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第1章
3・騎士様登場
しおりを挟むまず、最初に言わせて欲しい。
本当に、ここどこ。
自称神様とやらのせいで二度目に落とされた穴の底は、先ほどまでのような不思議空間ではなかった。
石造りの柱に、床。壁にはところどころ明かりがかけられていて、ぽうと橙色に光っている。
ぱっと見るかぎり、まるでどこかの神殿のようだ。
どことなく空気がひんやりとしているのは、水場があるせいだろう。
何せ、私の周りは水だらけだ!
どういうこと!?
厳密に言えば、部屋(?)の中に浅瀬の池のようなものがあり、その中央に建っている石像の台座の上に私はいた。
うわ、見上げてよくよく見てみればこの石像、さっきの自称神様と同じ顔じゃん。最悪。
『最悪とはなんだ! 最悪とは!』
「うわっ!」
石像が喋った!
石像の口が動いているわけでは無いのに、石像から声が聞こえる。
すごく不思議だ。
信じられなくて石像をまじまじと見ていると、ふぅ、とため息をつかれてしまった。
いやいや、ため息をつきたいのは私の方だから。
『せっかく君のために環境を整えてあげたというのに』
「はぁ?」
やっぱりこの自称神様の言うことは意味が分からない。
神様に「どういう意味?」と聞き返そうとしたその時、入口の方からバタバタと足音が聞こえてきた。
「ああ! ルーチェ様のお告げは本当だった! さぁジェラルド、お助けして差しあげなさい!」
「はっ!」
げっ! まずい、人が来た!
しかも二人も!?
片方は、ふわりとしたブロンドの穏やかそうな男性。歳は30手前くらいだろうか。
もう一人は、青みがかった黒髪の青年だ。こちらはブロンドの男性よりも若く、20代前半に見える。涼し気な濃紺の瞳に、真面目さが滲んでみえた。
てかこの人身長高っ!
180cmを超えているのではないだろうか。スラリとした長身青年は、これまたスラリとした細身の長剣を腰に下げていた。
……って、剣!?
「ひ、ひえええええ!」
現代日本ではなかなかお目にかかることの無い武器にぎょっとする。
私は思わず後ずさろうとした。
しかし、後ろには忌々しい自称神様の石像がある。
逃げようにも逃げられない。
私が焦ってわたわたしている間にも、青年はこちらに向かって走ってきている。
「わわわ、私は怪しいものじゃありませんよーー!」
そう言っている時点で十分怪しいことは自覚しているが、他に弁明の言葉が思いつかなかった。
ふくらはぎの位置まで濡れてしまうにも関わらず、青年は躊躇いもなく浅瀬に足を突っ込んでこちらに向かってくる。
青年の騎士のような格好が、ブーツが濡れる。
やめてー!
来ないでー!
「ごごご、ごめんなさいいい!」
私は思わず石像にしがみついて、意味もなく謝罪の言葉を口にする。
そんな間抜けな私の姿を気にする様子もなく、私の前までたどり着いた青年は何故か跪いた。
「よくぞおいでくださいました、神子様。あなたのことは、命にかえても俺がお守りいたします」
「……へっ?」
あまりに想定外な事態に、私はキョトンとしてしまう。
だってそうでしょ、いきなり現れた人が跪いてきたら誰だってびっくりするでしょ?
というか、神子様? 何を言われているのか意味がわからない。
それよりあなた、誰ですかーー!?
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