碧の幻獣使い

星村直樹

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ドレイク王

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 ブルーサファイヤ、ここは、なんだかびっくりするほど、文明が進んでいるって感じじゃないな
― これじゃあ、外と変わらないぞ。やはり、魔法文明の方が主なんだろうな。我々が、これから取得しなければいけない技術だ

「ミランダ、おれら、みんなに見られていないか」

「それは、そうよ。人なんて、何千年も会っていないはずよ。女の人も髭が生えているって聞いてたけど。産毛でよかった」

 みんな、憎めない顔をしている。子供が、前を横切ったり、後ろは、大人まで混ざってついてくる。ちょっと見世物になった気分だ。通りを見ると、たまに、しっかりした服装の人が、おれを見て、ぺこっと頭を下げる。この服かなーとは思うのだが、火龍王の間に、普通の服を置いてきたのだから仕方ない。

「私より、ヒロの方が注目されてない。手を振ってあげたら」

「ミランダこそ、また脱げよ」

「いやですーーーぅ」

「ほら、あそこ、すごく騒いでいないか。まだ昼間だよな」

「多分酒場よ。ドワーフの人は、すごく飲むし、すごく食べるんですって」

「酒は、御とそぐらいしか飲んだことないからきついけど、飯がうまそうだな」

「酒場に入ったら飲まされるわよ。て、言っても私たちは、この町の通貨を持っていないからどうせ、入れないわ」

 できるだけ無視していたのだが、子供たちがおれに、ちょっかいを出そうとしている。ついに勇気ある子供が、おれの手を握って来た。まあいいかと思ってそのままにしていたら、すごい人数が、押し寄せてきた。

「ちょ、ちょっとまて」
「ヒロ、大人気ね」
「やっぱりこの服か」
「ここで、パトーナムやってあげたら。もっと喜ばれるんじゃない」

「あれは、近くの物をはじくんだぞ、危ないじゃ、ちょ、」
 キャハハハ。すごーい、高ーい。すべすべの服
「肩に乗ってくるな。ダイオさーーん」
 オジサン、私もー
「おじさんじゃない。16だぞおれは」
「へー、私と同い年だ」
 ミランダが、子供たちに溶け込んで、煽っているから、余計、たちが悪い。こいつ、小さいもんな

「騎士殿、諦めなされ。それか、城まで走ってはどうかな。それは、失礼に当たらないし、喜ばれますぞ。城の客人と、競争したとな」

「ええい、やけだ」
 おれは、城まで、町の子供と競争した。さすがに、コンパスが長い分、こっちが有利だ。リザードマンに負けた屈辱をここで晴らした。その間、結構、町の人に笑われていたと思う。城の衛兵の前まで走ると、さすがに、子供たちも、大人しくなった。それで、今度は、衛兵の相手をすることになった。

「人間か」

「そうです」

「わしらの言葉が分かるのか」

「地上の人の言葉とあまり変わらないですよ」

「なんと、そうなのか。それで、今日は、何しに来た」

「ドレイク王に会いたいです」

「よし分かった。通れ」

 えー、問い合わせ無しでOK
「えっと、仲間が来ています。リザードマンのダイオ達です」

「本当か。今日は、酒盛りだな、な、おい」
「ちょっと皆に、知らせてくる」

 この人たち、本当に衛兵か?
「すいません、城の中で、待っていていいですか。ちょっと、ギャラリーが多くて」

「いいぞ、入れ」

 さすがに、子供たちは、この中まで入ってこない。

 しばらくすると、10人ぐらいの衛兵が、ダイオのビールを取りに行くと言って、門から出て行った。

「客人、名前は、なんて言うんだ。そんなヒョロヒョロで、大丈夫か」

 いやいや、そっちが、チビデブでしょう。
「ヒロです。一応、騎士です」
 バクバ隊のリザードマンに、はっきり言われたので、これからは、騎士で通そうかと思っている。
― バカ、鍛冶屋もやってますって言えよ
 そうか
「騎士なんですが、鍛冶屋にもなりたいと思ってます」

「よーい、心がけだ。ドレイク王に言ってみろ。喜ぶから。わしはロロだ。兄弟に鍛冶屋がいるから、わしの所に泊まるか」

「ドレイク王が、いいって言ったらそうさせてください」

「分かった。酒盛りの後で、泊まりに来てくれ。弟を紹介する」

 えー、決定事項?
「お願いします」

 コンピューターどう思う
― 何が

 ここ、おれ等だと、中世評価だよな。なのに、この町は、格差が小さくないか。いや、むしろ小さすぎだろ。子供は、外者に物怖じしないし

― 私たちの世界の古代史に1例だけ、事例があるぞ。多分、ここの女性は、男性と格差がないと、言うか、女の方が強かったりしてな

 なんか分かる気がしてきた。超長い平和か続くとこうなるんだよな
― そうそう。多分、神様の親民を、王が預かっているという構図だ。なんせ、エルフの超古代技術を保存している町だからな

 いいところじゃないか
― そうだな

 そう思って、腰に手を当てて、子供たちを眺めていると、ダイオ達が、大勢の民衆を従えてやって来た。

「ガブ、今日は、酒盛りか」
「そうだ。ドレイク王には、話したか」
「まだだ、皆、ビールを取りに行った」
「それは、さっき会ったが、今は、ロロだけか」
「そうなんだ。このヒロも連れて、王の間に行ってくれ。大臣」

 ガブって大臣?もしかして、偉い人?

「後で話すが、フェーズが変わるぞ。2.0701とか2.0703とかじゃないぞ。3だぞ。こころしろ」
「なんだと。この客人たちが来たからか」
「そうだ。まだ先だがな、地上が変わる。今回は、トップ技師が、変わるだけじゃない。我らもだ」
「長かったな」
「その前に酒盛りだ」
「了解した。大臣閣下、どうぞ」
 ロロは、ニヤッと笑って、斧をの柄をどんと地面に打ち付けた。この人、門番をやってるけど、この人も偉い人かもしれない。

 急に衛兵が、しゃんとした。なんだろうと思って、ガブの後について行った。




 王の間に行くと、ドレイク王が、側近の多分トップ技師と言われる人たちと打ち合わせをしていた。

「王様。ダイオです。世代交代をするそうです。それから、この人間たちを海に出したいそうです」

 これを聞いたドレイク王、以下、トップ技師たちが、打ち合わせを止めて整然と並んだ。トップ技師たちに、緊張が走ったように見える。

「ダイオ良く来たな。ダイオのビールは旨いからの」

「息子の、バクバですじゃ。リザード族最強の戦士ですぞ」
 バクバが、ぺこっと頭を下げる。

「酒造りの方はどうだ」

「これから教えます。今日は、世襲をしに来たのですが、それとは別に、ドレイク王に力を借りとうてやって来ました。火の国のミランダ姫に、その騎士ヒロです。どうです、うちの姫は」

 ドレイク王が、トップ技師たちを見回した。みんな小さくうなずいている。

「トポよ、何か言いたそうじゃな」

「我らの二世代上の技術でございます。これは、異世界の扉を開く一歩手前。素晴らしいニューロネットの光が見えます」

「二人ともか」

「エルフ様の神官服っぽい防護服を着た人間がそうです。姫様の方は、まだ時間がかかるでしょうが、すぐ構築されると思いますが」

「ヒロです。ニューロリンクのことがわかるんですか」

「我らは、魔法も使えますから、見ただけで分かります。ヒロさんもこれからですね」

「トポは、土魔法、オーポエ〈生命の循環魔法〉が得意なのだ。知的生命体に強い。わしからもいいか。ミランダ姫は、エルフの家を復興される方じゃ」

「なんと」
「時期が来たか」
「妖精たちが喜ぶわ」

 トップ技師たちは、ミランダに駆け寄り、祝いの言葉を言った。

「姫様、トポです。お会いできて光栄です」
「バオです。龍王城の浄化施設を担当しています。空いた時間がありましたら、遊びに来てください」
「パオの妻、オメオよ。パオは、いいから、お茶を飲みに来てね」
「クロエです。乗り物を設計しています。なんでも言ってください」

「ミランダ姫、後5人トップ技師がいる。酒盛りの席で話をしてやってくれ」

 ミランダは、スカートを少し持ち上げて挨拶した。
「ミランダ・ホン・サラマンダーです。みなさん、よろしくお願いします」


「ドレイク王、頼みがあるんじゃ。この二人を海に出したい。代価は、これじゃウィスキーじゃ。世襲の願いと合わせて、2本見本を持ってきたぞ。バクバ、王に献上じゃ」

 二人は、王のもとに行って、ウィスキーを差し出した。

「ちょっと、匂いをかいでみるか」
 一本ボトルを開けて王の鼻先に持って行く。

「なんと香しい匂いじゃ。ダイオ、何でも言ってくれ」

「じゃから、もう、頼んだじゃろ。この二人を海に出したいんじゃ。潜水服を頼む」

「けち臭いこと言うな。エアーバリア潜具を作らすぞ」

「王様、それは、風硝石がないと無理です」

「あの、これですか」
 ミランダは、風の精霊、エイブラハムからもらった風硝石のネックレスを胸から出して見せた。

「なんと巨大な風硝石だ。世界樹級ではないか。トポよ、ロウガに持って行け」

「あなた、今ちらっと姫の服の下が見えたわ」
「ああ、まさかな」

「どうした、パオ、オメオ」

「姫様、失礼とは思いますけど、上着を脱いでもらえませんか」

 オメオさん、最高!

「えっと」
「脱げよ。大事なことなんだろ」
「ヒロのエッチ」

 ミランダは、諦めたように、巫女装束だけになった。

 これを見たドレイク王が、王の座からミランダに駆け寄った。
「フルーレ女王がこれをか?我らの希望は加速するのですか」

「ごめんなさい、これは、エイブラハムが、火龍王様を驚かそうとして、無理やり私に着せたものです」

「そうでなのすか」
「王様、落ち込むのが早い」
「こら、オメオ」

「いずれにしても、皆の者、今日は宴じゃ。バクバ、よく来た。ダイオ、潜水装備の代価は、安くないぞ」
 ダイオ親子は、また、頭を下げた。

「覚悟しとるわい。急ぎなんじゃ。何とかしてくれんかのう」

「姫よ、この風硝石を預からせてくれ。ガブとパオは、宴の準備じゃ。オメオは姫に付け。クロエは、セラと一緒に、バクバの船を見てやってくれ。竜宮は遠い」

「セラは、自分が呼びに行きます」

「王様、ウィスキーは、ご相伴してよいのですね」
「あんた!」
 ドレイク王は、パオに言われて、ダイオに振り向いた。

「ダイオ!どうなんじゃ」
「後で、樽ごと持ってくるわい」
「2樽じゃ」
 ここでドレイク王は、王の威厳?を見せる。
「わかった」
「じゃ、そうだ」

 まだ、ドワーフの言葉が理解できないバクバが、父親に聞いた。
「親父、交渉は、成立か」
「成立じゃが、2樽も取られた」
「おれも、作り方、覚える。もっと作ろう」
「そうじゃの」

 ダイオとバクバが親子の会話をしている。世襲は、成功したようだ。ダイオは、それなりに満足した顔をした。ドレイク王のほうは、ものすごく満足した顔をしている。今だと思った。

「王様、ロロの所に泊まりたいのですがいいですか」
 これは、鍛冶屋の腕をあげる最大のチャンス。

「なんじゃ、もう、仲良くなったのか。ヒロは、好きにしてよいぞ。ミランダ姫は、お披露目だ。オメオについて行きなさい」

 攻守逆転。今度は、ミランダが、見世物になる番だ。

「ミランダ、姫らしくな」
「酒場の席で?」
「これも、エルフの家を興すためだろ」
「もう」
 ミランダは、なんか怒っていたが、オメオが来たら愛想笑いをしていた。

「ミランダ姫。エルフの巫女服は、1万年も世の中に出たことがない服なのよ。みんなにも、見せてやってくださいね」
「ずっと、このままですか」
「何か羽織らないと。ショールを用意しましょう。錦のメンテナンスも必要ね。私の家にいらっしゃい」
「この服、錦って言うんですか」
「そうよ白地に赤模様。とてもめでたい服よ。でも、宴の席で、お酒を飲んではダメ。品を保つのよ。王に勧められても、口をつけるだけにしなさい」
「私、どうせ飲めないです」
「そうなの。それと、食事もしないでね。だから、うちで食事をしていってね」
「よろしくお願いします」

 女同士連れだって、王の間を出て行った。
 ダイオとバクバは、クロエについて、高速艇を見に、ガブは宴の準備に行った。ぽっかりおれだけ、王の間に置き去りにされた。ロロには、宴の後、家に来いと言われている。
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