たっくんとゆうちゃん

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第五章

ハッピーバースデー

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俺が倒錯したファッションモデルの仕事を始めて少しした後。

その頃は街中でやっぱり倒錯した趣味の人達から(まあ街中普通に歩いてるくらいだから大概は良識のある人だが)時折声を掛けられるようになっていた。

「あー、月刊ランポのたっくんだよねー。この前の特集良かったよー」
「あ、ありがとうございます」
「うんうん、例のグラビア超お耽美で良かったよー。本当お人形みたいで綺麗だよね」
「ええ、ありがとうございます。俺もこの義肢大好きです」

「ああ、例のサイトで特集されてたたっくんだよね。サイン貰えないかな」
「はい、良いですよー。俺あんまりサインした事ないから下手ですみませんが」

とかなんとか。


「たっくん、すっかりその界隈で人気者で良かったよね」
「うん、初めはやっぱ複雑だったけど、似たような友達たくさん出来て嬉しいし」
「うん、たっくんみたいな子って例の里以外ではなかなか会えないだろうから、良いと思うよ」

「かぐややアカネ達も結構順調に売れてるよね」
「皆綺麗だったりかわいいもんね」

「ほんと、アメノウズメさんにお礼言わないとな」
「うん、お祈りしておけば伝わると思うよ」


その数日後。

「じゃあ、悪いけど今回も眷属出そうで、結構また強敵そうだから皆で行って来て。もちろんサポートの方も付けるからね」
「はーい、心してかかります」

そうして向かったのは、いつぞやの可哀想な悪霊の子がいたお屋敷だった。

「わあ、またここに出るのか」
「うん、あの女の子はもう出ないけど、またここにやばいのが出ちゃうみたい」

「なんか再生怪人と言い、以前悪霊出たとこって再利用しやすいのかな」
「うん、どうもそんな感じみたいだね」

「…俺達は初めての所だ」
「うん、頑張ろうね」
「ああ」


またお屋敷の現管理人さんに話を通し、危険なので住民は全員別所に避難してもらってサポートの方を待った。

用意されたお茶をのんびり飲んでいた所、その方は来た。

「ああ、君達ご苦労様。私はまあ色々名はあるが、いわゆる年神だ」

その人は品のある、和装の老人だった。

「あー、年神様って年に一度お越しになる方ですよね」
「そうだよ。まあ主に正月だが、豊作の時期だったり夏や秋の盛りだったり色々なタイプがいるね」
「ああ、色んなタイプがいる神様なんですね」
「うん、そういう人も結構いるよ」

「まあそんな訳で、よろしくね坊や達」
「え、なんか急に若いお姉さんになりましたね?」

「ええ、私そういうタイプの神だから、その時々で女になったり男になったりするの」
「あー、なるほど」
「習合しているタイプだな」


「で、今回出る眷属もそういう定期的に訪れて災厄をもたらすタイプでね。聞いた事あるかしら。やっぱりいくつか名前があるけどオオマガツヒって奴」

「うっうわ。ゲームとかで聞いた事があります。相当ヤバい奴ですよねそいつ」
「うん、作品によってはラスボス級の奴だよね」

「ええ、かなり強力な災厄の神ね。まあその中ではさほど強力ではないのが救いだけど。でも人の子にとっては相当な強敵だから、頑張りましょうね」

「はい、かなり不安だけど頑張ります」
「災厄もたらされたくないもんね」

「ええ、お父様から私も許されているから、存分に手助けするからね」

「じゃあ、そろそろ来るわ。気を付けましょうね」

「はい!」


相当巨大な奴らしいので俺達は広い庭に出て、そいつを迎え撃った。

空間が黒く歪み、真っ黒な気体のようなそいつが現れ、凶悪な瘴気を放ち始めた。

「見ての通り実体が無いけど、私が物理攻撃も通用するようにしておくから、思い切りやっちゃって」
「はい、ありがとうございます!」


俺達は年神様のサポートを受け、全力でそいつに殴ったり斬りかかった。
さほど強力では無いとは言え国内でも有数の災厄神なので、今までの相手でも相当の強敵だった。

強化された仇討ち程では無いにせよ、それに近いレベルだった。


「…オ前ラ、小童ドモノ癖ニ目障リナ。身ノ程ヲ知レ」

「うるさいなー。小童だけど正義の小童だっての」
「うん、神様味方に付いてるし、身の程知ってるし」

瘴気をかんばせやかぐやが全力で中和してくれ、2時間ちょい程度でどうにか決着は着いた。

「…貴様ラニ、未来永劫ニ呪イアレ」

「あー無駄無駄。もうかなりの神様味方に付いてくれてるしー」
「うん、呪われたって無敵だしー」

そう憎々し気に言い残し、黒い霧は晴れて行った。


「うん、君達本当に良くやってくれた。私からも礼を言わせてくれ」
「ええ、年神様が実体化して下さったお陰です」
「皆も長時間戦ったせいでかなり疲れてるけど、ケガはほとんどしてないしね」
「あー俺もう弾切れ寸前です。また2戦目とか来ないで欲しいなー」

「ああ、今回は予知した所こいつだけだから、安心して良いよ」
「あ、そうなんですか。良かった」

「で、まあ結構な災厄を防いでくれた礼だ。私からも何かささやかばかりにしてやりたいのだがね」
「えー、もう俺十分に祝福受けてるのでお気持ちだけで結構ですよ」


「まあ遠慮せずに。ほら君、貧乏だったりアレされてる間は、ほぼほぼ誕生日とか祝って貰えなかったでしょう。で、ちょうど今日お誕生日だろう」

「あーそういえば。ほんと数年単位で祝って貰ってなかったからすっかり忘れてた」
「あ、たっくんお誕生日だったんだ。おめでとー」
「…おめでとう」
「おめでとうございまーす」
「おめでとう」

「うん嬉しい。皆ありがとー」

「そういう訳で、私からもささやかだがお誕生日祝いを贈らせてもらうから、楽しみにしていなさい」
「わー、本当にありがとうございます」

「じゃあ、またね」

そう年神様は優雅に何処かに去っていった。

「うん、今日はもう夕方だからアレだけど、今度職場で皆でお誕生日祝いやろうよ!」
「はい!やりましょやりましょー」

「皆ありがとねー」


そう言って楽しく職場付近で皆と別れ、帰宅した翌朝。

「あ、たっくん。良くお買い物するケーキ屋さんから、1日遅れだけどって誕生日ケーキが届いたわよ」
「えー、嬉しいな。あ、そう言えば昔会員証作るとき誕生日書いたかも」

とかなんとか喜んでると、次々にチャイムが鳴り響いた。

「あら、昔馴染みの電気屋さん。え、たっくんのお誕生日数年忘れてたし大変だったから今更だけどお見舞いにって新型ドラム洗濯機下さるの?本当にありがとうございます」

「え、たっくんが良く行くゲーム屋さん。誕生日のクーポン大当たりしたからPS5あげる?」

「あらあら近所の行きつけのスーパーの店長さん。たっくん良く買い物してくれるからお誕生日祝いに食品色々上げる?」

「あら、ずいぶんご無沙汰だった親戚の皆さま。たっくんのお誕生日祝いずいぶん忘れててごめん、数年分結構な額のお小遣い下さる?助かりますわー」


「…と、年神様ありがとう。ささやかどころじゃないです」
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