たっくんとゆうちゃん

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第四章

カサブランカ

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俺が高校に上がって、夏の盛りになった頃。

「あー、今回もまた結構な大型アジト見つけたから皆で行って来て。今度も海外だよー」

「わー、大変だろうけどまた海外出張嬉しいなー」


そんな訳で、丁度夏休みになったので俺達は喜んでその国へと飛んだ。

「えーっと、今度はイングランドの某所のお城だね」
「わー、イングランドも良いね」

「…チョコレートや紅茶が飲みたいな」
「俺、サッカー観戦したいなー」
「オレは街並みが見たい」


そうして、俺達はタクシーや馬車でその地へやって来た。

「いやー、馬車楽しかった」
「うん、馬良いよね」

「で、このお城だね。まあイングランドらしく危険な錬金術を研究して色々やってるみたいだね」

「うっわー。また相当な犠牲者いるんだろうな。可哀想に」
「…周辺からすでに嫌な霊気が漂っているな」

「よーし、皆気を付けて行こう!」

皆はいつもの如く、それぞれの得意武器や術でいかにもなお城に乗り込んだ。

案の定怪しげな錬金術師やら、SAN値がヤバそうな実験体が無数に襲い掛かって来たが、大して苦戦や発狂もせず片づけて行った。


俺達は軽快にお城の最上階まで辿り着いた。

「ふーん。お兄ちゃん達結構やるじゃん」

「へえ、君がここのボスなんだ」

その子は可愛いドレスを着た、真っ赤な長い髪を縛った幼い女の子だった。

「うん、私イザベラ。こう見えて結構長生きなんだよ。19世紀くらいから生きてる」
「へー、そういう子なんだ」
「そう、錬金術で造られてね。賢いし色々使えるよ。まあ私も相当アレな子だから、色々危ない実験するの大好きだし」
「うわー。造られたのは気の毒だけど、そういう事しちゃダメでしょ」

「うん、僕も同じだけど、悪い事しちゃ駄目だよ」
「君もそういう子なんだね。でもせっかく持って生まれた力、好き放題しなきゃ損じゃん」

「…そう言った使い方は感心しない」
「そうだねー。分別持たなきゃダメだよ」
「…そうだな」


「まあ当然組織の子達な訳だし、スタンスは違うよねー。じゃあま、私の実験体ちゃん達に殺されてよ」

そう彼女は言い放ち、相当えげつない改造をされた少年少女達をけしかけて来た。

「うっわー。本当酷いなこの子」
「…うん、この子達、可哀想だけどもう死んでるね」
「…早く楽にしてやろう」
「…うん、女の子でも許せないね」
「…ああ、制裁しよう」


俺達は可哀想な子達を出来る限り苦しまないように仕留めて行き、彼女を追い詰めた。

「…う、君達ウザいな。私の事いじめないでよ」
「悪いけど君みたいな最低な子は、思いっきりいじめるよ」
「うん、あの子達の分もお仕置きするよ」

その時、空間が歪み、見知った奴が現れた。


「…あ、黒坂。良かった。助けに来てくれたんだね」

「…うわ、よりにもよってこいつかよ」
「…さほどダメージは受けてないけど、ちょっと連戦はきついかも」

「ああ、本部から辞令があってね。すぐに駆け付けたよ」
「わあい、黒坂優しいし大好き。過去がアレだから可哀想な子達に優しいしね」

「…ふうん、こいつも色々あったんだ」


そう無邪気に駆け寄るイザベラに、容赦なく黒坂は大きいナイフを突き立てた。

「…え」

「悪いが、能無しは即刻処分せよとの事でね。君性格に相当問題あるし、以前から審議されててね」
「…え、やだ。黒坂、私の事世界一可愛いって言ってくれたじゃん」

「それは社交辞令だよ。君、賢いのにバカなんだね」
「…そんな、ひどいよ。黒坂、私と似たもの同士だから大好きだったのに」

「君に同類視されたくは無いね。僕は僕だ。で、君の体は例によって有効活用させてもらうから」
「や、やだよ。死にたくないし。ちゃんと綺麗なお墓に入れてよ」

「うーん、まあ残骸程度なら入れてやれるかもね。本体は瓶なりなんなりに詰められると思うがね」
「…いやだ、いやだよ。何の為に私生まれて来たの」

「さあ、さっさと帰るよ。君しぶといから、本部でじっくり息の根を止めてあげるからね」
「…やだ、誰か、たすけて」

そう、二人は消えて行った。


「…あの子、許せないけど可哀想だね」
「…うん、僕も一歩間違えば同じになってたかもだし」
「…そうだな」
「…なんか、最後にああいうの見せられちゃうと複雑だな」
「…ああ」

俺達は、可哀想な犠牲者達の霊を清めながら、ゆっくりと城を後にした。


御堂さんに仕事が無事完了した件と顛末を伝え、俺達は高級ホテルへ戻った。

「…もう好きに遊んで良いって言われたけど、何か楽しめなさそうだな」
「…うん、あんなの見せられちゃそうだよね」
「…おそらく、皆同じだ」
「…サッカー見たかったんだけどな」
「…オレも、あまり散策する気にはなれないな」

「まあ、せっかくの海外だしさ。とりあえず何か美味しい物でも食べて考えようよ」
「…うん、そうだね」
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