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村おこしに奇祭を考える風前の灯火な寒村
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「えー、この度お集まりいただいたのは他でもありません。我が村が過疎も過疎になり、経済的にも相当アレでもう完全に限界集落になって、近隣の村や町と併合や移住の案も出ている訳ですが、その是非についてです」
「ですよねー。まあもう分かりきっていましたが」
「学生さんなんてもう集落に数軒しかいませんもんね」
「当然学校も遠くの場所に通わされて可哀想に」
「まあ経済的にも農耕的にももう限界な訳で、私は併合も止む無しかと思いますが」
「ううむ。しかし室町時代から続いたこの村を捨ててしまうのはやはり悲しいですなあ」
「先生、昭和の初めからお医者さんをされていた家系ですものね」
「経済的にも相当終わっているので、産廃処理場やダムにされる案もありますしそれは悲しいですよね」
「やっぱり何だかんだいって愛着のある土地ですものね」
「では、まあ難しいとは思いますが、何か村おこしでも考えてみましょうか」
「うーん。とはいっても本当に大した特産品も名所も無い村ですからねえ。まあある程度の大きさの沼とか、そこそこ綺麗なお花畑くらいならありますが」
「正直それではインパクトに欠けますものね」
「何かゆるキャラとかイラストを作成して貰おうにも、そんな依頼するお金がある訳も無いですし」
「すみませんな。私が画伯で無かったら何とか描いていたものを」
「…村長の作品、完全に呪いの絵ですもんね…」
「うーむ。では元手のかからない、何か面白い案でも無いでしょうか」
とか何とか皆で頭を捻っていたら、小さな集会所の扉をコンコンと叩く音が聞こえた。
「おや、こんな所にどなたでしょうか」
「はい、今開けますね」
そこに居たのは、上品なスーツに身を包んだ3・40代くらいの紳士然とした男性だった。
「ええと、どちら様でしょうか」
「珍しいですが、観光の方ですか?」
「いえ、私はナイアルラトテップと申します」
「な、ないあーらとてっぷ?」
「まあ要するに邪神です。他にもニャル様だとか月に吠える者だとか色々な名前があります」
「…じ、邪神様がうちに何の御用でしょうか」
「こちらの村が存続の危機というのを邪神ネットワークで察知いたしまして、ある案を持ってきました」
「そ、その案と言いますと?」
「ええ、私は自分で言うのも何ですがかなり知名度が高く人気の邪神ですので、この村に分社を建てては如何かと」
「な、なるほど。しかし邪神を祀ってこの村は大丈夫なのでしょうか」
「まあ完全に因習村にはなりますが、私は比較的人間に友好的な神なので住民には配慮いたしますよ」
「さ、左様でございますか」
「という訳で、建立の費用は私が全額持ちますから、早速神社を建てては如何かと」
「わ、分かりました。かなり怖いですがそういう事でしたら」
という訳で早速、かなり怖いが邪神の手先の現場作業員が数名派遣され、黄色いヘルメットを被り名状しがたい作業服を着た胡乱なガテン系の男たちが軽快に神社を建てていった。
数日後。
「はい、ないあら神社の完成です」
「おお、名状しがたいですがなかなか立派な建物ですな」
「この狛犬は見た事ありませんが何でしょうか」
「ああ、ティンダロスの猟犬です。信仰心の無い物には鋭角から現れ襲い掛かります」
「ひ、ひい」
「そういう訳で住民の方々は、ゆめゆめ信仰をお忘れなきよう」
「ぜ、絶対信仰いたします」
「まあ毎黄昏時か深夜に参拝してくださればそれで十分ですよ。SAN値には十分配慮いたしますので」
「あ、ありがとうございます」
「それで、早速WEBページも作りましたのでクトゥルフファンが大勢詰めかけるでしょう」
「そ、それは嬉しいですな。怖いけど」
「それで、扱いを間違えると発狂し最悪ロストするお守りやありがたい御札や、ショゴスを象った可愛いマスコットなども売り出しましょう」
「ひ、ひええ」
「ああ、神主は私の配下が擬態し務めますので。巫女さん達も眷属が務めます」
「わ、分かりました」
「時たま何を言っているのか分からなかったり名状しがたい祝詞を唱えたりしますが、基本的には友好的ですのでご心配なく」
「か、かしこまりました」
「それから折角ですので定期的に例大祭を行いましょう。それも私の配下や眷属がすべて行うので、貴方がたはお手伝いだけで大丈夫ですよ」
「い、色々ありがとうございます。相当怖いけど」
それからというもの速攻で村と神社はその手のファンに話題となり、日夜物好きが押しかけ人気となった。
少し経済的に余裕が出てきたら小さい旅館や食堂等を建て、更に儲かった。
数年後、村は完全にSAN値直葬状態とはなったがすっかり有名になり持ち直した。
「いやあ、まあ相当にアレですがすっかり村も栄えましたし、ないあら様には感謝しないとですな」
「ええ、私の病院も一時的発狂した観光客たちが押し寄せ大忙しですし」
「たまに信仰心の薄い愚かな観光客が猟犬や眷属に襲われ死にかけますものな」
「実際最悪死んでロストしますが。まあ沼なり突然空いた深淵の大穴なりに投げ込めば済む事ですし」
「沼もいまや完全にアレな海産物が棲みつきましたものな」
「沼なのにすごいですよね」
「花畑も発狂した者には綺麗なタンポポに見えますが、正常な者が見ると超グロイ花畑になりましたものな」
「時々可愛いワンピースの女の子が立っていますな」
「村長の呪いの絵もこういう村になってからは大人気ですな」
「ええ、ネット上で話題で嬉しいですな。3度見ると狂うとか親兄弟が死ぬだとか」
「ああ、今年もまた例大祭が始まりましたな」
「イスの偉大な楽隊がやってきて妙なる音楽を奏でてくれますものな」
「アレな材料を使ったタコ焼きも絶品ですな」
「黄金の蜜蜂酒も最高の酔い心地ですものな」
※村の子供達は大概小説家やジャーナリストとかになった。
「ですよねー。まあもう分かりきっていましたが」
「学生さんなんてもう集落に数軒しかいませんもんね」
「当然学校も遠くの場所に通わされて可哀想に」
「まあ経済的にも農耕的にももう限界な訳で、私は併合も止む無しかと思いますが」
「ううむ。しかし室町時代から続いたこの村を捨ててしまうのはやはり悲しいですなあ」
「先生、昭和の初めからお医者さんをされていた家系ですものね」
「経済的にも相当終わっているので、産廃処理場やダムにされる案もありますしそれは悲しいですよね」
「やっぱり何だかんだいって愛着のある土地ですものね」
「では、まあ難しいとは思いますが、何か村おこしでも考えてみましょうか」
「うーん。とはいっても本当に大した特産品も名所も無い村ですからねえ。まあある程度の大きさの沼とか、そこそこ綺麗なお花畑くらいならありますが」
「正直それではインパクトに欠けますものね」
「何かゆるキャラとかイラストを作成して貰おうにも、そんな依頼するお金がある訳も無いですし」
「すみませんな。私が画伯で無かったら何とか描いていたものを」
「…村長の作品、完全に呪いの絵ですもんね…」
「うーむ。では元手のかからない、何か面白い案でも無いでしょうか」
とか何とか皆で頭を捻っていたら、小さな集会所の扉をコンコンと叩く音が聞こえた。
「おや、こんな所にどなたでしょうか」
「はい、今開けますね」
そこに居たのは、上品なスーツに身を包んだ3・40代くらいの紳士然とした男性だった。
「ええと、どちら様でしょうか」
「珍しいですが、観光の方ですか?」
「いえ、私はナイアルラトテップと申します」
「な、ないあーらとてっぷ?」
「まあ要するに邪神です。他にもニャル様だとか月に吠える者だとか色々な名前があります」
「…じ、邪神様がうちに何の御用でしょうか」
「こちらの村が存続の危機というのを邪神ネットワークで察知いたしまして、ある案を持ってきました」
「そ、その案と言いますと?」
「ええ、私は自分で言うのも何ですがかなり知名度が高く人気の邪神ですので、この村に分社を建てては如何かと」
「な、なるほど。しかし邪神を祀ってこの村は大丈夫なのでしょうか」
「まあ完全に因習村にはなりますが、私は比較的人間に友好的な神なので住民には配慮いたしますよ」
「さ、左様でございますか」
「という訳で、建立の費用は私が全額持ちますから、早速神社を建てては如何かと」
「わ、分かりました。かなり怖いですがそういう事でしたら」
という訳で早速、かなり怖いが邪神の手先の現場作業員が数名派遣され、黄色いヘルメットを被り名状しがたい作業服を着た胡乱なガテン系の男たちが軽快に神社を建てていった。
数日後。
「はい、ないあら神社の完成です」
「おお、名状しがたいですがなかなか立派な建物ですな」
「この狛犬は見た事ありませんが何でしょうか」
「ああ、ティンダロスの猟犬です。信仰心の無い物には鋭角から現れ襲い掛かります」
「ひ、ひい」
「そういう訳で住民の方々は、ゆめゆめ信仰をお忘れなきよう」
「ぜ、絶対信仰いたします」
「まあ毎黄昏時か深夜に参拝してくださればそれで十分ですよ。SAN値には十分配慮いたしますので」
「あ、ありがとうございます」
「それで、早速WEBページも作りましたのでクトゥルフファンが大勢詰めかけるでしょう」
「そ、それは嬉しいですな。怖いけど」
「それで、扱いを間違えると発狂し最悪ロストするお守りやありがたい御札や、ショゴスを象った可愛いマスコットなども売り出しましょう」
「ひ、ひええ」
「ああ、神主は私の配下が擬態し務めますので。巫女さん達も眷属が務めます」
「わ、分かりました」
「時たま何を言っているのか分からなかったり名状しがたい祝詞を唱えたりしますが、基本的には友好的ですのでご心配なく」
「か、かしこまりました」
「それから折角ですので定期的に例大祭を行いましょう。それも私の配下や眷属がすべて行うので、貴方がたはお手伝いだけで大丈夫ですよ」
「い、色々ありがとうございます。相当怖いけど」
それからというもの速攻で村と神社はその手のファンに話題となり、日夜物好きが押しかけ人気となった。
少し経済的に余裕が出てきたら小さい旅館や食堂等を建て、更に儲かった。
数年後、村は完全にSAN値直葬状態とはなったがすっかり有名になり持ち直した。
「いやあ、まあ相当にアレですがすっかり村も栄えましたし、ないあら様には感謝しないとですな」
「ええ、私の病院も一時的発狂した観光客たちが押し寄せ大忙しですし」
「たまに信仰心の薄い愚かな観光客が猟犬や眷属に襲われ死にかけますものな」
「実際最悪死んでロストしますが。まあ沼なり突然空いた深淵の大穴なりに投げ込めば済む事ですし」
「沼もいまや完全にアレな海産物が棲みつきましたものな」
「沼なのにすごいですよね」
「花畑も発狂した者には綺麗なタンポポに見えますが、正常な者が見ると超グロイ花畑になりましたものな」
「時々可愛いワンピースの女の子が立っていますな」
「村長の呪いの絵もこういう村になってからは大人気ですな」
「ええ、ネット上で話題で嬉しいですな。3度見ると狂うとか親兄弟が死ぬだとか」
「ああ、今年もまた例大祭が始まりましたな」
「イスの偉大な楽隊がやってきて妙なる音楽を奏でてくれますものな」
「アレな材料を使ったタコ焼きも絶品ですな」
「黄金の蜜蜂酒も最高の酔い心地ですものな」
※村の子供達は大概小説家やジャーナリストとかになった。
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