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「いつもルシファ様達には御世話になっていると、父からは聞いています」
「おいっ、ベル!ココでもその呼び名はやめろ。医師や看護婦も居るんだ」
「申し訳ありません、暁さん」
ベルフェゴールと名乗った少年は、急いで廊下に目をやった。
「ベル・・鈴彦って呼んで良いかしら?011って事は他にも居るのかしら?」
「【鈴彦】ですか?良いですね。はい、僕は+α、つまりアクセラレータで急成長して作戦に登用された特殊仕様で、他は通常の成長をしています。因みに遺伝子は山梨博士のクローンが元になっています」
『アクセラレータで急成長』の言葉に、戦闘で苦戦したブラックが反応した。
「【アクセラレータ】って、あの成長促進剤か?」
「はいっ、ソレですね。副作用も有りますし、脳に埋め込んだ機器もありますから僕も短命ですが」
彼のシリアルナンバーが中途半端なのは、機器の埋め込みや調整で失敗した個体があるからだ。
「君も実年齢は半年くらいだよね?学習やサポートはインプラント経由でAIから?」
わずか半年で、社会性の持てる10歳程度の子供や、戦闘型キメラノイドに教育するのは、ほぼ洗脳に近い手法と、AIなどのリモートアクセスが必要となる。
勿論だが、この様な無理をすればリスクとして寿命などに影響する。
「はい。ただ、他のベルフェゴールが普通に育つまでの中継ぎですから、二十年も生きれば充分ですがね。皆さんが開発したAIのリリスからの支援が無くても、戦闘や個体認識、帰巣などはできますよ」
理性的に動けるニューフェイスは、本能をコントロールするのに長けている。
ベルフェゴールも、それが兄弟の為だと言うのなら尚更だろう。
そして、彼等ネフィリムに知恵を貸しているのが、ニューフェイスの開発した人工知能だったのだ。
「今回の【ショー】は、装備や詳細を連絡するとリアリティが無くなるって事で、開催場所すら極秘にしてましたからね」
「コンバットスーツの関係者が拐われた事で、予想はできたけど、こっちの通信は警察も聞いていたから、知らなくて正解だったよ」
「しかし、これが【ヒーローのニューフェイス】の実態とは、資料として戦隊物動画を見ていた私でも、ビックリですよ」
「我々は自ら【ヒーロー】と名乗った事は無いし、人類の未来を担うものとしては、清濁併呑まなくてはならないのだよ」
全ては計画的マッチポンプ。
まさに、テレビやステージでやられている【ヒーローショー】そのものだったのだ。
舞台では多少のアドリブも有るが、裏では怪人とヒーローが、共に笑顔で話している世界。
ただ、そのお陰で『この世界は上手く回る』のだとも言える。
「仕方ないでしょ?だって既存人類は、国や言語、宗教が変わろうと、争いを求め他者を見下そうとし、自他を騙して略奪をしようとするのよ。悪い事は全て他者のせいで、自分達の行いを根本から正そうとはしないじゃない」
「放っておけば、環境を無視して喰い潰しながら見境いなく増え続け、喰い潰せば他を侵略して同族殺しや破壊を繰り返す。つまりは、人間という【種】自体が世界にとって。また、人間自身にとって【害悪】でしかないのだよ」
「僕はまだ、人類について勉強中ですが、まるでゴキブリやネズミじゃないですか?」
「下手に知能があるだけタチが悪いよ」
ここまで聞いて、ベルフェゴールこと鈴彦が顎に手を当てて首を捻る。
「で、僕たちも【同族殺し】ですか?」
「あの猿共を【同族】と?存在理由もなく、理性や合理性も無い本能に振り回されて、未来を閉ざしている奴等を?」
彼等ニューフェイスの言う事は、いちいちモットモな話だ。
例えば、生物学的統計にしたがって見れば、自然環境での人間サイズの哺乳類が日本の面積に棲息する数は、およそ一千万なのに、原始人以上の生活をして環境破壊をしている人間の数は、いったい何人居ると言うのだろう?
「現実的に【ニューフェイス】と称して、我々を別種扱いしているのは、既存人類の方だしな」
ニューフェイス達の親には、その認識は無いのかも知れないが。
「そもそも、彼等既存人類によって産み出された私達は、【ヒーロー】じゃなくて【後継者】なんだよ。だから、古い存在を整理修正して、場合によっては処分するのが【存在理由】だしね」
元来【子孫】とは、いずれ滅びる己の存在した証を、未来へ残す利己的行為だ。
その為に親は、己の命を犠牲にしてでも子孫を守る事がある。
「この地球上に、今の我々以外に、明確な存在理由を持つ生物は居ない。生態系の全滅は危惧すべきだが、論理的に見ても『一種族を滅ぼしてはならない』という根拠は無いしね」
彼等の思考に、生存本能や感情優先な面は希薄だ。
確かに、存在目的の無い有限寿命の生物は、未来に存在を残す論理的必要が無いのだから。
そう言った観点から見れば、『人類の存在を未来に残す』と言う存在理由を持つニューフェイスの行動は理に叶っている。
立場的には【遺産相続人】の方が似合っているのだろうか。
「中には『遺伝子操作されている』と言う者も居るけど、既存の生物も己のクローンではなく他者の遺伝子を混ぜ込んで遺伝子操作しているんだから、違いはないんだよね。どちらも人間自身の手で行われているし」
「『人間以外の遺伝子情報が有る』と言うなら、SFの様に異星人との間にできた子供は【子孫】じゃないとか言うのかしら?」
親の遺伝子が全く使われていないのであれば、それも言えるのかも知れないが、そうなると養子縁組すらも否定もされる。
現在のニューフェイス達が、永続的に子孫が残せる事は、既に非合法な実験によって証明されている。
色んな意味で黙殺されてはいるが、実は暁達より以前にも【ニューフェイス】は存在していたのだ。
まさに、【清濁併呑】なくては、人類は滅びてしまう状況なのだった。
「それに、これは【同族殺し】じゃなくて【胎盤のアポトーシス】みたいなものなのよ」
「アポトーシス?」
鈴彦は、脳内に埋め込まれたインプラントを使って【胎盤】と【アポトーシス】を検索した。
胎盤:哺乳類が受精卵を育成する為に、子宮内膜を変化させて母体との中継をはたす細胞郡。出産後に役目を終えると死滅して体外に排出される。
アポトーシス:多細胞生物が全体をより良い状態に保つ為、一部の細胞が積極的に引き起こす自滅行動で、あらかじめ予定されていた細胞の死。
子孫を残す為に胎盤の細胞は存在し、役目を終えれば母体の負荷になる為に自滅するのだ。
アポトーシスについて他の例をあげるならば、人間の指は野球のグローブの様な形で発生する。
発達の途中で指と指との間にある細胞が自滅する事で、誕生後の生活に便利な五本の独立した指が出来上がるのだ。
この様に多細胞生物は、後世の為に自分自身の一部を自滅させる事がある。
人間の存在と遺伝子の大半を残しつつ、負担となる既存の人類を処分する【ニューフェイスとネフィリム】の行いは、確かに人類単位のアポトーシスと言えなくはなかった。
その目的は人間の存続であり、彼等も一応は【人間の遺伝子】を持っているのだから。
「今回の【ショー】のタイミングですが、人工子宮やアクセラレータの資料は、海外の共同研究者の方が先に口を割りましたので、事前に用意できたのですが、国内では山梨博士を拐って既成事実を作った方が良いと考えた結果です」
「確かに、その方が父の行動を抑えられるから、スケジュールを横流ししたんだけど、上手くいったわね」
山梨博士の誘拐に手を貸したのは、娘である貴子だったのだ。
「コンバットスーツの情報も頂いておりましたが、やはり情報源として関係者を誘拐してからにしました。それで用意が整いましたので、今回の【ヒーローショー】を開催できた次第です」
「今回は【負け】の形になったけど、何回かは【勝ち】も演出しないと、ニューフェイスの価値が下がるから、よろしく頼むよ」
「了解しておりますよ。ヒーローは勝ちが多くないと、見栄えがわるいですからね」
キメラノイドは、所詮は目的の為の消耗品扱いなのだ。
「今回は、ニューフェイス反対団体のバスを乗っ取ったんだって?」
「内部の協力者から、慰安旅行の情報を得ましたから。それに合わせて、他の複数の反対団体をアミューズメント施設に集める工作もして、効率を上げました。懸賞で当たったチケットには放射線のマーカーを仕込んでおいて、現地で集中的に処分しています」
【放射線マーカー】は、敵味方識別にも使われていて、キメラノイドに装備されているコンバットスーツで識別ができる。
ニューフェイスやネフィリムは、環境保全の為に人口抑制の必要性を感じている。
その為に、一見して無差別殺人を行っている様に見えるが、その被害者の中には、圧倒的に【ニューフェイス反対団体】や、その支援者が多く割り当てられているのだった。
「流石だね。平行して頼んである【方舟計画】も順調みたいだし」
「我が国では日本製のタンカーを遺伝子組み換え施設に改造して、既に十隻が出航しています。更に順次増やしてもいます」
方舟計画は、ニューフェイス達が別団体を使って密かに行っている、後進国へのニューフェイス化支援だ。
ニューフェイス化の有無による格差が、国家間戦争に至らない様にする為でもある。
これらキメラノイドの活動資金は、ニューフェイスから巧みな手段で提供されている。
多くの物資も【廃棄品】などの名目で譲渡されているのだ。
「全ての物資は、我々に【脅迫】された形で協力させられている人間により横流しされて来ています。本人達は『脅されてしかたなく』って本気で思っていますよ」
「ソレすらも、計画的にやってるんだがねぇ。厳しい監査が入らない時点で気付くべきなんだが」
組織の上の者が横流しをさせているのだから、詳しい監査を入れさせる筈もない。
「ところで、人口抑制に核兵器を使うって話も聞いたのですが、本当ですか?」
「まだ、決定ではないよベル。宗教国家にニューフェイスを産み出されると酷い洗脳をされかねないから、内乱と病気で国ごと殲滅できなかった時の最終手段さ」
「そういった国の中には、生活の為に一応は教義に従っているけど、従いたくない者も居るんじゃない?」
「そんな者には、支援をした方が良いのかな?少し考えよう」
新しいニューフェイスの教育は、既存のニューフェイスが行う予定になっている。
方舟計画でも、教育プロセスを組み込んである。
だが、特に一神教は排他的である為に好戦的だ。
その破壊的な環境で育てられては、【破壊的なニューフェイス】になってしまう可能性があるのだ。
もし、一神教のニューフェイスが産まれる様であればネフィリムが出張して、その研究施設ごと破壊し尽くす事になっている。
「まだまだ大変だけど、ベル達には頑張ってもらわないとね」
「もうすぐ動けなくなる父の代わりも、頑張ります」
検温の時間になり看護婦の足音が近付くと、ベルフェゴールは姿を消していた。
「おいっ、ベル!ココでもその呼び名はやめろ。医師や看護婦も居るんだ」
「申し訳ありません、暁さん」
ベルフェゴールと名乗った少年は、急いで廊下に目をやった。
「ベル・・鈴彦って呼んで良いかしら?011って事は他にも居るのかしら?」
「【鈴彦】ですか?良いですね。はい、僕は+α、つまりアクセラレータで急成長して作戦に登用された特殊仕様で、他は通常の成長をしています。因みに遺伝子は山梨博士のクローンが元になっています」
『アクセラレータで急成長』の言葉に、戦闘で苦戦したブラックが反応した。
「【アクセラレータ】って、あの成長促進剤か?」
「はいっ、ソレですね。副作用も有りますし、脳に埋め込んだ機器もありますから僕も短命ですが」
彼のシリアルナンバーが中途半端なのは、機器の埋め込みや調整で失敗した個体があるからだ。
「君も実年齢は半年くらいだよね?学習やサポートはインプラント経由でAIから?」
わずか半年で、社会性の持てる10歳程度の子供や、戦闘型キメラノイドに教育するのは、ほぼ洗脳に近い手法と、AIなどのリモートアクセスが必要となる。
勿論だが、この様な無理をすればリスクとして寿命などに影響する。
「はい。ただ、他のベルフェゴールが普通に育つまでの中継ぎですから、二十年も生きれば充分ですがね。皆さんが開発したAIのリリスからの支援が無くても、戦闘や個体認識、帰巣などはできますよ」
理性的に動けるニューフェイスは、本能をコントロールするのに長けている。
ベルフェゴールも、それが兄弟の為だと言うのなら尚更だろう。
そして、彼等ネフィリムに知恵を貸しているのが、ニューフェイスの開発した人工知能だったのだ。
「今回の【ショー】は、装備や詳細を連絡するとリアリティが無くなるって事で、開催場所すら極秘にしてましたからね」
「コンバットスーツの関係者が拐われた事で、予想はできたけど、こっちの通信は警察も聞いていたから、知らなくて正解だったよ」
「しかし、これが【ヒーローのニューフェイス】の実態とは、資料として戦隊物動画を見ていた私でも、ビックリですよ」
「我々は自ら【ヒーロー】と名乗った事は無いし、人類の未来を担うものとしては、清濁併呑まなくてはならないのだよ」
全ては計画的マッチポンプ。
まさに、テレビやステージでやられている【ヒーローショー】そのものだったのだ。
舞台では多少のアドリブも有るが、裏では怪人とヒーローが、共に笑顔で話している世界。
ただ、そのお陰で『この世界は上手く回る』のだとも言える。
「仕方ないでしょ?だって既存人類は、国や言語、宗教が変わろうと、争いを求め他者を見下そうとし、自他を騙して略奪をしようとするのよ。悪い事は全て他者のせいで、自分達の行いを根本から正そうとはしないじゃない」
「放っておけば、環境を無視して喰い潰しながら見境いなく増え続け、喰い潰せば他を侵略して同族殺しや破壊を繰り返す。つまりは、人間という【種】自体が世界にとって。また、人間自身にとって【害悪】でしかないのだよ」
「僕はまだ、人類について勉強中ですが、まるでゴキブリやネズミじゃないですか?」
「下手に知能があるだけタチが悪いよ」
ここまで聞いて、ベルフェゴールこと鈴彦が顎に手を当てて首を捻る。
「で、僕たちも【同族殺し】ですか?」
「あの猿共を【同族】と?存在理由もなく、理性や合理性も無い本能に振り回されて、未来を閉ざしている奴等を?」
彼等ニューフェイスの言う事は、いちいちモットモな話だ。
例えば、生物学的統計にしたがって見れば、自然環境での人間サイズの哺乳類が日本の面積に棲息する数は、およそ一千万なのに、原始人以上の生活をして環境破壊をしている人間の数は、いったい何人居ると言うのだろう?
「現実的に【ニューフェイス】と称して、我々を別種扱いしているのは、既存人類の方だしな」
ニューフェイス達の親には、その認識は無いのかも知れないが。
「そもそも、彼等既存人類によって産み出された私達は、【ヒーロー】じゃなくて【後継者】なんだよ。だから、古い存在を整理修正して、場合によっては処分するのが【存在理由】だしね」
元来【子孫】とは、いずれ滅びる己の存在した証を、未来へ残す利己的行為だ。
その為に親は、己の命を犠牲にしてでも子孫を守る事がある。
「この地球上に、今の我々以外に、明確な存在理由を持つ生物は居ない。生態系の全滅は危惧すべきだが、論理的に見ても『一種族を滅ぼしてはならない』という根拠は無いしね」
彼等の思考に、生存本能や感情優先な面は希薄だ。
確かに、存在目的の無い有限寿命の生物は、未来に存在を残す論理的必要が無いのだから。
そう言った観点から見れば、『人類の存在を未来に残す』と言う存在理由を持つニューフェイスの行動は理に叶っている。
立場的には【遺産相続人】の方が似合っているのだろうか。
「中には『遺伝子操作されている』と言う者も居るけど、既存の生物も己のクローンではなく他者の遺伝子を混ぜ込んで遺伝子操作しているんだから、違いはないんだよね。どちらも人間自身の手で行われているし」
「『人間以外の遺伝子情報が有る』と言うなら、SFの様に異星人との間にできた子供は【子孫】じゃないとか言うのかしら?」
親の遺伝子が全く使われていないのであれば、それも言えるのかも知れないが、そうなると養子縁組すらも否定もされる。
現在のニューフェイス達が、永続的に子孫が残せる事は、既に非合法な実験によって証明されている。
色んな意味で黙殺されてはいるが、実は暁達より以前にも【ニューフェイス】は存在していたのだ。
まさに、【清濁併呑】なくては、人類は滅びてしまう状況なのだった。
「それに、これは【同族殺し】じゃなくて【胎盤のアポトーシス】みたいなものなのよ」
「アポトーシス?」
鈴彦は、脳内に埋め込まれたインプラントを使って【胎盤】と【アポトーシス】を検索した。
胎盤:哺乳類が受精卵を育成する為に、子宮内膜を変化させて母体との中継をはたす細胞郡。出産後に役目を終えると死滅して体外に排出される。
アポトーシス:多細胞生物が全体をより良い状態に保つ為、一部の細胞が積極的に引き起こす自滅行動で、あらかじめ予定されていた細胞の死。
子孫を残す為に胎盤の細胞は存在し、役目を終えれば母体の負荷になる為に自滅するのだ。
アポトーシスについて他の例をあげるならば、人間の指は野球のグローブの様な形で発生する。
発達の途中で指と指との間にある細胞が自滅する事で、誕生後の生活に便利な五本の独立した指が出来上がるのだ。
この様に多細胞生物は、後世の為に自分自身の一部を自滅させる事がある。
人間の存在と遺伝子の大半を残しつつ、負担となる既存の人類を処分する【ニューフェイスとネフィリム】の行いは、確かに人類単位のアポトーシスと言えなくはなかった。
その目的は人間の存続であり、彼等も一応は【人間の遺伝子】を持っているのだから。
「今回の【ショー】のタイミングですが、人工子宮やアクセラレータの資料は、海外の共同研究者の方が先に口を割りましたので、事前に用意できたのですが、国内では山梨博士を拐って既成事実を作った方が良いと考えた結果です」
「確かに、その方が父の行動を抑えられるから、スケジュールを横流ししたんだけど、上手くいったわね」
山梨博士の誘拐に手を貸したのは、娘である貴子だったのだ。
「コンバットスーツの情報も頂いておりましたが、やはり情報源として関係者を誘拐してからにしました。それで用意が整いましたので、今回の【ヒーローショー】を開催できた次第です」
「今回は【負け】の形になったけど、何回かは【勝ち】も演出しないと、ニューフェイスの価値が下がるから、よろしく頼むよ」
「了解しておりますよ。ヒーローは勝ちが多くないと、見栄えがわるいですからね」
キメラノイドは、所詮は目的の為の消耗品扱いなのだ。
「今回は、ニューフェイス反対団体のバスを乗っ取ったんだって?」
「内部の協力者から、慰安旅行の情報を得ましたから。それに合わせて、他の複数の反対団体をアミューズメント施設に集める工作もして、効率を上げました。懸賞で当たったチケットには放射線のマーカーを仕込んでおいて、現地で集中的に処分しています」
【放射線マーカー】は、敵味方識別にも使われていて、キメラノイドに装備されているコンバットスーツで識別ができる。
ニューフェイスやネフィリムは、環境保全の為に人口抑制の必要性を感じている。
その為に、一見して無差別殺人を行っている様に見えるが、その被害者の中には、圧倒的に【ニューフェイス反対団体】や、その支援者が多く割り当てられているのだった。
「流石だね。平行して頼んである【方舟計画】も順調みたいだし」
「我が国では日本製のタンカーを遺伝子組み換え施設に改造して、既に十隻が出航しています。更に順次増やしてもいます」
方舟計画は、ニューフェイス達が別団体を使って密かに行っている、後進国へのニューフェイス化支援だ。
ニューフェイス化の有無による格差が、国家間戦争に至らない様にする為でもある。
これらキメラノイドの活動資金は、ニューフェイスから巧みな手段で提供されている。
多くの物資も【廃棄品】などの名目で譲渡されているのだ。
「全ての物資は、我々に【脅迫】された形で協力させられている人間により横流しされて来ています。本人達は『脅されてしかたなく』って本気で思っていますよ」
「ソレすらも、計画的にやってるんだがねぇ。厳しい監査が入らない時点で気付くべきなんだが」
組織の上の者が横流しをさせているのだから、詳しい監査を入れさせる筈もない。
「ところで、人口抑制に核兵器を使うって話も聞いたのですが、本当ですか?」
「まだ、決定ではないよベル。宗教国家にニューフェイスを産み出されると酷い洗脳をされかねないから、内乱と病気で国ごと殲滅できなかった時の最終手段さ」
「そういった国の中には、生活の為に一応は教義に従っているけど、従いたくない者も居るんじゃない?」
「そんな者には、支援をした方が良いのかな?少し考えよう」
新しいニューフェイスの教育は、既存のニューフェイスが行う予定になっている。
方舟計画でも、教育プロセスを組み込んである。
だが、特に一神教は排他的である為に好戦的だ。
その破壊的な環境で育てられては、【破壊的なニューフェイス】になってしまう可能性があるのだ。
もし、一神教のニューフェイスが産まれる様であればネフィリムが出張して、その研究施設ごと破壊し尽くす事になっている。
「まだまだ大変だけど、ベル達には頑張ってもらわないとね」
「もうすぐ動けなくなる父の代わりも、頑張ります」
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