10 / 47
第一章
第九話 告白
しおりを挟む
「え……っ?」
宙の言葉を聞いた僕は、ビックリして目を丸くした。
「だ……大好きって……ほ、北斗が、僕のことを、そんな風に……?」
頬っぺたどころか耳の先まで熱くなるのを感じながら、僕は小刻みに首を左右に振る。
「そ……そんなの嘘だよ! ほ、北斗は、僕のことなんか……」
「ウソなんかじゃないって」
否定する僕にきっぱりと言い切った宙は、自分の耳を指さした。
「この耳でしっかりと聞いたんだから間違いない。それを聞いた時のアイツの言葉は……ウソなんかじゃなく、本気だったよ」
「そ……」
宙の言葉に激しく動揺しながら、僕はもう一度激しくかぶりを振る。
「そんなことあるわけないっ! ほ、北斗が僕のことを好きだったはずがないよ、絶対!」
そう叫びながら、僕は握った拳で激しくテーブルを叩いた。
その衝撃で、テーブルの上に載ったコーヒーカップとソーサーがカチャカチャと音を鳴らしながら揺れ、その中身が少しテーブルの上にこぼれる。
「……スバル?」
「だって……」
訝しげに声をかける宙にも構わず、僕は拳を握ったままうなだれた。
「……本当に北斗が僕のことをそんな風に思ってくれているんだったら、卒業式の日にあんな返事をするはずがないじゃないか……」
僕は、木製のテーブルの上にこぼれたカフェオレの雫をぼんやりと見つめながら、あの時北斗が自分にかけた最後の声を思い返す。
『北斗――僕、お前のことが好きなんだ』
――中学の卒業式の後の帰り道で、四月から別々の高校に北斗に対し、僕が告げた彼への想い。
そんな僕の一世一代の告白に対して、あいつが返した返事は、
『……ごめん昴、驚いて――なんて言ったらいいのか。少し…時間、もらってもいいか。また連絡する』
という想像もしない、けれども確かな拒絶だった。
その、いつもの北斗らしくもない弱々しい声と、顔に浮かんだ苦しげな表情を見て、僕は自分の想いが届かなかったと思い、それきりあいつとは距離を置いたのだ。
恋人にはなれなかったけど、いつかは前のような関係に戻りたいと思い――戻れると信じながら、ズルズルと再会の時を引き延ばした結果……北斗は二度と会えない遠い所へ行ってしまった……。
そう考えた瞬間、束の間忘れていた悲しみと喪失感が津波のように押し寄せてきて、思わず僕は両手で顔を覆う。
「う、うぅ……北斗……」
「スバル……」
宙は、感情の堰が切れて、目から溢れる涙を手の甲で拭いながら嗚咽を漏らす僕のことを心配するように声をかけながら、背中を優しくさすってくれた。
そのおかげで、僕は少し落ち着きを取り戻す。
「……ごめん」
涙でぐしゃぐしゃになった顔に照れ笑いを浮かべながら、僕は宙に謝った。
「つい……北斗と最後に別れた時のことを思い出したら、感情が抑えられなくなっちゃって……」
「スバル……」
僕の言葉にホッとした表情を浮かべながら、宙はおずおずと口を開く。
「もしかして……お前もホクトのことを……?」
「――宙くん」
宙の問いかけは、青井さんの静かな声によって遮られた。
青井さんは、テーブルにこぼれたカフェオレを布巾で拭き取りながら、宙を諭すように言う。
「そういうデリケートなことを、不躾に訊いちゃいけないよ」
「あ……」
宙は、青井さんの言葉にハッとした表情を浮かべて口元を押さえた。
そんな彼の反応が気になった僕だったが――、
「昴くん。ヤケドとかしてないかい?」
「……あ」
青井さんがかけてくれた声の方に意識が逸れる。
僕は、「ええと……大丈夫です」と答え、それから恐縮しながら青井さんに頭を下げた。
「あの……それより、すみませんでした。お店のテーブルを叩いて、せっかくのカフェオレをこぼしちゃって……」
「ははは、そんなこと気にしなくていいさ」
青井さんは、僕の謝罪に笑いながらかぶりを振る。
そして、僕のカフェオレのカップを横に寄せ、代わりに温かそうな湯気を立てるマグカップを置いた。
「ホットミルクだ。急ごしらえだけど、味は保証するよ。気持ちが落ち着くから、飲んでみて」
「……はい。いただきます」
青井さんの言葉に素直に頷いた僕は、マグカップを手に取る。
そして、甘い香りが混じった湯気を立てるホットミルクを一口飲んだ。
「熱ちち……」
舌の上にヤケドしそうな熱さと優しい甘味を感じて、僕は小さく息を吐く。
青井さんの言った通りだった。
「ありがとうございます……。とっても美味しくて……落ち着きました」
「それは良かった」
僕の感謝の言葉に、青井さんはニコリと微笑みながら大きく頷いたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
それから――僕と宙は、時間も忘れて、それぞれが持つ北斗との思い出を打ち明け合った。
青井さんは、僕たちの為に飲み物や料理を作ってくれながら、その片手間に話へ混ざってきて、北斗がこの喫茶店でバイトしていた時の様子を冗談を交えて話してくれた。
彼が出してくれた料理は、どれも美味しくて、僕と宙は夢中で平らげた。
美味しい飲み物と食べ物でお腹いっぱいになりながら、僕たちは更に思い出話に花を咲かせる。
僕は、今まで知らなかった北斗の姿を知ることができた事が嬉しかった。
けれど――その分、もう二度と北斗に会えないという変えられない事実に、言いようもない寂しさと悲しさが押し寄せてきて、涙が頬を伝う。
でも……宙と青井さんが側にいてくれたおかげで、僕は負の感情に流されずに済んだのだった。
宙の言葉を聞いた僕は、ビックリして目を丸くした。
「だ……大好きって……ほ、北斗が、僕のことを、そんな風に……?」
頬っぺたどころか耳の先まで熱くなるのを感じながら、僕は小刻みに首を左右に振る。
「そ……そんなの嘘だよ! ほ、北斗は、僕のことなんか……」
「ウソなんかじゃないって」
否定する僕にきっぱりと言い切った宙は、自分の耳を指さした。
「この耳でしっかりと聞いたんだから間違いない。それを聞いた時のアイツの言葉は……ウソなんかじゃなく、本気だったよ」
「そ……」
宙の言葉に激しく動揺しながら、僕はもう一度激しくかぶりを振る。
「そんなことあるわけないっ! ほ、北斗が僕のことを好きだったはずがないよ、絶対!」
そう叫びながら、僕は握った拳で激しくテーブルを叩いた。
その衝撃で、テーブルの上に載ったコーヒーカップとソーサーがカチャカチャと音を鳴らしながら揺れ、その中身が少しテーブルの上にこぼれる。
「……スバル?」
「だって……」
訝しげに声をかける宙にも構わず、僕は拳を握ったままうなだれた。
「……本当に北斗が僕のことをそんな風に思ってくれているんだったら、卒業式の日にあんな返事をするはずがないじゃないか……」
僕は、木製のテーブルの上にこぼれたカフェオレの雫をぼんやりと見つめながら、あの時北斗が自分にかけた最後の声を思い返す。
『北斗――僕、お前のことが好きなんだ』
――中学の卒業式の後の帰り道で、四月から別々の高校に北斗に対し、僕が告げた彼への想い。
そんな僕の一世一代の告白に対して、あいつが返した返事は、
『……ごめん昴、驚いて――なんて言ったらいいのか。少し…時間、もらってもいいか。また連絡する』
という想像もしない、けれども確かな拒絶だった。
その、いつもの北斗らしくもない弱々しい声と、顔に浮かんだ苦しげな表情を見て、僕は自分の想いが届かなかったと思い、それきりあいつとは距離を置いたのだ。
恋人にはなれなかったけど、いつかは前のような関係に戻りたいと思い――戻れると信じながら、ズルズルと再会の時を引き延ばした結果……北斗は二度と会えない遠い所へ行ってしまった……。
そう考えた瞬間、束の間忘れていた悲しみと喪失感が津波のように押し寄せてきて、思わず僕は両手で顔を覆う。
「う、うぅ……北斗……」
「スバル……」
宙は、感情の堰が切れて、目から溢れる涙を手の甲で拭いながら嗚咽を漏らす僕のことを心配するように声をかけながら、背中を優しくさすってくれた。
そのおかげで、僕は少し落ち着きを取り戻す。
「……ごめん」
涙でぐしゃぐしゃになった顔に照れ笑いを浮かべながら、僕は宙に謝った。
「つい……北斗と最後に別れた時のことを思い出したら、感情が抑えられなくなっちゃって……」
「スバル……」
僕の言葉にホッとした表情を浮かべながら、宙はおずおずと口を開く。
「もしかして……お前もホクトのことを……?」
「――宙くん」
宙の問いかけは、青井さんの静かな声によって遮られた。
青井さんは、テーブルにこぼれたカフェオレを布巾で拭き取りながら、宙を諭すように言う。
「そういうデリケートなことを、不躾に訊いちゃいけないよ」
「あ……」
宙は、青井さんの言葉にハッとした表情を浮かべて口元を押さえた。
そんな彼の反応が気になった僕だったが――、
「昴くん。ヤケドとかしてないかい?」
「……あ」
青井さんがかけてくれた声の方に意識が逸れる。
僕は、「ええと……大丈夫です」と答え、それから恐縮しながら青井さんに頭を下げた。
「あの……それより、すみませんでした。お店のテーブルを叩いて、せっかくのカフェオレをこぼしちゃって……」
「ははは、そんなこと気にしなくていいさ」
青井さんは、僕の謝罪に笑いながらかぶりを振る。
そして、僕のカフェオレのカップを横に寄せ、代わりに温かそうな湯気を立てるマグカップを置いた。
「ホットミルクだ。急ごしらえだけど、味は保証するよ。気持ちが落ち着くから、飲んでみて」
「……はい。いただきます」
青井さんの言葉に素直に頷いた僕は、マグカップを手に取る。
そして、甘い香りが混じった湯気を立てるホットミルクを一口飲んだ。
「熱ちち……」
舌の上にヤケドしそうな熱さと優しい甘味を感じて、僕は小さく息を吐く。
青井さんの言った通りだった。
「ありがとうございます……。とっても美味しくて……落ち着きました」
「それは良かった」
僕の感謝の言葉に、青井さんはニコリと微笑みながら大きく頷いたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
それから――僕と宙は、時間も忘れて、それぞれが持つ北斗との思い出を打ち明け合った。
青井さんは、僕たちの為に飲み物や料理を作ってくれながら、その片手間に話へ混ざってきて、北斗がこの喫茶店でバイトしていた時の様子を冗談を交えて話してくれた。
彼が出してくれた料理は、どれも美味しくて、僕と宙は夢中で平らげた。
美味しい飲み物と食べ物でお腹いっぱいになりながら、僕たちは更に思い出話に花を咲かせる。
僕は、今まで知らなかった北斗の姿を知ることができた事が嬉しかった。
けれど――その分、もう二度と北斗に会えないという変えられない事実に、言いようもない寂しさと悲しさが押し寄せてきて、涙が頬を伝う。
でも……宙と青井さんが側にいてくれたおかげで、僕は負の感情に流されずに済んだのだった。
4
あなたにおすすめの小説
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
幽閉された美しきナズナ
不来方しい
BL
控えめで目立たない准教授と生徒が恋に落ちます。
連れ子として華道の家に入ったのは、大学生の藤裔なずな(ふじすえなずな)。慣れない生活の中、母と新しい父との間に子供ができ、ますます居場所を失っていく。
居場所を求めて始めたアルバイトは、狭い和室で自由恋愛を楽しむという、一風変わったアルバイトだった。
客人としてやってきたのは、挙動不審で恋愛が不慣れな男性。諏訪京介と名乗った。触れようとすれば逃げ、ろくに話もしなかったのに、また来ますと告げて消えた彼。二度と会わないだろうと思っていた矢先、新しく大学の研究グループに加わると紹介されたのは、なずなを買ったあの男性だった。
呆然とする諏訪京介を前に、なずなは知らないふりを貫き通す──。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
恋の闇路の向こう側
七賀ごふん
BL
学校一の優等生として過ごす川音深白には、大切な幼馴染がいる。
家庭の事情で離れ離れになった幼馴染、貴島月仁が転校してくることを知った深白は、今こそ昔守られていた恩を返そうと意気込むが…。
────────
クールで過保護な攻め×完璧でいたいけど本当は甘えたい受け
双葉の恋 -crossroads of fate-
真田晃
BL
バイト先である、小さな喫茶店。
いつもの席でいつもの珈琲を注文する営業マンの彼に、僕は淡い想いを寄せていた。
しかし、恋人に酷い捨てられ方をされた過去があり、その傷が未だ癒えずにいる。
営業マンの彼、誠のと距離が縮まる中、僕を捨てた元彼、悠と突然の再会。
僕を捨てた筈なのに。変わらぬ態度と初めて見る殆さに、無下に突き放す事が出来ずにいた。
誠との関係が進展していく中、悠と過ごす内に次第に明らかになっていくあの日の『真実』。
それは余りに残酷な運命で、僕の想像を遥かに越えるものだった──
※これは、フィクションです。
想像で描かれたものであり、現実とは異なります。
**
旧概要
バイト先の喫茶店にいつも来る
スーツ姿の気になる彼。
僕をこの道に引き込んでおきながら
結婚してしまった元彼。
その間で悪戯に揺れ動く、僕の運命のお話。
僕たちの行く末は、なんと、お題次第!?
(お題次第で話が進みますので、詳細に書けなかったり、飛んだり、やきもきする所があるかと思います…ご了承を)
*ブログにて、キャライメージ画を載せております。(メーカーで作成)
もしご興味がありましたら、見てやって下さい。
あるアプリでお題小説チャレンジをしています
毎日チームリーダーが3つのお題を出し、それを全て使ってSSを作ります
その中で生まれたお話
何だか勿体ないので上げる事にしました
見切り発車で始まった為、どうなるか作者もわかりません…
毎日更新出来るように頑張ります!
注:タイトルにあるのがお題です
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる