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◎契約
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このまま生きている意味もないと絶望しきって服で首を吊ろうとしていた時に、背後に人の気配がした。
狭い牢屋で誰もいるはずもなく、とうとう気でも触れたかと思っていると話しかけられた。
「随分美味しそうな魂ですね。今から死ぬ予定なのですか?」
「ああ。俺は罪人だからな。さっさと死んでセツに詫びる」
「なるほど。それはいい時に来たようですね。ではイクスさん、私と契約をしませんか?」
「話を聞いてなかったか?今から死ぬんだ。放っておいてくれ」
パチンと音が聞こえると、牢屋ではなく血の匂いが濃く広がっている薄暗い部屋に変わっていた。
「申し遅れましたが、悪魔のゴートと申します」
「ハッ。随分悪趣味な名前だな。悪魔が何の用か知らんが俺は死ぬから関係ない。早く牢屋に戻せ」
「おやおや、悪魔を見ても平然としていらっしゃる。これは相当…」
こいつが悪魔だろうと何だろうと俺には一つも関係ない。
「悪魔は随分暇なんだな。どうでもいいが俺は早くセツの所へ行きたいんだ」
投げやりになりながら話は終わりだと背を向けると
「生きているセツさんと再会したくはないですか?」
まさに悪魔の囁きだった。
「そんな事が出来るのか?早く話せ!!」
悪魔に詰め寄ると、嫌そうに指を鳴らした。
パチン!
次の瞬間目の前にはテーブルが置かれ、俺と悪魔は向かい合って座っていた。
「私、潔癖のきらいがありましてね。あまり無闇に接触されるのは好きではありません」
早く話せと怒り出しそうな気持ちを抑えて、下手に出る事にした。
「それはすまなかった。それよりさっきの話を聞かせてほしい」
ゴートはにやりと笑い、恭しく一礼をして話し始めた。
「私は上級悪魔ですので、時を操る事くらいなら出来るのですよ」
思わず椅子を倒して立ち上がってゴートに詰め寄った。
「それは本当か!?頼む!何でもするからセツが生きている時間まで巻き戻してくれ!」
よっぽど触れられたくないのか、椅子に深く座り距離を置いてにやりと笑った。
「おやおや。悪魔に何でもするとはイクスさんも太っ腹ですねぇ」
「俺はセツさえ生きてくれたら、何を失っても構わない!頼む!」
頭を下げながら必死に懇願していると、契約を結べばすぐにでも行使してくれると言われた。
「私の欲しいものは、イクスさんの魂です」
「魂って何だ?そもそも放っておいても俺が死ねばゴートの物に出来たんじゃないのか?」
ゴートは肩をすくめながら眉間にシワを寄せて言った。
「残念ながら人が死ぬと輪廻の中に魂は帰るのです。悪魔と契約をしないと魂はあっという間に輪廻に戻って、そこで元の綺麗な魂に洗浄されて再び人に生まれ変わる」
「契約をすれば悪魔が魂を貰えるのか?」
「そういう事です。ただ悪魔の悪評が広まり過ぎていて契約をする人はほぼいない状況ですがね」
まずは勢いがつきすぎている教会をどうにかするべきか?と独り言を続けるゴートを無視して話の続きを促す。
「ゴートが魂を手に入れたらどうするんだ?」
「勿論食べますよ。イクスさんの魂は濁りきっていて、さぞかし美味しいでしょうね。また力が貯められます」
恍惚な表情で見つめられるとゾッとするが、死んだ後どうなろうが関係ない。迷う事なく契約する事に決めた。
「契約するが、少し条件があるんだがいいか?」
「勿論契約はお互いが納得しないと結べませんので、仰ってみて下さい」
テーブルの上に羊皮紙が置かれ、羽ペンとインクも用意された。
「時間を巻き戻してセツが生き返ったら、俺の記憶はこのまま保持出来るようにして欲しい。あと魂は俺の寿命が尽きてから取りに来て貰いたい」
ゴートはしばらく考えた後に、にこりと胡散臭く笑った。
「ええ、いいでしょう。それで契約いたしましょう」
ゴートはまた指を鳴らすと、羊皮紙には文字が書かれていた。見た事のない文字だが、不思議と書いてある内容は理解出来た。悪魔というのは随分便利に出来ているらしい。
関心しながら見ていると、ゴートが手を出せと言ってきた。
素直に両手を出すと、親指の先にピリッと痛みが走った。
ゴートは慣れた手付きで羊皮紙に血判を二人分押し付けると、またも指を鳴らした。黒い炎で羊皮紙は燃え上がり、心臓がギュッと絞られたような気がした。服を引っ張って隙間から見てみると、心臓の上に何か模様がついていた。
「イクスさんが忘れないように心臓の上に印を残しておきますね。くれぐれも約束を違えませんように。私は常にあなたを見ておりますよ」
胡散臭い笑顔でゴートは念押ししてきた。
「勿論だ。時を戻してくれるのならば、ゴートは俺の恩人だ。決して忘れたり約束を反故にする事はないと誓う」
ゴートは次に目覚めた時には時が戻っていると言って俺の意識は遠くなっていった。
(ああ。セツ、俺は次こそ絶対に間違えない)
狭い牢屋で誰もいるはずもなく、とうとう気でも触れたかと思っていると話しかけられた。
「随分美味しそうな魂ですね。今から死ぬ予定なのですか?」
「ああ。俺は罪人だからな。さっさと死んでセツに詫びる」
「なるほど。それはいい時に来たようですね。ではイクスさん、私と契約をしませんか?」
「話を聞いてなかったか?今から死ぬんだ。放っておいてくれ」
パチンと音が聞こえると、牢屋ではなく血の匂いが濃く広がっている薄暗い部屋に変わっていた。
「申し遅れましたが、悪魔のゴートと申します」
「ハッ。随分悪趣味な名前だな。悪魔が何の用か知らんが俺は死ぬから関係ない。早く牢屋に戻せ」
「おやおや、悪魔を見ても平然としていらっしゃる。これは相当…」
こいつが悪魔だろうと何だろうと俺には一つも関係ない。
「悪魔は随分暇なんだな。どうでもいいが俺は早くセツの所へ行きたいんだ」
投げやりになりながら話は終わりだと背を向けると
「生きているセツさんと再会したくはないですか?」
まさに悪魔の囁きだった。
「そんな事が出来るのか?早く話せ!!」
悪魔に詰め寄ると、嫌そうに指を鳴らした。
パチン!
次の瞬間目の前にはテーブルが置かれ、俺と悪魔は向かい合って座っていた。
「私、潔癖のきらいがありましてね。あまり無闇に接触されるのは好きではありません」
早く話せと怒り出しそうな気持ちを抑えて、下手に出る事にした。
「それはすまなかった。それよりさっきの話を聞かせてほしい」
ゴートはにやりと笑い、恭しく一礼をして話し始めた。
「私は上級悪魔ですので、時を操る事くらいなら出来るのですよ」
思わず椅子を倒して立ち上がってゴートに詰め寄った。
「それは本当か!?頼む!何でもするからセツが生きている時間まで巻き戻してくれ!」
よっぽど触れられたくないのか、椅子に深く座り距離を置いてにやりと笑った。
「おやおや。悪魔に何でもするとはイクスさんも太っ腹ですねぇ」
「俺はセツさえ生きてくれたら、何を失っても構わない!頼む!」
頭を下げながら必死に懇願していると、契約を結べばすぐにでも行使してくれると言われた。
「私の欲しいものは、イクスさんの魂です」
「魂って何だ?そもそも放っておいても俺が死ねばゴートの物に出来たんじゃないのか?」
ゴートは肩をすくめながら眉間にシワを寄せて言った。
「残念ながら人が死ぬと輪廻の中に魂は帰るのです。悪魔と契約をしないと魂はあっという間に輪廻に戻って、そこで元の綺麗な魂に洗浄されて再び人に生まれ変わる」
「契約をすれば悪魔が魂を貰えるのか?」
「そういう事です。ただ悪魔の悪評が広まり過ぎていて契約をする人はほぼいない状況ですがね」
まずは勢いがつきすぎている教会をどうにかするべきか?と独り言を続けるゴートを無視して話の続きを促す。
「ゴートが魂を手に入れたらどうするんだ?」
「勿論食べますよ。イクスさんの魂は濁りきっていて、さぞかし美味しいでしょうね。また力が貯められます」
恍惚な表情で見つめられるとゾッとするが、死んだ後どうなろうが関係ない。迷う事なく契約する事に決めた。
「契約するが、少し条件があるんだがいいか?」
「勿論契約はお互いが納得しないと結べませんので、仰ってみて下さい」
テーブルの上に羊皮紙が置かれ、羽ペンとインクも用意された。
「時間を巻き戻してセツが生き返ったら、俺の記憶はこのまま保持出来るようにして欲しい。あと魂は俺の寿命が尽きてから取りに来て貰いたい」
ゴートはしばらく考えた後に、にこりと胡散臭く笑った。
「ええ、いいでしょう。それで契約いたしましょう」
ゴートはまた指を鳴らすと、羊皮紙には文字が書かれていた。見た事のない文字だが、不思議と書いてある内容は理解出来た。悪魔というのは随分便利に出来ているらしい。
関心しながら見ていると、ゴートが手を出せと言ってきた。
素直に両手を出すと、親指の先にピリッと痛みが走った。
ゴートは慣れた手付きで羊皮紙に血判を二人分押し付けると、またも指を鳴らした。黒い炎で羊皮紙は燃え上がり、心臓がギュッと絞られたような気がした。服を引っ張って隙間から見てみると、心臓の上に何か模様がついていた。
「イクスさんが忘れないように心臓の上に印を残しておきますね。くれぐれも約束を違えませんように。私は常にあなたを見ておりますよ」
胡散臭い笑顔でゴートは念押ししてきた。
「勿論だ。時を戻してくれるのならば、ゴートは俺の恩人だ。決して忘れたり約束を反故にする事はないと誓う」
ゴートは次に目覚めた時には時が戻っていると言って俺の意識は遠くなっていった。
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