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魔法が使える世界は不安定な世界
ボアズとヤペテのお願い
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次は、万事屋(よろずや)ヤペテの話になった。
「私は、里で万事屋をやっています。実は、皆さんから要望されている品物で、どうしても調達困難って言うか、超高価になってしまうアイテムがあります。それは、冷気アイテムです。高価すぎて誰も手が出ません。これがあると、食料が、いつもより長く保存できたり、夏場の暑いときに一息つけるのです。タカシさんなら作れると、長老が申しておりまして、依頼したいのです」
「冷蔵庫が、ほしいってことですか」
「冷蔵庫?ですか」
「小さい箱に、冷気アイテムを入れると、その箱の中だけ、すごく冷えます。すぐ傷んでしまう魚を数日は、生で保存できる箱です」
「本当ですか!」
すごいと、里のみんなも口々に話す。
「でも、そんなアイテム作ったことありませんよ」
「それは、これから、いろいろ試せばいいのよ。長老のお墨付きよ、絶対できるわ」
「努力します。ディーバが出来るようになってからでいいでか。じゃないと強すぎると凍っちゃうし」
「あっ、凍るのも欲しいです」
「ですよねー。それだと温度にもよるけど、物凄く長期に食糧を保存できます。分かりました。やってみます」
「その冷蔵庫の箱を作るの、うちが引き受けた」
「そんな先の話はいいから、ボアズの番よ」
「へへへ、リベカが、ディーバを教えている対価って分けじゃないんだけどね。魔鉄鋼なんて、今までなかったものを作れたんだ。いろんなものに、魔力を込めてもらえないかなーって言うのが、おれのお願い。そうしたら、鍛冶屋の新境地が開けると思うんだ」
「私からもお願いします。ボアズがやる試しは、タカシにとっても、今後の参考になると思うの」
「魔力がこもった物って、加工しようとすると、魔力暴走を起こす事があるんだ。自慢じゃないが、うちは、そう言うのが得意だ。分かったことは、全部教えるからさ」
ここには、魔力中毒患者を見ることが出来る治療師もいる。任せるには絶好の環境。
「願ってもないです。じゃあ、いろいろなものを、錬成空間に放り込んで見ましょうか」
その後、錬成空間を出して、ズバズバ、魔石や魔鋼。魔の石綿や魔水と、何でも魔力付の物質に変換した。これはスキル。錬成空間に振り込んで出すだけなら、自分の魔力を、ほどほどしか使わないことが実証された。また、錬成空間より大きいものは入らないことも分かった。
そこに、里の子供が茶々を入れて来た。あの悪ガキ4人組のリーダー格のバルトだ。
「お兄ちゃん、おれの服を、そこに入れたらどうなる」
これバルトと、母さんがたしなめている。
「糸だろ、無くなっても知らないぞ」
「いい!」
「こら、どうもすいません」
「あのう、私のハンカチだったらいいですよ」
別の女性が、自分のハンカチを差し出した。なるほど、みんな興味あるんだ。女の人は、だいたい誰でも、機織りができる。
「じゃあ、試します」
里の女性の期待は、半端なかった。誰も錬成空間に触れないのは、ボアズの蛮勇で分かっていた。それでも、この空間内が、魔力の塊なのは間違いない。みんなそれが分かっているのに、ぐいぐい近づいてくる。
錬成空間に入れたハンカチは、里の女の期待通り、虹色に輝いて出て来た。錦と言う事だ。これに里の女が、大喜びして、これも入れてください、あれも入れてくださいと、おれに殺到した。
「みんなダメよ。今のタカシは、加減ができないの。魔力中毒を起こすわよ」
リベカに言われて、みんなしゅんとなった。ドクターストップだ。それでも、期待で胸いっぱいという感じ。そして虹色に輝くハンカチは、いろいろ試すボアズに取り上げられてしまった。
「ありがとう、これからも、ちょくちょく里に来てね」
「うちで、ご飯を食べて行くかい」
「お茶飲む?」
「俺の工房も見てくれ」
タカシは、大人気になった。ヤタの里が隠れ里だと言う事は、マルタに強く言い含められている。でも、まるで、故郷に帰ったかのよう。夕飯に間に合うように帰ると家に言っているので帰ることにしたが、マルタに相談して、ちょくちょく来ようと思う。
「ちゃんとディーバを練習するのよ」
「また来いよ」
おれは、里人に見送られて帰途に就いた。翌朝、マルタに、「ヤタの里の依頼じゃなく、マルタの丸投げだったじゃないか」と怒ると、舌を出していた。だから、忙しかろうが、ディーバの練習に付き合わせた。
「私は、里で万事屋をやっています。実は、皆さんから要望されている品物で、どうしても調達困難って言うか、超高価になってしまうアイテムがあります。それは、冷気アイテムです。高価すぎて誰も手が出ません。これがあると、食料が、いつもより長く保存できたり、夏場の暑いときに一息つけるのです。タカシさんなら作れると、長老が申しておりまして、依頼したいのです」
「冷蔵庫が、ほしいってことですか」
「冷蔵庫?ですか」
「小さい箱に、冷気アイテムを入れると、その箱の中だけ、すごく冷えます。すぐ傷んでしまう魚を数日は、生で保存できる箱です」
「本当ですか!」
すごいと、里のみんなも口々に話す。
「でも、そんなアイテム作ったことありませんよ」
「それは、これから、いろいろ試せばいいのよ。長老のお墨付きよ、絶対できるわ」
「努力します。ディーバが出来るようになってからでいいでか。じゃないと強すぎると凍っちゃうし」
「あっ、凍るのも欲しいです」
「ですよねー。それだと温度にもよるけど、物凄く長期に食糧を保存できます。分かりました。やってみます」
「その冷蔵庫の箱を作るの、うちが引き受けた」
「そんな先の話はいいから、ボアズの番よ」
「へへへ、リベカが、ディーバを教えている対価って分けじゃないんだけどね。魔鉄鋼なんて、今までなかったものを作れたんだ。いろんなものに、魔力を込めてもらえないかなーって言うのが、おれのお願い。そうしたら、鍛冶屋の新境地が開けると思うんだ」
「私からもお願いします。ボアズがやる試しは、タカシにとっても、今後の参考になると思うの」
「魔力がこもった物って、加工しようとすると、魔力暴走を起こす事があるんだ。自慢じゃないが、うちは、そう言うのが得意だ。分かったことは、全部教えるからさ」
ここには、魔力中毒患者を見ることが出来る治療師もいる。任せるには絶好の環境。
「願ってもないです。じゃあ、いろいろなものを、錬成空間に放り込んで見ましょうか」
その後、錬成空間を出して、ズバズバ、魔石や魔鋼。魔の石綿や魔水と、何でも魔力付の物質に変換した。これはスキル。錬成空間に振り込んで出すだけなら、自分の魔力を、ほどほどしか使わないことが実証された。また、錬成空間より大きいものは入らないことも分かった。
そこに、里の子供が茶々を入れて来た。あの悪ガキ4人組のリーダー格のバルトだ。
「お兄ちゃん、おれの服を、そこに入れたらどうなる」
これバルトと、母さんがたしなめている。
「糸だろ、無くなっても知らないぞ」
「いい!」
「こら、どうもすいません」
「あのう、私のハンカチだったらいいですよ」
別の女性が、自分のハンカチを差し出した。なるほど、みんな興味あるんだ。女の人は、だいたい誰でも、機織りができる。
「じゃあ、試します」
里の女性の期待は、半端なかった。誰も錬成空間に触れないのは、ボアズの蛮勇で分かっていた。それでも、この空間内が、魔力の塊なのは間違いない。みんなそれが分かっているのに、ぐいぐい近づいてくる。
錬成空間に入れたハンカチは、里の女の期待通り、虹色に輝いて出て来た。錦と言う事だ。これに里の女が、大喜びして、これも入れてください、あれも入れてくださいと、おれに殺到した。
「みんなダメよ。今のタカシは、加減ができないの。魔力中毒を起こすわよ」
リベカに言われて、みんなしゅんとなった。ドクターストップだ。それでも、期待で胸いっぱいという感じ。そして虹色に輝くハンカチは、いろいろ試すボアズに取り上げられてしまった。
「ありがとう、これからも、ちょくちょく里に来てね」
「うちで、ご飯を食べて行くかい」
「お茶飲む?」
「俺の工房も見てくれ」
タカシは、大人気になった。ヤタの里が隠れ里だと言う事は、マルタに強く言い含められている。でも、まるで、故郷に帰ったかのよう。夕飯に間に合うように帰ると家に言っているので帰ることにしたが、マルタに相談して、ちょくちょく来ようと思う。
「ちゃんとディーバを練習するのよ」
「また来いよ」
おれは、里人に見送られて帰途に就いた。翌朝、マルタに、「ヤタの里の依頼じゃなく、マルタの丸投げだったじゃないか」と怒ると、舌を出していた。だから、忙しかろうが、ディーバの練習に付き合わせた。
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