【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那

文字の大きさ
上 下
22 / 75
第2章

18・日常になりつつある非日常①

しおりを挟む

 ふっと意識が浮上する。
 ゆるりと周囲に視線を向ければ、そこは私が眠りについた、異世界にある神殿の自室だった。

 ――神様のあの話は、本当なの……?

 濃紺に星のような光がきらめく不思議な精神世界で、神様が言っていたことを思い出す。
『僕は消えかけの神様』なのだ、と。

 神様は、私を元の世界に戻すための力を溜めている、とも言っていたが、本当に大丈夫なのだろうか。
 自分がちゃんと元の世界に戻れるのかも不安だが、あの神様がいなくなるかもしれないということがなによりも衝撃的だった。

 ――誰かに相談したいけど……。

 神様のことを相談なんて、元の世界でしようものなら病院に連れていかれかねない内容だ。
 だが、しかしここは異世界。
 しかもここは宗教施設。この手のことに詳しそうな知り合いにも心当たりがあった。

 ――ニコラスに聞いてみようかな。

 私がこの世界に来た時に、ジェラルドともに出迎えてくれた神官様。
 彼なら、神様のことについて何か知っているのではないだろうか。

 思い立ったら即行動!

 私はベッドから下りると、早速身支度を始めることにした。

 ネグリジェを脱ぎ捨て、いつもの制服を着る。
 元の世界にいるときは制服なんてなんとも思っていなかったのに、今は心の支えだ。
 この制服だけが、私が異世界から来たことを証明するものだから。

 ――よし、いざ出発!

 準備が出来た私は、意気揚々と部屋のドアノブに手をかけた。

「おはようございます、神子様」

「……どわっ!」

 びびび、びっくりした……!!
 なんでこの人、ドアのすぐ横に立っているの!?
 昨日といい、今日といい……。この騎士様、色んな意味で心臓に悪すぎる!

「お、おはよう」
 
 まさか、ドアを開けてすぐにジェラルドがいるとは思わなかった。
 完全に出鼻をくじかれた気分でどきどきする心臓を押さえていると、ジェラルドは私の顔をじっと見つめてきた。

「な、なに?」

 どうしたのだろうか。
 イケメンにそんなに見つめられるのは恥ずかしいのだけど。

「……いえ、朝から神子様は可愛らしいですね」

「は……っ!?」

 今、なんて!?
 さらりとジェラルドが告げてきた言葉が信じられない。
 ジェラルドを見返すと、彼はただただにこにことしていた。そこに他意なんて感じられない。

 ――ああ、これはきっと、小動物とか年下に対する『かわいい』なんだろうな。

「あ、ありがと」

 どういう意味であれ、こんなイケメンに『かわいい』なんて言われるのは慣れていなくて、どうしても照れてしまう。だが、向こうはきっと深く考えていないだろうし、社交辞令のようなものなのだろう。
 決して悪い気はしないが、なかなか複雑な心地だ。
 下手に追求したら墓穴を掘りそうで、私は気にしないことにすることにした。
 
「そ、そういえば、ニコラスがどこにいるか知ってる?」

「ニコラス様ですか? 今の時間でしたら、食堂で朝食を召し上がられている頃合いだと思いますが……」

 なるほど。ちょうど朝食の時間だし、私も一緒に食べさせてもらおう。
 食べながら、少しでも話が聞けたらいい。

「じゃあ、私も食堂に行こうかな。お腹も空いたし……」

「何かニコラス様に御用でもおありですか?」

「ああ、うん……、ちょっと聞きたいことがあって」

 不思議そうに尋ねてくるジェラルドに、私は曖昧に返事を返した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス
恋愛
 家庭にも学校にも居場所がない女子高生の花梨は、ある日夢で男の子に出会う。  その日から毎晩夢で男の子と会うが、時間のペースが違うようで1ヶ月で立派な青年に?  ある日、龍の娘として治癒の力と共に、成長した青年がいる世界へ行くことに! 「ヴィラ(青年)に会いたいけど、会いに行ったら龍の娘としての責任が!なんなら言葉もわからない!」  混乱しながらも花梨が龍の娘とした覚悟を決めて、進んでいくお話。 ※こちらの作品は2007年自サイトにて連載、完結した小説です。

【完結】破滅フラグを回避したら、冷酷な公爵閣下が離してくれません

21時完結
恋愛
気がつけば、乙女ゲームの悪役令嬢エリシア・フォン・ローゼンベルクに転生していた私。 このままだと、婚約者である王太子の心をヒロインに奪われ、婚約破棄&国外追放……破滅エンド一直線! (そんな未来はごめんです!!) そこで私は、王太子に恋をしない! ヒロインに絡まない! を徹底し、地道に好感度を下げる作戦を決行。 結果、見事に婚約破棄! 破滅フラグは回避成功!! これで静かに暮らせる……と思っていたのに―― 「……やっと自由になったな。今度こそ、君を手に入れよう」 冷酷無慈悲と名高い公爵閣下・クラウス・フォン・アイゼンハルトが、なぜか私に求婚してきた!? 「前から君を望んでいたが、王太子の婚約者では手が出せなかった……これで何の障害もない」 「えっ、ちょっと待ってください!? そんな話聞いてません!」 「もう逃がすつもりはない。覚悟してもらおう」 どうしてこうなった!? 破滅回避したら、冷酷公爵に執着されてしまったんですが!? 冷たく見えるけれど、私には甘すぎる公爵閣下。 「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」 と微笑む彼から、私は逃げられるの――!?

溺れかけた筆頭魔術師様をお助けしましたが、堅実な人魚姫なんです、私は。

氷雨そら
恋愛
転生したら人魚姫だったので、海の泡になるのを全力で避けます。 それなのに、成人の日、海面に浮かんだ私は、明らかに高貴な王子様っぽい人を助けてしまいました。 「恋になんて落ちてない。関わらなければ大丈夫!」 それなのに、筆頭魔術師と名乗るその人が、海の中まで追いかけてきて溺愛してくるのですが? 人魚姫と筆頭魔術師の必然の出会いから始まるファンタジーラブストーリー。 小説家になろうにも投稿しています。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

2度と恋愛なんかしない!そう決意して異世界で心機一転料理屋でもして過ごそうと思ったら、恋愛フラグ!?イヤ、んなわけ無いな

弥生菊美
恋愛
付き合った相手から1人で生きていけそう、可愛げがない。そう言われてフラれた主人公、これで何度目…もう2度と恋愛なんかしないと泣きながら決意する。そんな時に出会った巫女服姿の女性に異国での生活を勧められる。目が覚めると…異国ってこう言うこと!?フラれすぎて自己評価はマイナス値の主人公に、獣人の青年に神使に騎士!?次から次へと恋愛フラグ!?これが異世界恋愛!?って、んな訳ないな…私は1人で生きれる系可愛げの無い女だし ありきたりで使い古された逆ハー異世界生活が始まる。 ※登場キャラ「タカちゃん」の名前を変更作業中です。追いついていない章があります。ご容赦ください。2024年7月※

異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!

楠ノ木雫
恋愛
 突然異世界の船を手に入れてしまった平凡な会社員、奈央。彼女に残されているのは自分の家とこの規格外な船のみ。  ガス水道電気完備、大きな大浴場に色々と便利な魔道具、甲板にあったよく分からない畑、そして何より優秀過ぎる船のスキル!  これなら何とかなるんじゃないか、と思っていた矢先に私の好みドンピシャなイケメンを吊り上げてしまい、その瞬間に首を絞められる寸前となり絶体絶命!  何とも恐ろしい異世界ライフ(船)が今始まる!

処理中です...