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二章
2、緊縛【2】※これ以降、暴力的な表現があります
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「わたしは殺されるのですか」
「いーや、ぎりぎりのところで生かしておくさ。そして何度でも嬲って犯して。ああ、でも心が病んでしまって死を選ぶ娘もいるなぁ」
まるで子どもが虫の肢を毟っていくような残酷さ。しかもそれを楽しむだなんて。
「よかったなぁ。お嬢さんのままなら、こんな底の底の世界があるとは知らぬままだったろう? 社会勉強という奴ができるんだ、あんたは幸せだよ」
「嘘です。幸せなはずがないわ」
口ごたえが気に入らなかったのか、男はわたしの頬をぶちました。
その力の強さに、わたしの体が飛ばされます。
古びてささくれだった畳。切れた藺草が肌に擦れて、頬だけではなく腕も脚も痛みました。
「そんなえらそうな態度をとったら、客は自分が遊女に舐められていると思って怒るぞ。舐めるなら、別なものを舐めないとな」
くっくっと楽しそうに笑いながら、男はわたしの襦袢の胸をはだけました。
やめて、何をするの。
わたしは必死に抗いましたが、そのたびに叩かれて。
痛みで顔は熱くなり、唇は切れて口の中に血の味が広がりました。
「抵抗するから、痛い目に遭うんだ。素直になった方が、ずっと楽だぞ」
もう答える元気もありません。
男はぐったりしたわたしの腕を取り、後ろ手に縛り上げたんです。
「そうだなぁ。お前さんは単に快楽を覚えるよりも、痛みを悦ぶ体に仕立て上げよう。最近は客の注文もうるさくてな」
何を言っているの? 話す内容が分かりません。
シュッという音が聞こえ、座敷牢が一瞬明るくなりました。
見れば、男が燐寸を擦って、何かに火を点けています。
燈? いいえ、違います。
それは碗のような形をした香炉で、そこから細く煙が立ちました。
その香炉が、わたしの顔の側へ置かれたんです。
「これは……」
「大丈夫。気持ちよくなる香だ。痛いのは嫌だろう? だからたんと吸えばいい」
そんな言葉を信じられるはずがありません。呼吸を我慢していると、男は今度は薄紅の襦袢に包まれたわたしのお腹を殴ったんです。
「う……っ、げほ……げほっ」
「ほら。息をしないと苦しいぞ」
お腹が痛くて、痛くて。
わたしは古ぼけた畳に爪を立てました。
その時です。男がわたしの背中を踏みつけたのです。
息苦しさと痛みに、わたしは息を吸ってしまいました。
顔のすぐ近くにある香炉。そこから流れる煙を直接吸ってしまったのです。
甘ったるくて、鼻腔にはりつくような香り。
しだいに頭がぼうっとしてきます。
どうしてこんな無体な仕打ちを受けないといけないの。家を奪えば、それで済む話ではないの?
そう訴えようとしても、言葉になりません。
「文句が言いたそうだな。だが恨み言なら甘ちゃんの父親に言うんだな」
両腕を縛られて自由に動くことも出来ないわたしの足元に、男は何かを落としました。
かろうじて上体を起こして見れば、それは棒でした。
「そろそろ香も効いてくる頃だ。調教をしないとな」
「やめて……後生ですから、やめてください」
「やめるもなにも。ここで馴らしておかないと、客を取った時に痛い思いをするだけだぞ」
畳を這って逃れようとするわたしの足首を掴み、男は無理やり開きました。
「いやっ。お願いです、見逃してください」
どんなにもがいても暴れても、男の力に敵うはずがありません。
わたしは襦袢を乱しながら、棒の両端にそれぞれの足首を縄で縛られたのです。
「いーや、ぎりぎりのところで生かしておくさ。そして何度でも嬲って犯して。ああ、でも心が病んでしまって死を選ぶ娘もいるなぁ」
まるで子どもが虫の肢を毟っていくような残酷さ。しかもそれを楽しむだなんて。
「よかったなぁ。お嬢さんのままなら、こんな底の底の世界があるとは知らぬままだったろう? 社会勉強という奴ができるんだ、あんたは幸せだよ」
「嘘です。幸せなはずがないわ」
口ごたえが気に入らなかったのか、男はわたしの頬をぶちました。
その力の強さに、わたしの体が飛ばされます。
古びてささくれだった畳。切れた藺草が肌に擦れて、頬だけではなく腕も脚も痛みました。
「そんなえらそうな態度をとったら、客は自分が遊女に舐められていると思って怒るぞ。舐めるなら、別なものを舐めないとな」
くっくっと楽しそうに笑いながら、男はわたしの襦袢の胸をはだけました。
やめて、何をするの。
わたしは必死に抗いましたが、そのたびに叩かれて。
痛みで顔は熱くなり、唇は切れて口の中に血の味が広がりました。
「抵抗するから、痛い目に遭うんだ。素直になった方が、ずっと楽だぞ」
もう答える元気もありません。
男はぐったりしたわたしの腕を取り、後ろ手に縛り上げたんです。
「そうだなぁ。お前さんは単に快楽を覚えるよりも、痛みを悦ぶ体に仕立て上げよう。最近は客の注文もうるさくてな」
何を言っているの? 話す内容が分かりません。
シュッという音が聞こえ、座敷牢が一瞬明るくなりました。
見れば、男が燐寸を擦って、何かに火を点けています。
燈? いいえ、違います。
それは碗のような形をした香炉で、そこから細く煙が立ちました。
その香炉が、わたしの顔の側へ置かれたんです。
「これは……」
「大丈夫。気持ちよくなる香だ。痛いのは嫌だろう? だからたんと吸えばいい」
そんな言葉を信じられるはずがありません。呼吸を我慢していると、男は今度は薄紅の襦袢に包まれたわたしのお腹を殴ったんです。
「う……っ、げほ……げほっ」
「ほら。息をしないと苦しいぞ」
お腹が痛くて、痛くて。
わたしは古ぼけた畳に爪を立てました。
その時です。男がわたしの背中を踏みつけたのです。
息苦しさと痛みに、わたしは息を吸ってしまいました。
顔のすぐ近くにある香炉。そこから流れる煙を直接吸ってしまったのです。
甘ったるくて、鼻腔にはりつくような香り。
しだいに頭がぼうっとしてきます。
どうしてこんな無体な仕打ちを受けないといけないの。家を奪えば、それで済む話ではないの?
そう訴えようとしても、言葉になりません。
「文句が言いたそうだな。だが恨み言なら甘ちゃんの父親に言うんだな」
両腕を縛られて自由に動くことも出来ないわたしの足元に、男は何かを落としました。
かろうじて上体を起こして見れば、それは棒でした。
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「やめて……後生ですから、やめてください」
「やめるもなにも。ここで馴らしておかないと、客を取った時に痛い思いをするだけだぞ」
畳を這って逃れようとするわたしの足首を掴み、男は無理やり開きました。
「いやっ。お願いです、見逃してください」
どんなにもがいても暴れても、男の力に敵うはずがありません。
わたしは襦袢を乱しながら、棒の両端にそれぞれの足首を縄で縛られたのです。
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