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第五章 NYAH NYAH NYAH
第六十二話 イヤホンとアプリ
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「はぁ? ニャにを言うておるんニャ?」
俺の言葉を聞いたハジさんが、頭に大きなクエスチョンマークを浮かべて首を傾げた。
「見つからない方がいいって……じゃあ、どうしてワシらに探させたんニャ?」
「それはもちろん、この場にブルートゥースイヤホンのもう片方が落ちてない事を確認する為ですよ」
ハジさんの問いかけに答えながら、俺は道路の上に落ちているかなみさんのバッグを拾い上げ、中に手を突っ込む。
「ミャッ? お、おミャえさん、いきなりかなみのカバンを漁りおって、何をするんニャ! いミャはそんニャ事をしている場合では……」
「……あった!」
ハジさんの咎める声を聞き流しながら、俺はかなみさんのショルダーバッグの中から目当ての物を取り出した。
「スマホ? かなみのスマホを出してどうするんニャ?」
「そりゃ……当然、探すんですよ。ブルートゥースイヤホンの片方……いや」
逸る気持ちを懸命に抑えて、スマホの側面に指を這わせて電源ボタンを探しながら、俺はハジさんの問いかけに答える。
「――ブルートゥースイヤホンの片方を持っているかなみさんをね」
「ニャッ……?」
ハジさんが驚いた気配が足元から伝わってくるのを感じながら、俺は探し当てたスマホの電源ボタンを押した。
――だが、
「マズい……。ロックがかかってる……って、そりゃ当たり前か……」
名案に思われた俺の案は、初っ端から躓いてしまう。
「暗証番号四ケタ……くそ、全然分からねえ……」
俺の指は、かなみさんのスマホに無情にも表示されたロック画面を前にして止まってしまった。
このロックを解除しなければ、先へは進めない……。
俺は、かなみさんのスマホのロック解除画面を睨むように見据えながら、俺は唇を噛む。
……と、その時、
「――1123」
「……へ?」
不意に聞こえた声にビックリして、俺は声の主の方を見た。
「な、何すか、いきなり……?」
「じゃから、1123じゃと言うておろうが」
ハジさんは、険しい目で俺の事を見上げながら、前脚を上げてかなみさんのスマホを指さした。
「かなみのスマホの暗証番号が分からニャいんじゃろ? 1123ニャ。それでパスワードは解除できる」
「え? マジっすか?」
ハジさんの言葉を聞いた俺は、半信半疑でスマホに指を走らせる。
「えっと……1……1……2……3……」
――次の瞬間、スマホのロック画面が一変し、規則正しくアイコンが並ぶホーム画面に切り替わった。
ロックが解除されたスマホを見て目を丸くしながら、俺は思わず声を上ずらせる。
「ほ、ホントに開いた……! つ、つか、ハジさん、何で知ってんすか? かなみさんのスマホのパスワード……」
「ニャッハッハッ! ワシの記憶力に感謝せいよ!」
驚く俺の顔を見て気分を良くした様子で、ハジさんはピョコピョコと耳を動かした。
「かなみの家に遊びに行った時に、こっそりパスワードを解除する指の動きを見て覚えておいたんニャ。まさか、こんニャところで役に立つとは思いもしニャかったがニョ」
「マジっすか……」
ハジさんの言葉を聞いた俺は……ドン引きする。
「いや……孫とはいえ、他人のスマホのパスワードを盗み見るとか……どうなんすか、それ……」
「ニャんじゃその目はッ! き、気にニャるじゃろうが、可愛い孫の事ニャんじゃし……!」
俺にジト目を向けられたハジさんが、慌てて弁解し――すぐにハッと我に返って声を荒げた。
「……って、そ、そんニャ事はどうでもいいニャ! さっさとかなみの居場所を突き止めいッ!」
「あっ! そ、そうでした……ッ!」
ハジさんの声に、俺は慌ててスマホの画面に目を落とす。
「ええっと……多分、この画面のどこかに、あのアプリのアイコンが…………あった!」
整然と並んだアイコンの中から目当ての物を見つけた俺は、迷わずタッチした。
俺の膝に前脚を乗せてスマホを覗き込んだハジさんが、開いたアプリの画面を見て首を傾げる。
「で……それで本当にかなみの居場所が分かるニョか?」
「ええ……俺の考えが正しければ……ですけど」
ハジさんの質問に生返事しつつ、俺はアプリのメニューボタンを手当たり次第に押してみた。
……そして、
「――よし、これかっ!」
遂に目当てのページに辿り着き、思わずガッツポーズをする。
と、スマホの画面を見ていたハジさんが、キョトンとした顔をして首を傾げた。
「ニャんか変ニャ地図が出てきたが……コレがどうかしたニョか?」
「これはですね……」
ハジさんの質問に、俺はスマホに表示された地図に忙しなく目を走らせながら答える。
「さっき見つけたブルートゥースイヤホンがあるじゃないですか? あの製品には、落としちゃった時にもスマホで探せるアプリがあるんです。そのアプリが、コレ」
「いや……イヤホンを探してもしょうがニャいじゃろうが。ワシらが捜しておるのは、かなみニャんじゃから……」
「分かりませんか?」
そう言いながら、俺はさっきルリ子さんが拾ってきたブルートゥースイヤホンの片割れを見せた。
「かなみさんは、大通りで俺と会った時に、耳に付けていたイヤホンを胸ポケットに入れたんです。……でも、ここに落ちていたイヤホンは片方だけです。つまり――」
「……あっ!」
俺の説明を聞いたハジさんが、何かに気付いた様子でヒゲをピンと逆立たせる。
「もしかしたら、もう片方はかなみの胸ポケットに入ったまんまかもしれニャい……そういう事かっ?」
「そうです。で、もしそうだとしたら――」
「そのイヤホンを探す“あぷり”で、かなみの居所が分かる……っ!」
そう叫んで、ハジさんは目を輝かせた。
俺はハジさんに大きく頷きながら、スマホの画面を指さす。
――液晶画面に表示された地図の一点に、イヤホンのマークが表示されていた。
「……どうやら、まだ運は残ってるっぽいっす」
「……!」
俺の言葉に息を呑んだハジさんは、アプリが示したイヤホンの――そして、恐らくかなみさんが今居るであろう場所を凝視しながら、その名称を口にした。
「……市立上杉病院跡地か――!」
俺の言葉を聞いたハジさんが、頭に大きなクエスチョンマークを浮かべて首を傾げた。
「見つからない方がいいって……じゃあ、どうしてワシらに探させたんニャ?」
「それはもちろん、この場にブルートゥースイヤホンのもう片方が落ちてない事を確認する為ですよ」
ハジさんの問いかけに答えながら、俺は道路の上に落ちているかなみさんのバッグを拾い上げ、中に手を突っ込む。
「ミャッ? お、おミャえさん、いきなりかなみのカバンを漁りおって、何をするんニャ! いミャはそんニャ事をしている場合では……」
「……あった!」
ハジさんの咎める声を聞き流しながら、俺はかなみさんのショルダーバッグの中から目当ての物を取り出した。
「スマホ? かなみのスマホを出してどうするんニャ?」
「そりゃ……当然、探すんですよ。ブルートゥースイヤホンの片方……いや」
逸る気持ちを懸命に抑えて、スマホの側面に指を這わせて電源ボタンを探しながら、俺はハジさんの問いかけに答える。
「――ブルートゥースイヤホンの片方を持っているかなみさんをね」
「ニャッ……?」
ハジさんが驚いた気配が足元から伝わってくるのを感じながら、俺は探し当てたスマホの電源ボタンを押した。
――だが、
「マズい……。ロックがかかってる……って、そりゃ当たり前か……」
名案に思われた俺の案は、初っ端から躓いてしまう。
「暗証番号四ケタ……くそ、全然分からねえ……」
俺の指は、かなみさんのスマホに無情にも表示されたロック画面を前にして止まってしまった。
このロックを解除しなければ、先へは進めない……。
俺は、かなみさんのスマホのロック解除画面を睨むように見据えながら、俺は唇を噛む。
……と、その時、
「――1123」
「……へ?」
不意に聞こえた声にビックリして、俺は声の主の方を見た。
「な、何すか、いきなり……?」
「じゃから、1123じゃと言うておろうが」
ハジさんは、険しい目で俺の事を見上げながら、前脚を上げてかなみさんのスマホを指さした。
「かなみのスマホの暗証番号が分からニャいんじゃろ? 1123ニャ。それでパスワードは解除できる」
「え? マジっすか?」
ハジさんの言葉を聞いた俺は、半信半疑でスマホに指を走らせる。
「えっと……1……1……2……3……」
――次の瞬間、スマホのロック画面が一変し、規則正しくアイコンが並ぶホーム画面に切り替わった。
ロックが解除されたスマホを見て目を丸くしながら、俺は思わず声を上ずらせる。
「ほ、ホントに開いた……! つ、つか、ハジさん、何で知ってんすか? かなみさんのスマホのパスワード……」
「ニャッハッハッ! ワシの記憶力に感謝せいよ!」
驚く俺の顔を見て気分を良くした様子で、ハジさんはピョコピョコと耳を動かした。
「かなみの家に遊びに行った時に、こっそりパスワードを解除する指の動きを見て覚えておいたんニャ。まさか、こんニャところで役に立つとは思いもしニャかったがニョ」
「マジっすか……」
ハジさんの言葉を聞いた俺は……ドン引きする。
「いや……孫とはいえ、他人のスマホのパスワードを盗み見るとか……どうなんすか、それ……」
「ニャんじゃその目はッ! き、気にニャるじゃろうが、可愛い孫の事ニャんじゃし……!」
俺にジト目を向けられたハジさんが、慌てて弁解し――すぐにハッと我に返って声を荒げた。
「……って、そ、そんニャ事はどうでもいいニャ! さっさとかなみの居場所を突き止めいッ!」
「あっ! そ、そうでした……ッ!」
ハジさんの声に、俺は慌ててスマホの画面に目を落とす。
「ええっと……多分、この画面のどこかに、あのアプリのアイコンが…………あった!」
整然と並んだアイコンの中から目当ての物を見つけた俺は、迷わずタッチした。
俺の膝に前脚を乗せてスマホを覗き込んだハジさんが、開いたアプリの画面を見て首を傾げる。
「で……それで本当にかなみの居場所が分かるニョか?」
「ええ……俺の考えが正しければ……ですけど」
ハジさんの質問に生返事しつつ、俺はアプリのメニューボタンを手当たり次第に押してみた。
……そして、
「――よし、これかっ!」
遂に目当てのページに辿り着き、思わずガッツポーズをする。
と、スマホの画面を見ていたハジさんが、キョトンとした顔をして首を傾げた。
「ニャんか変ニャ地図が出てきたが……コレがどうかしたニョか?」
「これはですね……」
ハジさんの質問に、俺はスマホに表示された地図に忙しなく目を走らせながら答える。
「さっき見つけたブルートゥースイヤホンがあるじゃないですか? あの製品には、落としちゃった時にもスマホで探せるアプリがあるんです。そのアプリが、コレ」
「いや……イヤホンを探してもしょうがニャいじゃろうが。ワシらが捜しておるのは、かなみニャんじゃから……」
「分かりませんか?」
そう言いながら、俺はさっきルリ子さんが拾ってきたブルートゥースイヤホンの片割れを見せた。
「かなみさんは、大通りで俺と会った時に、耳に付けていたイヤホンを胸ポケットに入れたんです。……でも、ここに落ちていたイヤホンは片方だけです。つまり――」
「……あっ!」
俺の説明を聞いたハジさんが、何かに気付いた様子でヒゲをピンと逆立たせる。
「もしかしたら、もう片方はかなみの胸ポケットに入ったまんまかもしれニャい……そういう事かっ?」
「そうです。で、もしそうだとしたら――」
「そのイヤホンを探す“あぷり”で、かなみの居所が分かる……っ!」
そう叫んで、ハジさんは目を輝かせた。
俺はハジさんに大きく頷きながら、スマホの画面を指さす。
――液晶画面に表示された地図の一点に、イヤホンのマークが表示されていた。
「……どうやら、まだ運は残ってるっぽいっす」
「……!」
俺の言葉に息を呑んだハジさんは、アプリが示したイヤホンの――そして、恐らくかなみさんが今居るであろう場所を凝視しながら、その名称を口にした。
「……市立上杉病院跡地か――!」
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