碧の幻獣使い

星村直樹

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夜語り

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 藁がいっぱいある納屋に帰って、すやすや寝ているミランダを見た。おれは、さっきヌエが言った謎かけが気になってしょうがない。いつもだったら、ミランダの寝姿にぼーっとなった後、こりゃいかんと思って、寝ようとするのだが、今夜は、ミランダの横で胡坐をかいて、コンピューターと話をすることにした。

「ヒロは、寝ないのー」

「ヌエが言ったことが気になるじゃないか」

「ぼくたち、寝るね」
「ヒロ、お休み」

「ああ、御休み」

 パグーとユウは、ミランダの傍ですぐ寝てしまった。


 さてと、コンピューター。ゲームだと思って聞き流していたけど。パーソナルリアリティの獲得ってなんだ。それが、第三世代のカギなんだろ

― そうだ。パーソナルリアリティの獲得って言うのは、無意識の常識を塗り替えることだ。今日ヒロは、微弱だが、電気を流していただろ。普通そんなことできるか?

 常識じゃあ、あり得ないな

― ちょっと、やってみろ。さっきは、10アンペアぐらい電流を流しただけだが、気合を入れたら20ボルトぐらい行けるんじゃないか

 アンペアとボルトを一度に言うなよ

― そうだな。外に水桶があっただろ。そこに手を入れて電気を流してみろ。沸騰するから

 いや、いいよ。ごそごそしてたら、みんなに悪い。とにかく、そんなことができるようになったんだな。他には何ができる。パトーナムがどうとか言ってたけど、それもか?

― そうだな。そっちの方が、すぐ、ここで、出来そうだ。指先だけにパトーナムを出してみろ。光るから

「パトーナム」超小声

 うわっ
 自分の指先が光ったのに驚いて、大声を出しそうになって口を押えた。指先の光は、すぐに消えることなく、この納屋を照らした。

― なっ、パーソナルなリアリティを獲得しているだろ。事象って言うのは、本当は、それが起こるまで、どうなるかわからないものなんだ。でも、常識が邪魔する。無意識の常識は、自分が考えていることの90%もあるんだ。だから、これを払しょくしないと、非常識なことは起こらない。ヌエが言っていた。確率ではありえないことがこれだ

 でも、コンピューターの計算は、この現象も織り込み済なんだろ

― 参るよな。この先ってなんだ。私たちは、人間にインプットしてもらったことを応用しているだけだろ。だから、鵺は、私のことをライブラリー君って言ったんだ。でも、未知の情報も獲得しつつある。私は、ミランダと繋がった

 なるほど。それが、お前のパーソナルリアリティの獲得か

― そうだ。本当は、風の妖精ともつながりたい

 そんなことを言ってたよな。じゃあ聞き方を変える。碧の幻獣使いのレベル120ってなんだ

― 答えられない

 なんで?

― ゲームの仕様だ。ここまで、早く辿りつけよ

 そう言うところは、ゲームのままなんだな・・・くそっ。じゃあ、レベル496ってなんだ

― 神の数字だ。理論的には、神の数字だとしか言いようがない

 なんとなくわかる。何にもないところから、このポシェットを出したもんな。ちょっと待て、理論的にはと言ったな

― そうだ。496は、この世の事象全てを表すのに一番近いとされる数式の中に組み込まれている数字だ

 ヒントを貰っているじゃないか。帰って、ホストコンピューターに繋がって、第一世代の人たちに、答えを導き出してもらおう

― どうやって帰る

 そうだよな

 結局わからないことだらけじゃないかと頭を抱えてしまった。

 それにしても麒麟ってすごいな。ヌエに頼めば、ミランダの使いなんて、すぐ解決するんじゃないか

― あそこまで超越しているんだぞ。次世代を育てるために、極力干渉しないさ。レベルが120になったら、次のヒントをくれるって言ってただろ。それと一緒だ

 そんなものか。「あーーー、なんだかな」


「ヒロ、寝れないの」

「ごめん、起こしちゃったか」
 おれは、いつの間にか悩んで、ごそごそしていたし、声を出していたようだった。

 コンピューター、パグーとユウを起こすわけに行かないから、ミランダと、通信してくれよ

― 甘えるな。まあ、テストということで、許可する

 すまん

― 回線を開いたぞ。実際は、地球の裏側にミランダがいても、話ができるんだ。人工衛星が、あるからじゃないぞ。テレパシーだからだぞ

 その講義は、また聞くよ。ミランダ、聞こえるかい

 うん、コンピューターと、よく似ているのね

 コンピューターが、おれをベースにしているんだ

 うん。・・・ヒロ、ありがとう。命を助けてくれたんでしょ。あの時は、下が裸だったから、お礼言うの忘れてた。

 えー、あれは、なんて申しましょうか。こちらに不手際が、ありましてーー・・


 こうして、夜が更けていった。
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