君に捧ぐ

ゆのう

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番外編

見つけた

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今日はイクスと森の中でどちらが先にリスを見つけられるか競争をしている。はやく見つけたら、お昼ごはんのデザートのブドウをたくさん食べられるんだ。
木の上は葉っぱがたくさんあって、それにぼくから見ると高すぎてあんまり見えない。やっぱりじめんでエサを口いっぱいにつめこんでいるリスを探したほうがいい気がする。
(ウサギでもいいんだけど、ちいさい動物が何かいないかなー?)
じーっと地面を見つめていたら、はじっこで何かが動いた気がした。そちらを見てみると、地面に穴があいている。
(タヌキとかがほったのかな?何がいるか分からないから近寄らないようにしよう)
いつもイクスには危ないもの、よく分からないもの、知らない人には近寄らないように言われている。

穴の事は気にせずにまたリスがいないかと見回すと、穴の中から小さな手が見えた。おどろいてもう一度穴の方を見てみると、小さな手がおいでと手まねきをしている。
(うーん、あやしい。気になるけど、見にいったらきっとイクスにおこられちゃう)
穴を気にしないようにすればするほど何だか気になってしまってリスどころでは無くなってしまった。
少しだけ。
ほんのちょっとだけ。
のぞいて見るだけならきっと大丈夫。
穴の中をそーっと見てみると、小さな穴はとつぜん大きくなって落っこちてしまった。
「あっ!」
びっくりして閉じてしまっていた目をあけると、目の前に光の玉があった。
『ふふっ。びっくりした?』
『わぁ!にんげんだ!』
『何かいいにおいがするよ!』
『あそんでくれるの?』

まぶしい位につよく光っている白い玉と、あか色、みどり色、きいろの玉が目の前に浮いていた。
「なにこれ?っていうか、どこ?どうしよう、イクスとはぐれちゃった」
『だいじょうぶ。私たちといれば心配ないよ』
『この子どうするの?』
『ここに住むの?』
『おっきいねー』
きょろきょろとあたりを見てみても、いつもの森とはちがう場所だという事が分かる。
光るキノコも虹色の花もあの森にはなかった。
それに森の葉っぱが白くて少し光っているのは見たことがない。
少しでもイクスの目のとどかない場所にいくと、とても不安だったと大げさなほど心配してくれる。
きっと今もイクスはぼくを探しているはずだ。
早く帰らないといけない。
ぼくのまわりをクルクルと飛んでいる光の玉に出口をきいてみる事にした。
「あの、ここから出たいんだけど出口ってどこかな?」
『だーめ。せっかく来たんだからまだ帰っちゃだめだよ』
『この子もぼくたちみたいになるの?』
『泉にいこうよ!』
『そのふわふわあたまに乗っていい?』

すると白い玉がふよふよと移動しはじめた。他の色の玉も一緒についてくるみたいだった。
「ことばがわかるの?ありがとう」
『泉に行けば君もことばが通じるはずだよ』
『泉につれていくのひさしぶりだね!』
『たのしみだなー』
『ぼくにぴったりだ!』
ぼくには光の玉が話せるか分からないけれど、ぼくの言っている事は分かるみたいだった。
少し歩いた場所には今まで見たことがない深く澄んだ青色の湖があった。畏れ多くて立ち入れないような幻想的な雰囲気を感じる湖は、底まで簡単に見通せる透明度でとても深いようでもあり、浅いようにも見える。
イクスの事が気になって焦っていたぼくも、ついその美しい景色に目を奪われていると目の前にまぶしい光の玉が現れた。
『もう!見るのはあとにして早く泉に入って!』
『そうだね。泉に入れば話せるようになるしね』
『早くあそぼう!』
『このふわふわあたまのままでもいいかもー?』
白い光の玉に続いて、あか、みどりの玉も湖の方に向かって飛んでいった。
「そっちが出口なの?でもぼく来た時は土の穴から来たんだよ?」
『ここに入るまで何にも教えないよ!』
『どうしてすぐに泉に入らないのかな?』
『うしろから、わっ!っておどろかせば入るかな?』
『ZZz…』

湖に入ったら服がぬれちゃうし、入り口が地面に開いた穴だったから帰りもそうだと思ってたのに、もしかして出口じゃないかもと悩んでいたらイクスの声が聞こえた。
「セツ!無事か!?良かった。ちゃんといた」
声が聞こえたと思ったら同時にいつもの香りとあたたかさに包まれた。
「はぁ。もうどうにかなりそうだった。しっかり顔を見せて安心させてくれ」
イクスに抱き上げられて顔をまじまじと見られている。
「ごめんなさい。ぼくイクスとのやくそく守れなかった」
まっすぐにイクスの顔を見る事もできずに、まゆ毛を下げて謝った。
「あぁ。本当に無事だな。…良かった。」
痛いくらい抱きしめられて、どれだけ心配をかけたのか分かった。
「ゔっ…。ごめ、ごめんなさい。ひっく…」
「いいんだ。セツが悪い訳じゃない。こんな綺麗な場所なのに、ちゃんと帰ろうとしたんだろう?偉かったな」
イクスがぼくの心配ばかりで全然怒らないから、よけいに悪いことをしたと泣くのをとめられなくなってしまった。
「もう大丈夫だ。俺と一緒に帰ろうな。セツはいい子だ」
背中をぽんぽんと一定のリズムで軽く叩かれると、イクスに会えたという安心感もあって、あっという間にまぶたが落ちて眠ってしまった。




「さて、ゴート。こいつらの処分はお前に任せてもいいか?」
「承知いたしました。魔王様は早々にお戻りいただいて構いません」
『魔王だって?!なんで魔王なんかがここにいるんだよ!』
『え!ぼくたちどうなるの?』
『まだ何もしてないよ!』
『に、にげなきゃ!』
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