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少し運動してみる大罪人

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私が罰を受けて200年程経った頃。

「あ、今日の責め苦は運動してみようか。5キロくらい這いずって移動してね」
(はい、分かりました)

「当然見えないから道は分からないだろうけど僕が導くから。ほとんど一本道だしね」
(はい、よろしくお願いします)


「じゃあここから始めようね。何時間かかっても良いからゆっくり進もうね」
(はい、頑張ります)

「うん、手足無くて這いずっているにしては良いペースだと思うよ。胸ももうほとんど無いから動きやすいだろうしね」
(ええ、大変だけど楽しいです)

「罰だから仕方ないけど、女性の部分全部無くしてごめんね」
(ええ、それは仕方ないと思っています)


「うん、君生前は男遊び相当激しかったもんね。女の子でもする事あったし」
(…はい、主人や子供がいたのに申し訳ない事をしました)

「それに、大半は同じ貴族だったけど。たまに乞食同然の貧民の子でひどい遊び方をする事もあったね」
(…そうした子達には、もちろんお金を与えていましたが可哀想な事をしました)

「最悪の場合、後で発覚して不敬罪で処刑されてしまう事もあったもんね」
(…本当に、申し訳ない事をしました)

「そういった事もあって、君の罪は数百年増やされたんだ」
(ええ、当然の処罰だと思います)

「病弱なお母さんのために身売りしていた子も、お母さん共々処刑されて可哀想な事になったしね」
(…本当に、ごめんなさい)


「まあそんな可哀想な子達は、ちゃんと来世で幸せになれるから大丈夫だよ」
(…ああ、良かった)

「君も最近はかなり反省して、毎日謝罪するようになったしね。当然減刑はされないけど良い事だと思うよ」
(はい、ずっとあの子達には謝罪しています)

「神様も反省したのを見越して、減刑されないまでも責め苦は少しは減らしてくれるかもしれないしね」
(ええ、でしたら嬉しいです)


(…ああ、誰か別の人がいる気配がする。この方も苦行者でしょうか)
「うん。彼はまあ悪徳宗教の幹部で、悪気は無かったけどひどい教えを広めて、何人も道連れにして集団自殺しちゃったの」

(…ああ、それも気の毒ですね)
「まあそんな宗教に縋ってしまうくらいだから、彼も相当不憫な身の上でね。もうこの教え以外に無いと信じ切ってしまったの」


(…私は、恵まれていたのに本当になんて事をしてしまったのだろう)
「そう思えるようになったのは、良い事だと思うよ」


(…彼は、どのくらいで許されるのでしょうか)
「かなりの数殺しちゃってるけどこの人も可哀想だから、120年くらいだと思うよ。で、だいぶ気の毒だから木の棒みたいなものだけど義足は付けてあげてるしね」

(ああ、そうなのですか、良かった)
「彼も死後すぐに洗脳を解かれて、きちんとした倫理観を教え込まれて自分のした事をとても反省したしね」

(そうですか。救いがあって良かったです)
「うん、やっぱり神様もこの人みたいに本当に気の毒な人にはだいぶ慈悲を下さるからね。とは言え自殺しちゃったから罪はしっかり償ってもらうけど」


(…そうですね。私が言えた事ではありませんが、命は大切にしないといけませんね)

「ああ、それでやっぱり秘密裏になんだけどこの世界自殺志願者にはかなり厳しくてね。数回なら警告程度で済むんだけど、反省しないで何度も繰り返してる人には相当な罰を与える更生施設があるんだ」

(へえ、そうなのですか)
「うん、事情がある子にはそれなりに配慮するけど。それでもやっぱり反省しない子は、死んだ事にして人里離れた秘密の孤島に連れていかれるの」


(そこに連れていかれた人は、どうなるのでしょうか)
「うん。色々なタイプの処罰があるけど一番多いのは君みたいな体にされて、もう何も出来ないし何も分からない状態にされて、強い延命処置を施されて数年間生かされるんだ。一応脳波を利用してある程度の意思疎通はするけどね」

「それで数年経ってもう殺して欲しいとなった頃に、相当貧弱だけれども棒とかみたいな補助機械に載せられて、どうにか動けるように改造されて視覚や聴覚も補助されて。顔も粗末だけど一応お面やウィッグを被せてあげて、メイドさんみたいな事をさせて奉仕してもらうの」

(…ああ、そうなのですか)

「当然そんな状態で働かされるのは苦痛なんだけど。まあ報酬って事で脳波を介して快楽を与えてあげたり味覚を刺激して美味しい物食べさせてあげたり、お仕事の無い時はメイド仲間と会話させてあげたりしていくうちに、大半の子はそんな体なりに楽しむようになっていくの」


(そうなのですか。慈悲はあって良かったです)
「うん、容赦ない罰は与えるけど更生施設だからね。殺してしまう事はほぼ無いよ」

(それで、その子達は最終的にはどうなるのでしょうか)
「もう何年も経って、人によっては10年くらいだったりもするけどすっかり更生して死ぬ気も無くなった頃には段階的にもう少し良い体にしてあげて。最終的にはもうほぼ普通の顔かたちにしてあげて、ずっとその島で奉仕してもらうの」

(ああ、それは良いですね)
「うん、それでそういう体にする時に摘出した部位や臓器は世界中の可哀想な人達のために利用されるしね」

(なるほど、そういう風になっているのですね)
「そう、せっかくの命を無駄にしちゃいけないからね。で、更生して奉仕している子には、新しく来た子達のお世話をしてもらうの。元経験者って事でね」


(ええ、良いと思います。いつか私が許された時には、その島に行ってみたいです)
「うん、たぶん許可してもらえると思うよ。まあ当分先だけどね」

(はい、それまで頑張ります)


「うん、もう8時間くらい経ったけどゴールだよ。お疲れ様」
(はい、大変だったけど久しぶりに体を動かせて楽しかったです)

「這いずるのも慣れると楽しいでしょう」
(ええ、そうですね。汗を流せて気持ち良かったです)

「うん、全身傷だらけだけど一応汗腺は残っているからね。あと涙腺も」
(ええ、汗や涙を流せるのは嬉しいです)


「じゃあ帰ったらすぐ体を洗ってあげるからね。帰りは僕が抱き上げて飛んで帰るから」
(ああ、飛ぶこともできるのですか)

「うん、僕天使みたいなものだしね。色々出来るよ」
(では、よろしくお願いします)


ずっと後。

「では、今日は運動をしましょうか。5キロほど這いずって進みましょうね。どれだけかかっても良いですよ」
(はい、分かりました)
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