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09 変化
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国会中継は毎回行われる訳ではない。
それに、むしろ法案などは、実質的には国会以外の個室で決まるものだ。
国会は『正式に討論して決まりましたよ』と言う形式に過ぎず、質疑応答の内容は事前に双方に渡されている。
「では、賛成多数により、当法案は可決されました」
「横暴だ!日本人を滅ぼす気か?売国奴」
談合に加われなかった者と、表向き反対派のサクラが声をあげるが、民主主義の日本では、【正しいか否か】ではなく、【多数か否か】で物事が動く。
金や権力、圧力に屈した者が多ければ、悪法でも通るのが民主主義の政治だ。
「先生まで賛成票に立つとは、どうしたんですか?」
「君は国連決議の内容を知らんのかね?学者共が【ニューフェイスの標準化】を打ち出して、国連でも採択されたんだよ」
若手議員の言葉に、古株の野党議員が理由を答えた。
「他国がどうであろうと、日本人は日本人を通せば良いではありませんか?」
確かに、国が他国の政策に影響を受けるのは、独立国として恥ずべき行為とは言える。
「そんな事を言っていると、日本人はオールドタイプとして無能扱いされ嫌われて、海外では負け組になってしまうぞ。取引も雇用も、結婚さえも不利になるだろう」
実際に遺伝子組み替えが行われていて高い能力を持っていても、【日本人】というだけで差別されてしまうだろう。
国際結婚に関しても、誰でも健康で優れた子供を欲しがるので、オールドタイプとの婚姻は遠慮がちになる。
「それに、ニューフェイスになれば、食生活や価値観も変わる。大飯喰らいの上に環境に弱く、多くの物資を必要とするオールドタイプは、経済的にも貧困化するだろうな」
能力に差があるのだから、仕事をしても収入も変わる。
加えて食費や医療費などの支出が多ければ、格差は広がる一方になるだろう。
「国際的な流通も変化していく中で取り残されては、それこそ貿易で成り立っている日本は、亡国の危機に陥るだろう」
「しかし!」
頭で分かっていても、やはり、人為的な行為を受け入れ難い人間は居る様だ。
「それでは、【遺伝子組み替え】ではなく、彼等の言う通り【遺伝子治療】と考えてはどうだろう?先天的に癌や糖尿病になりやすい者の治療と同じと考えれば、気も変わるのではないか?自分の持病を子にも受け継がせたい親など居ないだろう?」
先生と呼ばれた議員の言葉は、至極正論と言えた。
世界の常識が変わる中で、日本だけが変わらずにいたら、将来的にどうなるか?
若手議員は呼吸を整え、少し考えて首を左右に振った。
「改革派だ政権交代だと騒いでいても、我々は考え方も保守派のオールドタイプだったんですね。政権交代を阻んでいたのは、他ならぬ私達だったなんて」
若手議員は、うつむいて溜め息をつくのだった。
この法案可決により、警視庁にも動きがあった。
「遺伝子治療推進法。通称【ニューフェイス法】の可決により、遺伝子科学の山梨博士の救出が優先事項となった」
「まって下さい。山梨博士よりも先に救助しなくてはならない被害者は、まだまだ居るんですよ」
誘拐された科学者や技術者は、何かを作らされている様で、それが終われば多くが殺されて放置されていた。
大まかに言えば、ほぼ拐われた順に殺されているのだ。
発信器が変な移動をしたと思って調査すれば、死体が打ち捨てられていたというわけだ。
それから、拉致されていた場所を捜索してももぬけの殻だし、準備や調査が不十分なまま突入しても、被害者の死体が残るだけだ。
「俺だってなぁ~」
刑事部長が嫌な顔をするが、部下の刑事の一人が、あからさまに話題を変える。
「それにしても、標準化タイプにしろ軍用にしろ、誘拐までしてニューフェイス誕生用の知識を集めて、設備をつくってるんでしょ?大半はもぬけの殻って事は、ソレを何処かに持っていってるんでしょう?」
「そうなんだよ。各地で設備を作って、本拠地にでも持ち込んでるんだろうな?」
変わった話題に対して、部長が話を合わせてきた。
科学者などに取り付けた発信器で、拐われた先は分かる。
そこで、ニューフェイスやキメラノイド等を作る設備を作らせ、実際に遺伝子組み替えを行っているらしいのだが、その後に設備の全てを移動させている様なのだ。
「確かに、誘拐犯の本拠地で科学者に研究させれば、一発で所在がわかっちゅいますからね」
誘拐犯側も、リスク管理ができている様だ。
「兎にも角にも、【山梨博士優先】は、決定事項だ。守らない奴は守りきれないからな」
「それって『政府の方針』って事ですね?」
「大人なんだから、これ以上は言わせるな」
刑事部長も含めて、納得している者は少ないが、警察の動きはマスコミ以外にも、警察内部の監査機関にも【見張られている】のだ。
日本の警察機構には、海上保安庁も含まれる。
所属は国土交通省の外局で、海上における人命や財産の保護や法令違反の予防と捜査、鎮圧を任務とする。
つまりは違法な船舶を取り締まる役目が有るが、一般の登録された船舶を監視しない訳ではない。
「おいっ、佐々木。さっきから何を見てるんだ?」
「えっ?って、なんだ羽山主任ですか?いや、ちょっと不審なタンカーが有りましてね」
佐々木捜査員がパッドで見ていたのは、同一と思われるタンカーの複数の写真だった。
「この写真の船か?たいして、おかしな点は見えないが」
同じ船を、幾つかの角度で写した写真達だが、特に奇異な印象はない。
「中東でトラブルがあり、一年くらい出るのが遅くなった船なんですが、問題なのは入国後の吃水線の変化なんですよ」
【吃水線】とは、船を水に浮かべた時の船の沈み具合で、重い荷物を積むほど船は水中に沈み込む。
「中東帰りのタンカーなんだ。各地で原油を下ろせば吃水線も変わるだろう?」
「それはそうなんですが、監視映像を各港への到着日順に並べると、帰国後日増しに船が重くなっているみたいなんです」
「そりゃあ、確かに逆だな?多少は海水入れて調整するが、普通なら船は軽くなる」
「それに、書類上にも変な点があるんです。造船は日本ですが、国籍はアメリカ。所有者はスイスのリーリャントなんですよ」
「【リーリャント】って、あの人権保護団体のか?確かニューフェイスの人件を守るとか騒いでたな?しかし、人権保護団体が石油タンカーを所持しているのも変な話だ」
日本の造船技術は世界有数なのでソレは兎も角、不審な点が多すぎた。
「これって、ニューフェイス絡みなんですかね?」
「そうでないとは限らんが、日本のニューフェイスではないだろう。むしろ、学者や技術者の誘拐絡みの外国のかも知れないな。危ないんじゃないか?」
一概に、人権保護団体が誘拐などをしているとは限らないが、利用されている可能性もある。
「しかし、放ってはおけないですし、ある程度の証拠が無ければ警察やヒーロー達の援助も受けれないでしょ?」
「仕方がない!単独行動を許すから調べてみろ。くれぐれも気を付けろ。証拠が固まったら応援を送るから連絡をよこせ」
映像を何度も見比べた羽山主任は、渋々だが佐々木捜査員に許可を出した。
現時点では、令状をとって人数を派遣するのは無理なのだ。
船の不審については、過去に中東で海賊に鹵獲され、2009年にイラン軍のヘリ空母に魔改造されたタンカー【マカラン】が存在する。
何か、国防に関する事件に発展する可能性も匂う。
「こういうのには、内部に関係者が居るかも知れん。他者は頼るなよ。データのコピーを俺に渡して、所内にも情報を残さない方が良いだろう」
「所内にスパイですか?」
考えれば、立ち入り検査等で目こぼししているのかも知れない。
「お前が署に見当たらない事で、単独行動をしているのが知れれば、家や知人も調べられる可能性もある。情報は持ち歩いて、他には残さない方が良いだろうな」
「スパイが居れば、仲間を騙って、預けた資料を回収されるでしょうね。確かに、そうなれば証拠隠滅されかねません」
羽山主任の言葉には、何か心当たりがある様だった。
「じゃあ、くれぐれも気を付けてな、佐々木」
「はい、主任」
メモリーカードを羽山主任に渡して、佐々木は情報の整理を始めた。
佐々木捜査員を残し、羽山主任はトイレに向かっていく。
そしてトイレの直前で電話をかけ始めた。
「もしもし羽山ですが、今は大丈夫ですか?・・・実は海上保安庁の佐々木捜査員が、変なタンカーを見つけまして。・・・はい、多分ですが例の件ではないかと。・・・・はい、画像とレポートを送りますので。・・・・はい、はい。捜査員の情報も?分かりました。・・・はい、いざとなれば仕方ありませんから。・・・はい。承知しております。その時の事後処理はお任せ下さい」
電話を一通り終えると羽山主任は、メモリーカードを携帯電話にタッチしてデータ転送を行っていた。
その一週間後に、出向先の冬の北海道で佐々木捜査員の水死体が発見される。
体内からは高濃度のアルコールが検出され、港町の居酒屋では物証はないが、泥酔した佐々木捜査員の目撃証言が幾つも出た。
警察も【飲み過ぎて、誤って海に落ちた末の溺死】と判断し、【事故】として処理された。
『何か疑わしい船を見付けたらしいのですが、詳細は報告待ちでした』とは、上司である羽山主任の言葉であった。
「本当に、何処にスパイが居るか分かったもんじゃないな。俺だって監視されてるんだろうから、迂闊な事はできないしな」
羽山主任は子供が彼の携帯に貼ったヒーロードラマのシールを眺めた。
「佐々木よぉ。ヒーローに成りたかったら、素性や情報を隠して誰にも話さない事だよ。信じれば裏切られ、知られれば足を掬われる。孤独が嫌ならヒーローなんか目指すなよ」
恐らくは、羽山主任にも痛い経験が有ったのだろう。
彼も、もうヒーローには成れない様だった。
それに、むしろ法案などは、実質的には国会以外の個室で決まるものだ。
国会は『正式に討論して決まりましたよ』と言う形式に過ぎず、質疑応答の内容は事前に双方に渡されている。
「では、賛成多数により、当法案は可決されました」
「横暴だ!日本人を滅ぼす気か?売国奴」
談合に加われなかった者と、表向き反対派のサクラが声をあげるが、民主主義の日本では、【正しいか否か】ではなく、【多数か否か】で物事が動く。
金や権力、圧力に屈した者が多ければ、悪法でも通るのが民主主義の政治だ。
「先生まで賛成票に立つとは、どうしたんですか?」
「君は国連決議の内容を知らんのかね?学者共が【ニューフェイスの標準化】を打ち出して、国連でも採択されたんだよ」
若手議員の言葉に、古株の野党議員が理由を答えた。
「他国がどうであろうと、日本人は日本人を通せば良いではありませんか?」
確かに、国が他国の政策に影響を受けるのは、独立国として恥ずべき行為とは言える。
「そんな事を言っていると、日本人はオールドタイプとして無能扱いされ嫌われて、海外では負け組になってしまうぞ。取引も雇用も、結婚さえも不利になるだろう」
実際に遺伝子組み替えが行われていて高い能力を持っていても、【日本人】というだけで差別されてしまうだろう。
国際結婚に関しても、誰でも健康で優れた子供を欲しがるので、オールドタイプとの婚姻は遠慮がちになる。
「それに、ニューフェイスになれば、食生活や価値観も変わる。大飯喰らいの上に環境に弱く、多くの物資を必要とするオールドタイプは、経済的にも貧困化するだろうな」
能力に差があるのだから、仕事をしても収入も変わる。
加えて食費や医療費などの支出が多ければ、格差は広がる一方になるだろう。
「国際的な流通も変化していく中で取り残されては、それこそ貿易で成り立っている日本は、亡国の危機に陥るだろう」
「しかし!」
頭で分かっていても、やはり、人為的な行為を受け入れ難い人間は居る様だ。
「それでは、【遺伝子組み替え】ではなく、彼等の言う通り【遺伝子治療】と考えてはどうだろう?先天的に癌や糖尿病になりやすい者の治療と同じと考えれば、気も変わるのではないか?自分の持病を子にも受け継がせたい親など居ないだろう?」
先生と呼ばれた議員の言葉は、至極正論と言えた。
世界の常識が変わる中で、日本だけが変わらずにいたら、将来的にどうなるか?
若手議員は呼吸を整え、少し考えて首を左右に振った。
「改革派だ政権交代だと騒いでいても、我々は考え方も保守派のオールドタイプだったんですね。政権交代を阻んでいたのは、他ならぬ私達だったなんて」
若手議員は、うつむいて溜め息をつくのだった。
この法案可決により、警視庁にも動きがあった。
「遺伝子治療推進法。通称【ニューフェイス法】の可決により、遺伝子科学の山梨博士の救出が優先事項となった」
「まって下さい。山梨博士よりも先に救助しなくてはならない被害者は、まだまだ居るんですよ」
誘拐された科学者や技術者は、何かを作らされている様で、それが終われば多くが殺されて放置されていた。
大まかに言えば、ほぼ拐われた順に殺されているのだ。
発信器が変な移動をしたと思って調査すれば、死体が打ち捨てられていたというわけだ。
それから、拉致されていた場所を捜索してももぬけの殻だし、準備や調査が不十分なまま突入しても、被害者の死体が残るだけだ。
「俺だってなぁ~」
刑事部長が嫌な顔をするが、部下の刑事の一人が、あからさまに話題を変える。
「それにしても、標準化タイプにしろ軍用にしろ、誘拐までしてニューフェイス誕生用の知識を集めて、設備をつくってるんでしょ?大半はもぬけの殻って事は、ソレを何処かに持っていってるんでしょう?」
「そうなんだよ。各地で設備を作って、本拠地にでも持ち込んでるんだろうな?」
変わった話題に対して、部長が話を合わせてきた。
科学者などに取り付けた発信器で、拐われた先は分かる。
そこで、ニューフェイスやキメラノイド等を作る設備を作らせ、実際に遺伝子組み替えを行っているらしいのだが、その後に設備の全てを移動させている様なのだ。
「確かに、誘拐犯の本拠地で科学者に研究させれば、一発で所在がわかっちゅいますからね」
誘拐犯側も、リスク管理ができている様だ。
「兎にも角にも、【山梨博士優先】は、決定事項だ。守らない奴は守りきれないからな」
「それって『政府の方針』って事ですね?」
「大人なんだから、これ以上は言わせるな」
刑事部長も含めて、納得している者は少ないが、警察の動きはマスコミ以外にも、警察内部の監査機関にも【見張られている】のだ。
日本の警察機構には、海上保安庁も含まれる。
所属は国土交通省の外局で、海上における人命や財産の保護や法令違反の予防と捜査、鎮圧を任務とする。
つまりは違法な船舶を取り締まる役目が有るが、一般の登録された船舶を監視しない訳ではない。
「おいっ、佐々木。さっきから何を見てるんだ?」
「えっ?って、なんだ羽山主任ですか?いや、ちょっと不審なタンカーが有りましてね」
佐々木捜査員がパッドで見ていたのは、同一と思われるタンカーの複数の写真だった。
「この写真の船か?たいして、おかしな点は見えないが」
同じ船を、幾つかの角度で写した写真達だが、特に奇異な印象はない。
「中東でトラブルがあり、一年くらい出るのが遅くなった船なんですが、問題なのは入国後の吃水線の変化なんですよ」
【吃水線】とは、船を水に浮かべた時の船の沈み具合で、重い荷物を積むほど船は水中に沈み込む。
「中東帰りのタンカーなんだ。各地で原油を下ろせば吃水線も変わるだろう?」
「それはそうなんですが、監視映像を各港への到着日順に並べると、帰国後日増しに船が重くなっているみたいなんです」
「そりゃあ、確かに逆だな?多少は海水入れて調整するが、普通なら船は軽くなる」
「それに、書類上にも変な点があるんです。造船は日本ですが、国籍はアメリカ。所有者はスイスのリーリャントなんですよ」
「【リーリャント】って、あの人権保護団体のか?確かニューフェイスの人件を守るとか騒いでたな?しかし、人権保護団体が石油タンカーを所持しているのも変な話だ」
日本の造船技術は世界有数なのでソレは兎も角、不審な点が多すぎた。
「これって、ニューフェイス絡みなんですかね?」
「そうでないとは限らんが、日本のニューフェイスではないだろう。むしろ、学者や技術者の誘拐絡みの外国のかも知れないな。危ないんじゃないか?」
一概に、人権保護団体が誘拐などをしているとは限らないが、利用されている可能性もある。
「しかし、放ってはおけないですし、ある程度の証拠が無ければ警察やヒーロー達の援助も受けれないでしょ?」
「仕方がない!単独行動を許すから調べてみろ。くれぐれも気を付けろ。証拠が固まったら応援を送るから連絡をよこせ」
映像を何度も見比べた羽山主任は、渋々だが佐々木捜査員に許可を出した。
現時点では、令状をとって人数を派遣するのは無理なのだ。
船の不審については、過去に中東で海賊に鹵獲され、2009年にイラン軍のヘリ空母に魔改造されたタンカー【マカラン】が存在する。
何か、国防に関する事件に発展する可能性も匂う。
「こういうのには、内部に関係者が居るかも知れん。他者は頼るなよ。データのコピーを俺に渡して、所内にも情報を残さない方が良いだろう」
「所内にスパイですか?」
考えれば、立ち入り検査等で目こぼししているのかも知れない。
「お前が署に見当たらない事で、単独行動をしているのが知れれば、家や知人も調べられる可能性もある。情報は持ち歩いて、他には残さない方が良いだろうな」
「スパイが居れば、仲間を騙って、預けた資料を回収されるでしょうね。確かに、そうなれば証拠隠滅されかねません」
羽山主任の言葉には、何か心当たりがある様だった。
「じゃあ、くれぐれも気を付けてな、佐々木」
「はい、主任」
メモリーカードを羽山主任に渡して、佐々木は情報の整理を始めた。
佐々木捜査員を残し、羽山主任はトイレに向かっていく。
そしてトイレの直前で電話をかけ始めた。
「もしもし羽山ですが、今は大丈夫ですか?・・・実は海上保安庁の佐々木捜査員が、変なタンカーを見つけまして。・・・はい、多分ですが例の件ではないかと。・・・・はい、画像とレポートを送りますので。・・・・はい、はい。捜査員の情報も?分かりました。・・・はい、いざとなれば仕方ありませんから。・・・はい。承知しております。その時の事後処理はお任せ下さい」
電話を一通り終えると羽山主任は、メモリーカードを携帯電話にタッチしてデータ転送を行っていた。
その一週間後に、出向先の冬の北海道で佐々木捜査員の水死体が発見される。
体内からは高濃度のアルコールが検出され、港町の居酒屋では物証はないが、泥酔した佐々木捜査員の目撃証言が幾つも出た。
警察も【飲み過ぎて、誤って海に落ちた末の溺死】と判断し、【事故】として処理された。
『何か疑わしい船を見付けたらしいのですが、詳細は報告待ちでした』とは、上司である羽山主任の言葉であった。
「本当に、何処にスパイが居るか分かったもんじゃないな。俺だって監視されてるんだろうから、迂闊な事はできないしな」
羽山主任は子供が彼の携帯に貼ったヒーロードラマのシールを眺めた。
「佐々木よぉ。ヒーローに成りたかったら、素性や情報を隠して誰にも話さない事だよ。信じれば裏切られ、知られれば足を掬われる。孤独が嫌ならヒーローなんか目指すなよ」
恐らくは、羽山主任にも痛い経験が有ったのだろう。
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