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大罪人と癒し番

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この世界では許され難い大罪を犯してしまった人間は、少年少女の姿になり長期に渡り罰を受ける苦行者となる。

苦行者に付き添い痛みを和らげる、癒し番が常に一人付く。


「はい、君は生前とある小国に嫁ぎ、国費を湯水のように使い毎日享楽的な日々を過ごし国民から重い税金を巻き上げ、最後には国民に反乱されて捕まり処刑されたんだよね」
「…はい」

「当然分かっていると思うけど処刑されたくらいでは君の罪は贖いきれないから、これから千年に渡って責め苦を受けてもらうからね」
「…はい」

「これからまず首以外のあらゆるところを切り落として潰して焼いて、もう死んでいるから死ねないけど毎日何も分からない状態で痛みに苛まれ続けながら過ごしてもらうからよろしくね」
「……はい」


「それで、毎日18時間さらに責め苦を受けて貰うから。まあ終わったら僕が抱きしめて癒してあげるから頑張ろうね」
「………」


「はい、じゃあ出来た。当分は痛いだろうけどその内慣れるよ。あ、君は心で想うだけで良いからね」
(…はい)

「で、ご飯は流動食か、お尻から入れてあげるから。舌が無いから当然味は分からないけど、その内分かるようになるよ」
(…はい)

「じゃあ責め苦始めるよ。まずはたくさんの剣を突きさすから、頑張ろうね」
(いたい、いたい)

「はいお疲れ様。次は燃え盛る火の中に投げ入れるからね」
(ああ、あつい、あつい)

「お疲れ様。今度は冷たい氷の海に何時間か沈んでね」
(さむい、くるしい、くるしい)


「はい、今日の責め苦おしまい。じゃあ抱きしめてあげるから。すぐ痛くなくなるよ」
(…本当だ)

「うん、僕の羽みたいな腕で抱きしめると、すぐに痛くなくなるの。まあ無くした腕とかはそのままだけどね」
(…ありがとうございます)

「じゃあご飯入れようね。今回はお尻からね。気持ち悪いかもしれないけどすぐ慣れるよ」
(…はい)


数百年後。

「うん、君もうだいぶ慣れたし、感覚も少し戻って来たでしょう」
(はい、何となく見えたり、聞こえるようになりました)
「まあ舌は無いから相変わらず流動食だけどね。最近はほとんど口からだし」
(はい、味も何となく感じる気がします)

「それで責め苦も少し短縮されて半日程度になったしね。責め苦の無い時間はお話したり歌を聞いて過ごせるしね」
(はい、嬉しいです)


「じゃあ責め苦始めるからね。まずは茨で鞭打ちね」
(はい、よろしくお願いします)


「はい、今日はこれでおしまい。じゃあ抱きしめてあげるから」
(ありがとうございます。貴方に抱きしめて貰うの、とても好きです)

「うん、僕も君のした事許せはしないけど、君の事は結構好きだよ」
(…ありがとうございます)


(…私は愛の無い婚姻で、国の為に嫁がされました)
(…夫はお世辞にも美男子とは言えない容貌で、善良でしたが秀でた才もありませんでした)

(夫は私の横暴ぶりを何度も諌めましたが、私は聞く耳を持ちませんでした)

(…夫や子供を巻き込んでしまった事は、とても申し訳なく思っています)

(…想像は付きますが、子供達はどうなったのでしょうか)

「うーん。可哀想だけどやっぱり君の思った通りになっているよ」
(…ああ、そうですか)


「うん。女の子はまあ何とかまともな所に引き取られたけどかなり貧乏だし、男の子は引き取り先でひどい虐待を受けてね。あんまり長生きできなかったし、ひどいお墓に入れられた」
(…皆、ごめんなさい)

「まあ、旦那さんやあの子達には何も罪も無いから、そのうち幸せに生まれ変われるよ」
(…そうですか、良かった)

「まあ、そういう訳でそれだけ反省したならもう間違わないと思うからさ。あと数百年頑張ろうね」
(…はい)


更に数百年後。

「うん、もうお話出来ない以外はほとんど分かるでしょう」
(はい、声が出せない以外はもうほとんど分かります)

「責め苦もかなり短縮されて、5・6時間程度になったしね」
(はい、本も読ませて貰えて嬉しいです)

「ご飯ももうほぼ、味が分かるでしょう」
(はい、いつも美味しいです)

「あともう少しだから、頑張ろうね。じゃあ今日はファラリスの牡牛だよ」
(はい、頑張ります)


「はい、おしまい。じゃあ抱きしめるからね」
(ありがとうございます。あの、貴方はどうして苦行者になったのでしょうか)

「うん。僕はまあ生まれのせいで仕方なかったんだけど小さい頃から暗殺者でね。戦で相当な人を殺したし、ある時は大国の王を暗殺したりもしたの」
(…そうだったんですか)

「で、本当に申し訳無いけど指令があったら女性や小さい子も殺してたから、それは気の毒だったな」
(…ああ)

「うん、泣き叫ぶ小さい子を燃やさなきゃいけなかったのは辛かったな。まあ仕事だからしない訳にも行かないけど」
(…そうでしょうね)


「で、その内返り討ちにあって殺されちゃったんだけど、いくら生まれのせいとは言えこれだけ殺しちゃ罰さない訳には行かないって事で、300年くらい責め苦を受けたの」
(…大変でしたね)

「まあ、神様からもだいぶ配慮されて、責め苦も軽めのが多かったけどね」
(…それならよかったです)

「うん、で許された後は、もう人を傷つける事したくないから癒し番になったの」
(そうだったのですね)

「それで初めてのお仕事が君だったんだけど、君と長い間居れて嬉しいよ」
(私も、会えて嬉しかったです)


「じゃあそろそろ眠くなって来ただろうから。おやすみ」
(はい、お休みなさい)


さらに少し後。

「うん、千年経って許されて良かったね」
「はい、本当にありがとうございました」

「それで、転生するか癒し番になるか選べるけど、君はどうしたいの?」

「はい、貴方にずっと癒してもらったのがとても嬉しかったので、癒し番になりたいです」
「うん、良いと思うよ」

「あと、もし可能ならば。貴方に似た姿にして欲しいのですが」
「うん、神様に伝えておくね」


「じゃあ、僕はこれから別の子に就くから。でもお休みの時とかはたまに会えるしまたね。お仕事頑張ってね」
「はい、頑張ります」


「初めまして。私は責め苦の後痛みを癒す癒し番です。これから数百年頑張りましょうね」
「…はい」

「貴女は何をしてしまったのかしら」
「…嫁ぎ先で、お金を使い果たしてしまって。夜逃げの途中で国民に捕まってひどく罵られた後殺されてしまいました」

「ああ、貴女も同じね」
「え、そうなんですか」
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