7 / 47
【7】冗談
しおりを挟む
魔力は睡眠と食事で自然に回復はするものの、すっからかんになるまで根刮ぎ使い果たした場合にはどちらの方法もかなりの時間を要する事になる。
ではいざそうなった時にはどうしたらいいのか、というと。睡眠や食事よりも遥かに効率よく魔力を回復する手段がひとつ──。
他者から魔力を譲り受けるのである。
放出された魔力は何かを施すために消費されてしまうので、与える側は放出せずに魔力を他者に渡さねばならない。そのために汗や涙、血液、或いは唾液や精液といったものに自らの魔力を含ませるのである。
汗や涙は意図的に流しにくいので多くは血液に含ませるが、深い関係性があるならば唾液や精液を使う事もあるだろう。
受け取る側はそれらを摂取する事で、時間を要さず魔力そのものを得られるというわけだ。
一日以上寝ても起き上がれないほど魔力が枯渇していたグリファートにとって、接吻による魔力の補給は非常に効率の良い手段だったと言えよう。
だが、だからと言って純真な子供の目の前で、男同士の濃厚な口付けをかます奴がどこにいるのか。
「…レオンハルトさん、ね」
「レオンでいい」
獅子の名を持つ男───レオンハルトから魔力を譲り受けたグリファートは、のそりと身体を起き上がらせた。視界を覆われていたロビンは何が起きたのかわかっていなかったようで、きょとんとグリファートを見上げている。
あまりの気まずさから半ば八つ当たりのようにレオンハルトを睨め付けてやれば、やれやれといった顔でため息を吐かれた。歳下であろうに小癪な態度である。
「感謝こそされても不機嫌になられる覚えはないんだがな」
「ないならどうかしてるよ、君」
そんなやり取りをしながら図書室を出る。空気はやはり澄んでいて、瘴気の燻りひとつない清らかな大地と晴れ渡る空が崩れた壁の隙間から見える。枯れ果てていた筈の草木も生命力を取り戻したのか、青々と美しい姿を見せていた。
レオンハルトやロビンの言っていた通り、聖なる力で浄化されたのだろう景色がそこには広がっている。
「うわあ…これはまた綺麗に浄化されてるね」
「アンタが浄化したって言ってるだろ」
「聖女さま、すごい」
キラキラしたロビンの瞳が眩しい。どうにもロビンの中でグリファートが聖女だという事になっているようだが、これは本格的に訂正せねばなるまい。
グリファートには浄化の力など備わっていない。ロビンへの治癒がうまくいったのもそれだけ必死だったのであって、あれがグリファートの力なのだと受け止められては困る。
だがそんな心情を察したのか、レオンハルトはいい加減認めろとばかりにグリファートに呆れた視線を向けた。
「アンタはただ治癒を施してただけのつもりかもしれないけどな」
「ん?」
「アンタが魔力を放出した瞬間、瘴気は綺麗さっぱり無くなったんだ」
「…どういう事?」
レオンハルトが言うには、掌に魔力を集中させていたグリファートの体内に、周りの瘴気が取り込まれていったらしい。まるでグリファートが瘴気を吸収しているようにも見えた、と。そして治癒を施すと同時に辺りの瘴気が一気に霧散したと言うのだ。
「これが浄化じゃないって言うなら一体何なんだ?」
「知らないよ、俺は治癒を施しただけなんだって」
「だとしたらアンタの治癒力は、浄化並みだ」
「冗談でしょ……」
確かにあの時、グリファートの身体には瘴気が満ちていく感覚があった。だが普通に考えて瘴気を自ら取り込むことなどできるわけがないし、万が一にできたとしても身体の方が保たない筈だ。それに、グリファートの治癒がそんな大層なものなわけがない。
「何か勘違いしてるんじゃない?俺は無能な聖職者なんだから」
動揺して思わず口を滑らせれば、レオンハルトとロビンが「無能?」と不思議そうな顔でグリファートを見つめた。
しまった、と思ったが後悔したところで遅い。仮にも擬似浄化活動に来た聖職者が、それこそ冗談でも口にすべき言葉ではなかった。
「あー……その、前にいた村じゃロビンの時みたいな治癒は施せなくてね」
「どうして」
「知らないよ!…まあ村は元々瘴気が薄い場所だったし。俺が浄化の力を持ってようとなかろうと、殆ど影響なんてなかっただろうけどね」
治癒もまともにできず、浄化したところで元々瘴気の薄い場所なのだから大地にさして影響もない。
そんな聖職者はどちらにせよ村では無能とされていた事だろう。
レオンハルトは暫く考え込んでいたようで、ふいに「なるほど、そういうことか」と呟いた。
ひとり頷いているが何が『そういうこと』なのだろうか。グリファートが何の役にも立たないと改めて納得したという事か。
「とんでもない事をしてるんだな、聖職者様は」
「…何が?」
「アンタは瘴気を吸収した力で大地を浄化して、その恵みで治癒を施してる」
「………はっ!?」
グリファートは驚きのあまり大声を上げてレオンハルトを見上げた。隣にいたロビンがびくんっと肩を跳ねさせていたが、悲しいかな気遣う余裕がない。
「いやいやいや…!そもそも瘴気を吸収する事なんてできないし、そんな事したら死ぬでしょうよ!」
「実際してるし生きてる」
「そうじゃないだろ!王国にいる聖女ならいざ知らずその辺の聖職者がそんな力持ってるわけがないでしょ普通に考えて!」
グリファートは人生の中で出した事のないような大声と感情をレオンハルトにぶつけた。口付けをされた瞬間でさえここまで取り乱していなかったように思う。
何なんだこの男は、とグリファートが頭を抱えて蹲ってもレオンハルトの追撃は続いた。
「瘴気の影響が殆どない大地では、浄化をしてもほんの僅かな恵みしか降らない」
「…待って」
「アンタの施す治癒は他の聖職者たちとは違う、浄化の恵みによるものだ」
「待てって言ってんでしょ」
「アンタが村でまともな治癒を施せなかったのはそういう事だろ」
レオンハルトの言っている事は無茶苦茶だが、驚くほどに合点がいってしまう。
つまり青年の爛れた腕を癒せなかったのは、村一帯の瘴気を吸収し浄化をしたところで恵みを降らすには足りなかったという事だ。その後も既に浄化された大地で恵みを降らそうとしているのだから、腰の痛みひとつ治癒するのに時間を要したのも当然である。
何故今さらこんな事を知ってしまわなければいけなかったのか。
今まで散々使い物にならなかった自身の力を認める事は、グリファートには難しい話だと言うのに。
「聖女さま…?」
ロビンの小さな掌が心配そうにグリファートの頭を撫でる。暖かくて優しい、今のグリファートには痛いくらいだが。それでもこんな子供に気を遣わせてしまった事が申し訳なくて、冗談めかして口を開いた。
「だから俺は、」
「無能じゃない」
間髪入れずに発せられたレオンハルトの言葉に思わず顔を上げてしまった。どこまでも底の見えないあの暗い瞳がグリファートを見下ろしている。
腕を取られた時と同じ状況なのに、不思議と圧迫感も恐怖も感じない。
「アンタは無能な聖職者なんかじゃない」
吐き出されたそれを果たして本心と信じていいのか。
瞬きしたその時、獅子の漆黒の瞳の中に僅かな光が煌めいたのはきっと気のせいだったのだろう。
ではいざそうなった時にはどうしたらいいのか、というと。睡眠や食事よりも遥かに効率よく魔力を回復する手段がひとつ──。
他者から魔力を譲り受けるのである。
放出された魔力は何かを施すために消費されてしまうので、与える側は放出せずに魔力を他者に渡さねばならない。そのために汗や涙、血液、或いは唾液や精液といったものに自らの魔力を含ませるのである。
汗や涙は意図的に流しにくいので多くは血液に含ませるが、深い関係性があるならば唾液や精液を使う事もあるだろう。
受け取る側はそれらを摂取する事で、時間を要さず魔力そのものを得られるというわけだ。
一日以上寝ても起き上がれないほど魔力が枯渇していたグリファートにとって、接吻による魔力の補給は非常に効率の良い手段だったと言えよう。
だが、だからと言って純真な子供の目の前で、男同士の濃厚な口付けをかます奴がどこにいるのか。
「…レオンハルトさん、ね」
「レオンでいい」
獅子の名を持つ男───レオンハルトから魔力を譲り受けたグリファートは、のそりと身体を起き上がらせた。視界を覆われていたロビンは何が起きたのかわかっていなかったようで、きょとんとグリファートを見上げている。
あまりの気まずさから半ば八つ当たりのようにレオンハルトを睨め付けてやれば、やれやれといった顔でため息を吐かれた。歳下であろうに小癪な態度である。
「感謝こそされても不機嫌になられる覚えはないんだがな」
「ないならどうかしてるよ、君」
そんなやり取りをしながら図書室を出る。空気はやはり澄んでいて、瘴気の燻りひとつない清らかな大地と晴れ渡る空が崩れた壁の隙間から見える。枯れ果てていた筈の草木も生命力を取り戻したのか、青々と美しい姿を見せていた。
レオンハルトやロビンの言っていた通り、聖なる力で浄化されたのだろう景色がそこには広がっている。
「うわあ…これはまた綺麗に浄化されてるね」
「アンタが浄化したって言ってるだろ」
「聖女さま、すごい」
キラキラしたロビンの瞳が眩しい。どうにもロビンの中でグリファートが聖女だという事になっているようだが、これは本格的に訂正せねばなるまい。
グリファートには浄化の力など備わっていない。ロビンへの治癒がうまくいったのもそれだけ必死だったのであって、あれがグリファートの力なのだと受け止められては困る。
だがそんな心情を察したのか、レオンハルトはいい加減認めろとばかりにグリファートに呆れた視線を向けた。
「アンタはただ治癒を施してただけのつもりかもしれないけどな」
「ん?」
「アンタが魔力を放出した瞬間、瘴気は綺麗さっぱり無くなったんだ」
「…どういう事?」
レオンハルトが言うには、掌に魔力を集中させていたグリファートの体内に、周りの瘴気が取り込まれていったらしい。まるでグリファートが瘴気を吸収しているようにも見えた、と。そして治癒を施すと同時に辺りの瘴気が一気に霧散したと言うのだ。
「これが浄化じゃないって言うなら一体何なんだ?」
「知らないよ、俺は治癒を施しただけなんだって」
「だとしたらアンタの治癒力は、浄化並みだ」
「冗談でしょ……」
確かにあの時、グリファートの身体には瘴気が満ちていく感覚があった。だが普通に考えて瘴気を自ら取り込むことなどできるわけがないし、万が一にできたとしても身体の方が保たない筈だ。それに、グリファートの治癒がそんな大層なものなわけがない。
「何か勘違いしてるんじゃない?俺は無能な聖職者なんだから」
動揺して思わず口を滑らせれば、レオンハルトとロビンが「無能?」と不思議そうな顔でグリファートを見つめた。
しまった、と思ったが後悔したところで遅い。仮にも擬似浄化活動に来た聖職者が、それこそ冗談でも口にすべき言葉ではなかった。
「あー……その、前にいた村じゃロビンの時みたいな治癒は施せなくてね」
「どうして」
「知らないよ!…まあ村は元々瘴気が薄い場所だったし。俺が浄化の力を持ってようとなかろうと、殆ど影響なんてなかっただろうけどね」
治癒もまともにできず、浄化したところで元々瘴気の薄い場所なのだから大地にさして影響もない。
そんな聖職者はどちらにせよ村では無能とされていた事だろう。
レオンハルトは暫く考え込んでいたようで、ふいに「なるほど、そういうことか」と呟いた。
ひとり頷いているが何が『そういうこと』なのだろうか。グリファートが何の役にも立たないと改めて納得したという事か。
「とんでもない事をしてるんだな、聖職者様は」
「…何が?」
「アンタは瘴気を吸収した力で大地を浄化して、その恵みで治癒を施してる」
「………はっ!?」
グリファートは驚きのあまり大声を上げてレオンハルトを見上げた。隣にいたロビンがびくんっと肩を跳ねさせていたが、悲しいかな気遣う余裕がない。
「いやいやいや…!そもそも瘴気を吸収する事なんてできないし、そんな事したら死ぬでしょうよ!」
「実際してるし生きてる」
「そうじゃないだろ!王国にいる聖女ならいざ知らずその辺の聖職者がそんな力持ってるわけがないでしょ普通に考えて!」
グリファートは人生の中で出した事のないような大声と感情をレオンハルトにぶつけた。口付けをされた瞬間でさえここまで取り乱していなかったように思う。
何なんだこの男は、とグリファートが頭を抱えて蹲ってもレオンハルトの追撃は続いた。
「瘴気の影響が殆どない大地では、浄化をしてもほんの僅かな恵みしか降らない」
「…待って」
「アンタの施す治癒は他の聖職者たちとは違う、浄化の恵みによるものだ」
「待てって言ってんでしょ」
「アンタが村でまともな治癒を施せなかったのはそういう事だろ」
レオンハルトの言っている事は無茶苦茶だが、驚くほどに合点がいってしまう。
つまり青年の爛れた腕を癒せなかったのは、村一帯の瘴気を吸収し浄化をしたところで恵みを降らすには足りなかったという事だ。その後も既に浄化された大地で恵みを降らそうとしているのだから、腰の痛みひとつ治癒するのに時間を要したのも当然である。
何故今さらこんな事を知ってしまわなければいけなかったのか。
今まで散々使い物にならなかった自身の力を認める事は、グリファートには難しい話だと言うのに。
「聖女さま…?」
ロビンの小さな掌が心配そうにグリファートの頭を撫でる。暖かくて優しい、今のグリファートには痛いくらいだが。それでもこんな子供に気を遣わせてしまった事が申し訳なくて、冗談めかして口を開いた。
「だから俺は、」
「無能じゃない」
間髪入れずに発せられたレオンハルトの言葉に思わず顔を上げてしまった。どこまでも底の見えないあの暗い瞳がグリファートを見下ろしている。
腕を取られた時と同じ状況なのに、不思議と圧迫感も恐怖も感じない。
「アンタは無能な聖職者なんかじゃない」
吐き出されたそれを果たして本心と信じていいのか。
瞬きしたその時、獅子の漆黒の瞳の中に僅かな光が煌めいたのはきっと気のせいだったのだろう。
141
お気に入りに追加
473
あなたにおすすめの小説

【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

からかわれていると思ってたら本気だった?!
雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生
《あらすじ》
ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。
ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。
葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。
弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。
葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。
名もなき花は愛されて
朝顔
BL
シリルは伯爵家の次男。
太陽みたいに眩しくて美しい姉を持ち、その影に隠れるようにひっそりと生きてきた。
姉は結婚相手として自分と同じく完璧な男、公爵のアイロスを選んだがあっさりとフラれてしまう。
火がついた姉はアイロスに近づいて女の好みや弱味を探るようにシリルに命令してきた。
断りきれずに引き受けることになり、シリルは公爵のお友達になるべく近づくのだが、バラのような美貌と棘を持つアイロスの魅力にいつしか捕らわれてしまう。
そして、アイロスにはどうやら想う人がいるらしく……
全三話完結済+番外編
18禁シーンは予告なしで入ります。
ムーンライトノベルズでも同時投稿
1/30 番外編追加

生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

パラレルワールドの世界で俺はあなたに嫌われている
いちみやりょう
BL
彼が負傷した隊員を庇って敵から剣で斬られそうになった時、自然と体が動いた。
「ジル!!!」
俺の体から血飛沫が出るのと、隊長が俺の名前を叫んだのは同時だった。
隊長はすぐさま敵をなぎ倒して、俺の体を抱き寄せてくれた。
「ジル!」
「……隊長……お怪我は……?」
「……ない。ジルが庇ってくれたからな」
隊長は俺の傷の具合でもう助からないのだと、悟ってしまったようだ。
目を細めて俺を見て、涙を耐えるように不器用に笑った。
ーーーー
『愛してる、ジル』
前の世界の隊長の声を思い出す。
この世界の貴方は俺にそんなことを言わない。
だけど俺は、前の世界にいた時の貴方の優しさが忘れられない。
俺のことを憎んで、俺に冷たく当たっても俺は貴方を信じたい。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる