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二章

15、手をつないで ※欧之丞視点

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 お日さまが、さんさんだ。
 縁側にいた俺は、まぶしくて、じーっとお日さまを見ていたら。目がちかちかした。

「あかんやん、欧之丞。太陽を見たら、目が見えへんようになるんやで」
「ほんとに?」
「……多分」

 こたにいは、俺に麦わらぼうしをかぶせてくれた。二人、おそろいのぼうし。
 俺の方が小さいから、すぐに目元までかくれてしまう。

「はよせんと、母さんが待っとうで」
「うん」

 ようやく外に出ていいって、先生が言ったんだ。首のあざももう消えたし、にがい薬ものまなくていい。
 それにお出かけも自由なんだって。

 三太九郎が来るくらい、いい子で寝てたからだ。

「じゃあ、お出かけしましょうか」

 廊下から、絲おばさんに声をかけられた。
 ふだんは着物を着てることがおおいのに。今日の絲おばさんは、スカートをはいてた。うーん、スカートとういうか上の服とスカートがいっしょになった服。
 俺は、お清が届けてくれたシャツと半ズボンだ。こたにいも俺とにた服。
 
「お外は暑いから、帽子が飛ばされないように気を付けてね」

 そう言いながら、絲おばさんはフリルのついた白い傘をさした。
 雨じゃないのに、傘だ。
 しかも雨がふったら、雨もりしそう。

「日傘っていうんやで。パラソルともいうなぁ」
「ひがさ? パラソル?」

 こたにいが教えてくれる。こたにいは何でも知っててすごいなぁ。

 そういえば、お母さんも……そう考えて俺は首をぶんぶんとふった。
 もう、思い出したくもない。知らない、あんな人。
 
「さぁ、手を繋ぎましょうね。迷子になったら大変ですもの」
「でも、母さん。日傘さしとうから、一人としかつながれへんで」
「あら、そうね」

 日焼けのしていないきれいな手を、絲おばさんはさしのべた。けど、こたにいに言われて、こまったように眉を下げた。

「俺がつなぐ。それで、もうかたほうの手でこたにいとつなぐ」

 ふふん。こういう時は、先に言ったものが勝つんだ。
 こたにいは、なんでか蒼一郎おじさんや絲おばさんと手をつなぐのをはずかしがる。
 もーぉ、ぜいたくもの。

「ぼくは別に手ぇつながんでも、迷子にならへんで」
「なるもん。こたにいが迷子になったら大変だもん」

「むむっ」と、こたにいは口をへの字にした。

「そうよ。今日は浜に行くから、いつもと違うの。手を繋ぎましょ」

「ほら」と、俺はこたにいに向かって手をさしだした。
 こたにいは、しばらく考えこんだ後でまわりを見まわした。

 上がりかまちっていうのかな? 玄関のとこにいた男の人たちが、こたにいから目をそらした。
 それをかくにんしてから、こたにいは俺に手をのばした。

「ほら。兄ちゃんがつないだるから」
「うんっ」
「そないに嬉しいんか?」
「うん。すっごいうれしい」

 なんでか分からないけど。こたにいは、たたき(っていうんやと思う)にしゃがみこんで両手で顔をかくした。

「どうしたの? 吐きそうなのか?」
「ちゃう」

 しばらく、じーっとしていたこたにいだけど。うすい耳が真っ赤になってるのが見えた。
 あと、組の人たちが背中を向けて肩をふるわせている。

 なんなんだろ。変なの。
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