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五章

8、天の女主人

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「シャールーズ。そういう口のきき方は、女主人に失礼です」

 くそ生意気なアイスブルーがやって来た。見た目年齢が五歳くらいなのに大人ぶっているから、生意気さも倍増だ。
 シャールーズより少し後に生まれた蒼氷のダイヤモンド。身長は、シャールーズより少し低くて、ひょろっとしている。

「なんだよ、アイスブルー。いい子ちゃんかよ」
「礼儀をわきまえろと言ってるんです」
「知らね」

 シャールーズは、ラウルに舌を出すと、女主人にとびついた。

「うわっ」と声を上げた女主人が、世にも恐ろしい形相でシャールーズを見下ろしている。

「おばさん、あんまり怒ると老けてみえるぜ。せっかくの美人なのによ」
「それはどうも。だが、そなたも自分の石に見合うくらい落ち着いた性格になってみては、どうだ?」
「やだよ、あんな地味な石。俺、アイスブルーの石の方がいい」
「無理を言うものではない」
「だってよー。目立たないし、つまんねぇよ」

 やれやれ、と女主人はしゃがみこんでシャールーズの頭を撫でた。

「地味ではなく、渋いと言うのだ。覚えておきなさい」
「分かんね」
「まぁ、子どもには難しいか。だがいずれ、そなたの石を何よりも美しいと言ってくれる人が現れる。そうだな、シンハでは無理だろうが。そなたらを待つ人が、西にいる。いずれはそこへ向かうがいい」
「こいつと一緒に行くのかよ」

 シャールーズは、まだ細くて小さな指でラウルを指さした。
 ぼくを指さすな、とラウルが怒るから、余計にやめられない。そういうもんだ。

「そなた達二人と、この子らだ」

 女主人が開いたてのひらに、宝石が二つ載せられていた。

「まったく。先ほどはシャールーズのせいで、落としそうになったではないか」
「別に落ちたって平気だろ? そんなにやわな石なのかよ」
「そういう問題ではない。この子らは、鳥で言えばまだ卵なのだ。孵化する前のな。丁寧に扱ってやらねばならぬ」

 諭すように告げると、女主人は一つをシャールーズの手に、もう一つをラウルの手に渡した。

「この子達と、島を出るんですか?」
「うむ、そうだ。サファーリンとコーネルピン。私が命を吹きこむ最後の宝石だ」
「なんで最後なんだよ。おばさん、仕事やめちゃうのか?」
「……仕事」

 シャールーズの問いかけに、女主人は少しひるんだ。
 子どもに説明は難しいとでもいう風に、指で額を押さえて目を閉じている。

 その時、外から象の鳴き声が聞こえてきた。
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