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 ――ああ、やっと解放された! そもそもの婚約がなければループなんてしないでしょ!

 すぐさま家出の準備を整えた私は、開放的な気分でトランク片手に森を歩いていた。
 とりあえずの目的地は、森を抜けた先にある町だ。

 今の私は、必要最低限のものと、お金になりそうな宝石数個しかもっていない。
 町に着いたら宿と、それから仕事を見つけよう。
 私は令嬢ではなく、ただのフェリシアとして生きていく。
 と、私が決意を固めていると……。

「ああ? なんでこんなところにこんな身なりのいい女がいるんだぁ?」

 柄の悪そうな男たちと遭遇した。

 一応持っていた中で一番簡素なワンピースを身につけたつもりだが、(元)お嬢様であることが見抜かれてしまったらしい。
 
 私の姿を上から下まで眺め、男たちは顔を見合わせる。

「どっかの令嬢か?」

「売ったら金になりそうだな」

「待て、こんな綺麗な女、見かけること滅多にねぇぞ。先に俺たちで楽しんでもいいんじゃねぇか?」
 
 ――あ、終わった。

 話し合う男たちに、私の顔から血の気が引いていく。

 ――に、逃げなきゃ。
 
 筋骨隆々な男性たちは、にたにたと気持ちの悪い笑みを浮かべながらこちらへ近づいてくる。
 だっと駆け出したものの、女の足だ。男たちにすぐに追いつかれてしまった。

 男の1人がぐっと私の腕を掴むと、そのまま私を地面へと引き倒した。他の男たちも、私の方へと近寄ってくる。

「残念だったな、お嬢ちゃん」

「離して!」

 私はどうにか男の手から逃れようと、じたばたと暴れた、のだが。

「……っううッ!」

 突然目の前の男が、喉を掻きむしり苦しみ始めた。
 
 ――え?

「な、なんだ……ッ?」

「わかんねぇ……、ただ苦しい……ッ」

 他の男たちも、皆喉元を押さえて苦しそうにしている。
 わけが分からないまま男たちから距離をとると、私と男たちのちょうど真ん中でふわりと風が起きた。

「俺のフェルに手を出そうとしてるのは誰だい?」

 風の中から、低く、そして甘い男の声が聞こえる。

 目の前の風が緩やかにやんで、私の前に姿を現したのは、銀の長髪が美しい長身の男だった。
 

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