反論していいのか分からないようだ。
「あと、脱衣室が見えないけどな。湖畔で全部脱いじまっていいのか?」
「きゃー」
ばっ! と自分の上着をとって上半身を露わにしたシャールーズを見て、アフタルが手で顔を覆う。
うん。そんなに酔ってないな。
けど、なんでしらふの時は、俺の裸が苦手なんだ?
「つ、作りますから。脱衣室」
「うん。そのうちな。今からじゃ間に合わない」
逃げようとするアフタルの手首を、シャールーズは掴んだ。ラウルが二人の間に割って入って来たが、それを睨みつける。
「なんだ、ラウル。お前もアフタルと一緒に風呂に入りたいのか?」
「まさか! 失礼なことを言わないでください」
「じゃーあ、外で待ってるんだな。ちゃんとアフタルのことは俺が守るから。なんせ、元守護精霊だからな。任せておけ」
不満顔のラウルの背中を、シャールーズは押して追い出した。
そういえば、以前から工事をしていた気がする。アフタルの管轄だから、シャールーズは関わっていなかったが。
「その中なんです。入ってください」
アフタルに指示され、彼女を抱えたままシャールーズは塀の中に入った。
塀は三面だけあり、残る一面は湖に面している。湖畔の近くに、広いくぼみがあった。
くぼみの全体は、大きめの石で覆われ、その中には水が満ちている。
池かと思ったが、よく見ると風に湯気が流されていた。
「ね、素敵でしょう? 温泉なんですよ。カイたち、騎士団の体力が余って掘っていたら、温泉が出たんですよ」
「ほう、そうだったのか」
シャールーズは納得したが、温泉ってのはわりと深く掘らないと出ないんじゃなかったか? 故郷のシンハは火山島だったから、熱水泉や温泉もなじみがあるが。
(あいつら、どれだけ体力がありあまってんだよ)
「こっちも見てください。そのまま湖に出られるように。ほら、もう波が打ち寄せる場所なんですよ」
アフタルは頬を上気させて、いくつかの温泉を案内してくれた。
大小合わせて五つ。サラーマにあった公衆浴場ほどの大きさはないが、屋内の施設だった公衆浴場とは違い、空の下なので解放感がある。
「ゆくゆくは、国民のための公衆浴場も造りたいと思っています。男性、女性それぞれに分かれますが。古くからある社交場ですからね」
「それに財源にもなるしな」
「まぁ、シャールーズったら。そんな……まぁ、一つの意見として聞いておきますけど」
施設を見せたことで、アフタルは満足したようだ。
心配したほどには酔っていない。かといって、完全に酔いが醒めているわけでもない。
これくらいなら平気だろ。
「じゃあ、戻りましょう」
「え? まさかもう終わりなのか?」
さも、驚いたような声を、シャールーズはあえて出した。
首を傾げるアフタル。そして警戒の色を露わにするラウル。
うん、お前は立派な守護精霊だよ。
アフタルを害する者が、なんであってもお前は彼女を守るだろう。
(けどな、ラウル。間違っちゃいけない。俺は例外で特例で、特別枠なんだからな)
「アフタル大公殿下」
「はい、なんでしょう?」
シャールーズの呼びかけに、アフタルがにこやかに返事をする。
「俺、風呂に入りたくなりました」
「あらまぁ。そうですね、さっき戻ったばかりですものね。お湯も入ってますし、どうぞ。ゆっくりくつろいでくださいね」
にこにこ。アフタルは優しい笑みを浮かべる。
だが、それもここまでだ。
「俺、大公殿下と一緒がいいです」
「はい?」「はいー?」
アフタルとラウルが声をそろえた。お前ら、本当に仲いいな。こちとら二日間も王宮を空けていたんだ。ちょっと嫉妬しちまうぞ。
「あ、あの。シャールーズ。冗談はよしてください」
「俺はいたって本気だが」
「無理ですよ。外ですもの」
「けど、外で入るために周囲を塀で囲ってんだろ。自然の風を感じて入るんだよな。じゃなかったら、ちゃんと建物の中に温泉を造るだろ」
シャールーズの指摘に、アフタルは口ごもった。
困ったようにラウルに視線を向けているが、ラウルもどう反論していいのか分からないようだ。
「あと、脱衣室が見えないけどな。湖畔で全部脱いじまっていいのか?」
「きゃー」
ばっ! と自分の上着をとって上半身を露わにしたシャールーズを見て、アフタルが手で顔を覆う。
うん。そんなに酔ってないな。
けど、なんでしらふの時は、俺の裸が苦手なんだ?
「つ、作りますから。脱衣室」
「うん。そのうちな。今からじゃ間に合わない」
逃げようとするアフタルの手首を、シャールーズは掴んだ。ラウルが二人の間に割って入って来たが、それを睨みつける。
「なんだ、ラウル。お前もアフタルと一緒に風呂に入りたいのか?」
「まさか! 失礼なことを言わないでください」
「じゃーあ、外で待ってるんだな。ちゃんとアフタルのことは俺が守るから。なんせ、元守護精霊だからな。任せておけ」
不満顔のラウルの背中を、シャールーズは押して追い出した。
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