ショートショート集

kromin

文字の大きさ
上 下
50 / 59

一人称オデの男しかいない異世界

しおりを挟む
ここはいわゆる剣と魔法のファンタジー世界。

「さあ、冒険もそろそろ中盤だドね」
「ああ、そうだな」


「…あ、あのー」

「んー?暴走トラックに跳ね飛ばされて転生して来たDK勇者くん、どうしたド?」

「…い、いや今更なんだけどさ。典型的パワーファイターな君はともかく、どうしてパーティーキャラ全員一人称オデなの。行く先々で出会うNPC男性も全員オデキャラだし」

「…もう4月程も旅しているのに本当に今更だな。この世界の男は皆一人称がオデなのだ」
「そ、そうなの。銀髪痩躯でクールな細剣使いの君が一人称オデとか違和感凄まじいんですけど」

「まあ、異世界から来た君的にはそうだろうけどさ。オデたち皆そうだしそういう世界だし慣れなよ」
「…い、いや物腰柔らかな吟遊詩人でCV花江〇樹の君も致命的にオデ呼び似合わないし。普通そこは僕とかでしょ」

「うーん、そうは言ってもねえ。伝承で別の男性一人称が存在すると知ってはいたけど、オデも実際に目にするのは初めてだし。この世界でオデ以外の一人称を使う男性なんてよっぽどの狂人しかいないと思うよ」
「…そ、そうなの」

「ああ、この世界の真実を知って発狂した天才科学者も一人称は最期までオデだったしな」
「…い、いや一人称オデの天才科学者とか普通無いでしょ」
「えー、それはオデ差別だド」
「うん、偏見は良くないよ」

「え、えー…。正直オデキャラ多すぎて精神的に疲れるから女性キャラ加入しないかなあ」
「うーん、流れ的にそろそろ新しいキャラ来ても良いと思うけど。でもたまに女性でもオデ使う人いるよ」
「ああ、男勝りな奴などはそうだな」
「えー、オレっ娘みたいな感じか」

「おうお前ら!オデは正義感溢れる盗賊団の首領の娘だがお前ら面白そうだし、オデも連れて行け!」
「あーほら、こういう感じの子とかさ」
「…え、えー…」


仕方なくおてんば義賊のオデっ娘を仲間に加え、更に少し後。

「うーん、もう冒険もかなり進んで終盤近いドね」
「ああ、最近は無いが初代PSで言うとDISC2の終盤あたりだな」
「…な、何で異世界の君達が初代PS知ってんの」
「まあ異世界転生してくる人達は昔からたまにいたし、次元移動や宇宙の真理について研究してた例の天才科学者とかもいるからさ」

「…な、なるほど。あの後更に数名仲間増えたけど、結局皆男でオデキャラだし…」

「ああ、家族を皆殺しにしたあのクソ魔王を殺した時、オデの復讐の旅も終わる」
「…う、うん。闇深いCV梶〇貴の復讐者な君も絶対オデってタイプじゃないよね…」

「…軟禁されていたものの何不自由なく侯爵家の子息として過ごしていたけど、実は数年前例の科学者の部下に凶悪兵器として利用するべく造られたクローンだったと知ってもう何もかもどうでも良くなったオデだけど。こんなオデにも何か出来る事があるといいな」
「…そ、そうだね。最初は典型的な高慢な箱入り息子だったけどその真実を知ってから相当卑屈になったCV鈴木〇尋の君も気の毒だけどやっぱオデ似合わなさすぎるし」

「色々闇の深い子達が多いけど、オデはきっと皆幸せになれると信じているよ」
「…飄々とした糸目でCV石〇彰の君も違和感凄すぎるし絶対この後裏切るよね。ってかこのパーティー地味に声優陣豪華だな」

「さあ、何か秘密があるっぽい魔王の城ももうすぐだよ。オデ達皆強くなったし普段は可愛い小動物姿だけど本気出すと巨大な聖獣になるマスコットキャラもいるし、きっと勝てるよ。ねえ聖獣くん」
「オデオデー!!」
「…鳴き声までオデだし…」


相当居心地悪いながらも仕方なく魔王の城へ乗り込み死闘を繰り広げ、若干の犠牲者は出てしまったものの僕達は何か秘密があるっぽい魔王をどうにか討伐した。

ラストダンジョン突入直前に糸目のCV石〇彰の青年はやっぱ裏切り、貴重な戦力が抜けてかなり大変だった。

魔王が崩れ落ちた瞬間、天上から伝承でだけ存在が示唆されていた最高神が現れて僕達に語り掛けた。


「…勇者達よ、感謝する。こやつは遥か昔オデが完璧な存在になるため切り捨て地上に封じた弱さや悪の心の化身なのだ」
「ああ、そうだったのですか」
「…最高神まで…」

「…オデの半身よ、済まなかった。この若者達を見ていて、弱さや闇は目を背け切り捨てる物では無いと悟った。再び一つになり、これからはずっとお前と共に生きて行こう」
「…オデはもう、一人では無いのか」

「うん、良かったね」
「…やっぱ魔王もだし…」


そうして半身の魔王と融合し本来の姿となった最高神は去って行き、僕達の長い旅は終わった。

「いやー、パーティーやNPCキャラから数人犠牲は出てしまったけど、終わって良かったドね」
「…そうだね。CV梶〇貴の復讐者の彼は魔王に特攻を仕掛けて散ったけど、最期は満足そうで良かった」

「まあ、来世ではきっと幸せになれるし、ギャグ時空の別世界線では元気にやってるから大丈夫だよ」
「…そ、そうなんだ」

「…オデも自爆するつもりでいたんだけど、オデを庇って死んで融合したオリジナルのあいつの分も、オデ頑張って生きて行こうと思うよ」
「…う、うんそれは良かったんだけどやっぱ一人称でぶち壊しだし…」
「生まれた意味を知れて良かったな」

「糸目のCV石〇彰の彼は最後の最後に魔王に一撃与えてどこかに去って行ったね」
「結局あいつは何をしたかったんだろうな」
「典型的なトリックスターだドね」

「やー、オデももうすっかり大盗賊だな!お前ら楽しかったよ、またな!」
「…う、うん元気でね…」


そうして闇深クローンの子は祖国へ戻り、僕達を送り出した王国に帰還後。

「ああ、君すごく頑張ってくれたからこの国の王様が養子にしたいってさ」
「名君と誉れ高いオデオン王の世継ぎになれるなんて凄いド、良かったドね」
「ああ、ごく普通のDKからは異例の大出世だし良かったな」
「オデオデー!」

「…い、いや何か居心地悪すぎるから申し訳無いけど帰ります…」
「えー、超もったい無いドー」


そんな訳で世継ぎを丁重にお断りし僕はさっさと元の世界に帰った。

僕の世界も世界で殺人鬼うろついてたり暴走トラックしょっちゅう出たりデスゲーム人気だったり相当アレだがオデ以外の一人称に久々に触れられて心の底から安堵した。


※二週目以降限定で挑める超強い狂人の裏ボスだけは一人称俺。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...