たっくんとゆうちゃん

kromin

文字の大きさ
上 下
52 / 67
第四章

御堂さんの昔の話

しおりを挟む
俺は相当問題のある両親の元で育ち、ある日完全に問題のありすぎる目に遭い、流石に世間に発覚し親たちはぶち込まれ、施設で暮らす事になった。

それからしばらく施設で暮らした後、素養と上がった素質を見込まれ組織にスカウトされ、そこで働く事になった。
問題のありすぎる家庭育ちだったので手に職もあるはずが無く、俺は二つ返事で承諾した。


確かにその仕事は俺にとって天職だったようで、大変ながらも充実した毎日を過ごしていた。

仕事を初めて間もなく指導役に付いてくれた先輩は、基本浴衣姿の黒髪の綺麗な俺より少し年上の明るい女性だった。

「御堂くん、確かに筋が良いよね。ランクも順調に上がって来てるよ」
「ありがとうございます。〇〇先輩の指導のお陰ですよ」

「ありがとね。私もまあ、君ほどじゃないけど昔ちょっとした事があったからね。まあ今となってはどうでも良いけどね。お仕事楽しいし」
「ええ、俺も最近そう思えるようになって来ました」

「うん、それは良かったよ。あー、まあまだ当分先だろうけどさ、君の両親出てきたら一緒にお仕置きしに行こっか。この組織かなり裏にも顔が効くから、そういうの認められれば平気だよ」
「いいですねー。ぜひご一緒したいです」
「ふふ、楽しみだね!」


そんな風に、もう過去はだいぶどうでも良くなり、楽しい日々を送っていた。

「おし、今日もお仕事問題無く終了っと」
「ああ、御堂、お疲れ」

「あー、黒坂。そっちもお疲れ」
「うん、多少手傷は負ったけどね。まあすぐ治せるしどうってことは無いよ」

「黒坂も、俺とタイプは違えどクソ親から相当な目に遭ってたからね」
「ああ、まあ典型的な悪趣味な両親だったね。君みたいに落とされたり潰されたりはしなかったが」


「まー、しんどい事思い出させちゃうけど。可愛がってた子猫ぶっ殺してシチューにして喰わされたりだとか、死なない程度にえげつない薬剤飲まされたりとか、まあ悪趣味な物使われていたぶられたりとかそっちも相当だったよね」
「まあ、流石にペット喰わされた時は堪忍袋の緒が切れて、ぶち殺してやったがね」

「まあ当然やな」
「当然捕まりはしたが、情状酌量が認められたのと、組織が裏から手を回してくれて、ほぼお咎めなしで済んで良かったよ」
「うん、良かった良かった。お陰で素質も相当上がったしね」
「当然嬉しくは無いがね。まあ、この世界に拾われて良かったよ」

「うん、俺もこの世界に入れて良かった」

そう、傷の舐め合いをしながら楽しく過ごしていたが、それからしばらくして。


「…え、黒坂急に辞めたって、何で?」
「うん、理由を聞いても一身上の都合としか答えてくれなかったって」
「…あいつ、この仕事凄く楽しそうにやってたのに」
「だよね。私も気になって連絡取ったんだけど、もうブロックされちゃったのか一切返事無くて」

「…あー、俺も完全ブロックされてる」
「まあ彼も人間だし、まだ若いもんね。色々あるだろうね」
「…ええ、そうですね」
「さ、まあ心配だろうけどさ。気を取り直して頑張ろ!」


それから、また少しした後。

「うん、御堂くんもう相当手練れになって来たから、今回は結構難しいお仕事だよ。頑張ろうね」
「ええ、良い霊刀も貰えましたし、絶対いけますよ」

「で、今回のお相手は例の集団ね。まあ今までも何度か小競り合い程度はあったけど、今回はアジト見つけたから乗り込むよ」
「ああ、あいつらですね。良い腕試しですわ」

「うん、一応組織からも数名バックアップ付けて貰ったし、たぶん平気だと思うけどね」
「ええ、頑張ります。先輩もお気を付けて」
「大丈夫だよ。まあ浴衣破れちゃうかもだけどね。さ、行こ!」

そうして、俺達はその結構大きいアジトに乗り込んだ。

アジトなだけあって、相当な数の構成員が居たが、俺は次々に切り伏せ、先輩も大型ナイフで切り裂き拳銃で正確に打ち抜き、バックアップの人達も的確にサポートしてくれた。


そうして、アジトの中枢部に乗り込んだが、そこに居たのは。

「…黒坂、何でお前が」

「ああ、御堂。まあ分かるだろうが、やっぱり僕はこのふざけた世界が許せなくてね。例の大怨霊を蘇らせこの国を叩き壊そうと思ってね」

「…いや、それはあかんやろ」
「うん、君の気持ちは良く分かるけど、無関係な人巻き込んじゃダメだよ」

「まあ君たちなら当然そう言うだろうね。分かり合えるとは初めから思ってはいないよ」
「…お前、そういう奴やったんね」

「僕のそういう面を見込まれ先日集団に誘われてね。喜んで加入する事にしたんだ。素質のお陰で初めからかなりの好待遇だったしね」
「…悪いけど、お前もう生かしておけんわ」


「まあ、残念だけど袂を別った以上君達もそうするつもりだよ。では、行こうか」

そう言い放ち、そいつは醜悪な邪神を呼び出した。おそらく耐性が無ければすぐに発狂していただろう。

「…うわ、本当に強そうだね。私も若干気分悪い。御堂くん、気を付けて」
「…はい、俺割と耐性あるはずなんで、頑張ります」

そうして、無数の触手を伸ばす邪神と俺達は激しい戦いを開始した。


しばらく後、数多の触手を切り落としたが、俺はその邪神とはっきり目が合ってしまった。

その時、過去の嫌な思い出がフラッシュバックして来た。

「…うわ。やめろ。斬り落とすな」

「…御堂くん、しっかりして」

彼女が俺を抱きしめようとしたその時。

黒坂のいつの間にか生み出した、槍が先輩を貫いた、

「…あ」

「せ、先輩」

「ふふ、戦闘中に抱きしめようとするなんて、気が抜け過ぎじゃないかい」

「…お前、ぶっ殺す」
「悪いがまだまだ殺されたくはないね。まあ、一人有力な戦力を削げたし、ここらで退散するよ」

「ああ、分かっているとは思うけどその槍、呪われてるからちょっとやそっとじゃ治癒できないよ」

そう言い残して、そいつは消えていった。


「…先輩、しっかりしてください」
「あー、ごめん御堂くん。私たぶんもうダメだね」
「…すみません、俺のせいで」

「んーん。過去のトラウマ抉られちゃ仕方ないよ。私も相当危なかったもん」

「すみません、今すぐにバックアップの人達が救援呼んでくれてるので」
「いいよ。自分の事だから分かるよ。たぶん間に合わない」


「…すみません。本当に俺のせいで。あいつ、絶対いつかぶっ殺すんで」
「…うん、ありがとね。でも黒坂くんもダメだけど可哀想な子だからね。そこは分かってあげて」

「…先輩、優しすぎますよ」
「…御堂くんも優しいじゃん。私、まあそう言うのとはちょっと違うけど、御堂くんの事大好きだったよ」

「…はい、俺もです」
「うん、死んじゃうのは残念だけど、御堂くんに会えて良かったよ」

「…はい、俺も先輩に会えて、本当に良かったです」
「まあ、私の事はそんなに気にしないで、いつもの御堂くんみたいにゆるーく頑張って」

「…はい、難しいけど頑張ってみます」
「うん、それじゃあまたね。さよなら」


それから間もなく救援部隊がやってきたが、やはり彼女を見るなり首を横に振った。

俺はその瞬間から生涯をかけて復讐を誓った。

まあ先輩の遺言通り、可能な限りはゆるく生きるよう心掛けたが。


「…あの、御堂さん」
「んー?どしたのたっくん」
「…すみません、例の黒坂と色々因縁があるって仰ってましたけど、その。言いたくなかったら良いんですが、何があったんでしょうか」

「あー、ごめんね。それはだいぶヘビーな話やから言えへんわ」
「…そうなんですか。辛い事聞いちゃってすみません」

「いいよいいよ。たっくんだって相当なものやったし。まあ、いつか言える時になったら話すから」
「はい、ありがとうございます」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!? ※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。 いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。 しかしまだ問題が残っていた。 その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。 果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか? また、恋の行方は如何に。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

学園の支配者

白鳩 唯斗
BL
主人公の性格に難ありです。

処理中です...