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第2章
18・日常になりつつある非日常①
しおりを挟むふっと意識が浮上する。
ゆるりと周囲に視線を向ければ、そこは私が眠りについた、異世界にある神殿の自室だった。
――神様のあの話は、本当なの……?
濃紺に星のような光がきらめく不思議な精神世界で、神様が言っていたことを思い出す。
『僕は消えかけの神様』なのだ、と。
神様は、私を元の世界に戻すための力を溜めている、とも言っていたが、本当に大丈夫なのだろうか。
自分がちゃんと元の世界に戻れるのかも不安だが、あの神様がいなくなるかもしれないということがなによりも衝撃的だった。
――誰かに相談したいけど……。
神様のことを相談なんて、元の世界でしようものなら病院に連れていかれかねない内容だ。
だが、しかしここは異世界。
しかもここは宗教施設。この手のことに詳しそうな知り合いにも心当たりがあった。
――ニコラスに聞いてみようかな。
私がこの世界に来た時に、ジェラルドともに出迎えてくれた神官様。
彼なら、神様のことについて何か知っているのではないだろうか。
思い立ったら即行動!
私はベッドから下りると、早速身支度を始めることにした。
ネグリジェを脱ぎ捨て、いつもの制服を着る。
元の世界にいるときは制服なんてなんとも思っていなかったのに、今は心の支えだ。
この制服だけが、私が異世界から来たことを証明するものだから。
――よし、いざ出発!
準備が出来た私は、意気揚々と部屋のドアノブに手をかけた。
「おはようございます、神子様」
「……どわっ!」
びびび、びっくりした……!!
なんでこの人、ドアのすぐ横に立っているの!?
昨日といい、今日といい……。この騎士様、色んな意味で心臓に悪すぎる!
「お、おはよう」
まさか、ドアを開けてすぐにジェラルドがいるとは思わなかった。
完全に出鼻をくじかれた気分でどきどきする心臓を押さえていると、ジェラルドは私の顔をじっと見つめてきた。
「な、なに?」
どうしたのだろうか。
イケメンにそんなに見つめられるのは恥ずかしいのだけど。
「……いえ、朝から神子様は可愛らしいですね」
「は……っ!?」
今、なんて!?
さらりとジェラルドが告げてきた言葉が信じられない。
ジェラルドを見返すと、彼はただただにこにことしていた。そこに他意なんて感じられない。
――ああ、これはきっと、小動物とか年下に対する『かわいい』なんだろうな。
「あ、ありがと」
どういう意味であれ、こんなイケメンに『かわいい』なんて言われるのは慣れていなくて、どうしても照れてしまう。だが、向こうはきっと深く考えていないだろうし、社交辞令のようなものなのだろう。
決して悪い気はしないが、なかなか複雑な心地だ。
下手に追求したら墓穴を掘りそうで、私は気にしないことにすることにした。
「そ、そういえば、ニコラスがどこにいるか知ってる?」
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なるほど。ちょうど朝食の時間だし、私も一緒に食べさせてもらおう。
食べながら、少しでも話が聞けたらいい。
「じゃあ、私も食堂に行こうかな。お腹も空いたし……」
「何かニコラス様に御用でもおありですか?」
「ああ、うん……、ちょっと聞きたいことがあって」
不思議そうに尋ねてくるジェラルドに、私は曖昧に返事を返した。
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