【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那

文字の大きさ
上 下
7 / 75
第1章

4・神子様(笑)

しおりを挟む

「あ、あの……」

 ええと、誰か。この際あの自称神様でも誰でもいい。この状況の説明を求めます。
 見知らぬ場所に落とされて、これまた見知らぬ男性に跪かれるって一体どんな状況?

 はっきり言って、私は彼らからしたら不審者・不法侵入者同然だと思うから、捕まえられるというのはまぁわかる。
 だけど、神子様とか何とか呼ばれて跪かれるのはさすがに理解不能だ。

 とか何とか頭の中で考えていたら、剣を腰に下げた青年がおもむろに立ち上がった。
 
 ひぃぃ! 頼むからその剣だけは抜かないで!!

「少々、失礼致します」

「ひゃっ!」

 なになになに!?
 ふわりと身体が宙に浮く。
 ってまさか、これが噂のお姫様抱っこですか!?

 青年は私を軽々と横抱きに抱えあげると、そのまま元来た道を戻るように浅瀬を突っ切った。
 私を気遣ってか、青年はゆっくりとした足取りで歩いていく。
 やがてブロンドの男のもとまでたどり着くと、青年は私を床へ降ろした。

 お姫様抱っこ、怖い……。

 この青年のおかげか安定感はあったものの、怖いものは怖い。やっぱり人間、地に足をつけて生きていくべきだわ……。うん。

「神子様、ようこそおいでくださいました」

 ほっと息を吐いていたら、目の前の男性二人がいきなりそれぞれの胸に片手を当てて頭を下げてきた。私に向かって。
 思わずぎょっとしてしまう。

「あ、あの、神子様……って?」

 神子様って一体なにごとなんだ。
 完全にファンタジー世界じゃないか、これ。
 完全に人違いでしょ、これ。

『神子様』などといった特別な呼称をいただくにしては、私の容姿は普通すぎて釣り合わない。
 そんな神々しい呼び名が相応しいのは麗しき超絶美女であって、平々凡々な童顔低身長に対して『神子様』は違和感しかないと思うんだ。うん。

「昨夜、ルーチェ様が夢枕に立たれ、私に告げられました。ルーチェ様が選ばれた娘が異世界より現れ、この国に祝福を与えると……」

「は……?」
 
 ブロンドの男性が放った言葉に、私はあんぐりと口を開けてしまう。

 国に祝福を与える、だって?
 そんな話は聞いていない。
 話がなんか勝手に大きくなっていませんか?

 私は我慢できずに背後の石像を振り返った。

「ちょっと、どういうこと……?」

『いや、だからな?』

「誰が、国に祝福を与える、ですって……?」

 キラキラとした眼差しをこちらに向けてくる二人には聞こえないように声を潜める。
 石像を囲むこの浅瀬がなければ、たとえ石像であっても自称神様に詰め寄って、胸ぐらでも掴んでいただろう。

『い、いやいや、立派な立場があった方が便利だろう? 嘘も方便だ!』

「おいおい神様……」

 それ、騙してることになりません?
 私は呆れて頭を押えた。

『僕が君を元の世界に帰せるようになるまで、神子としてこの世界でつくろぐといい! むしろこの僕に感謝してくれてもいいんだぞ!?』

「はぁ!? 何言ってんの!? 元はと言えばあなたが――」

 神様とグダグダ言い合いをしていると、後ろからぱちぱちと拍手が聞こえてきた。
 あ、嫌な予感。

「素晴らしい……! 神子様はルーチェ様と会話ができるのですね!」

「ええ、本当に素晴らしい」

 恐る恐る振り返ると、ブロンドの男性が感動した、というふうに琥珀の双眸を輝かせてこちらを見ていた。
 青みがかった黒髪の青年も、うんうんと頷いている。

 ……まずい。
 これは、二人の私に対する神子様認定が加速している気がする。

 お願いだからちょっと待って。

 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜 王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。 彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。 自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。 アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──? どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。 イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。 *HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています! ※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)  話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。  雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。 ※完結しました。全41話。  お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!

楠ノ木雫
恋愛
 突然異世界の船を手に入れてしまった平凡な会社員、奈央。彼女に残されているのは自分の家とこの規格外な船のみ。  ガス水道電気完備、大きな大浴場に色々と便利な魔道具、甲板にあったよく分からない畑、そして何より優秀過ぎる船のスキル!  これなら何とかなるんじゃないか、と思っていた矢先に私の好みドンピシャなイケメンを吊り上げてしまい、その瞬間に首を絞められる寸前となり絶体絶命!  何とも恐ろしい異世界ライフ(船)が今始まる!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...