たっくんとゆうちゃん

kromin

文字の大きさ
上 下
30 / 71
第三章

かんばせの過去

しおりを挟む
「朔耶。分かってると思うけど、母さん2週間くらい帰らないからよろしくね」
「…ああ、分かってる」

そいつは今日も愛人と思う存分遊ぶために出て行った。

暴力こそ振るわないが、表向きは善人ぶって悪辣な事をするあいつが昔から大嫌いだった。
父も父で、隠しているつもりだろうが見え見えな愛人が何人かいた。
昔っから典型的な仮面夫婦だった。

そんな奴らがつけた、芥川朔耶という名前が大嫌いだったが、おかしな名前でも無いので改名出来ないのが本当に悔しかった。

けして不細工ではなく、むしろ綺麗な方の顔だったが、悪辣なあの女にそっくりな自分の顔も大嫌いだった。
整形したかったが、そんな金も無いしバイトの宛ても無く。親に頼んだところで必要ないでしょと断られるだろう。

そうしてこの大嫌いな名と顔を付け続けたまま、苦々しく生きていくのだろうと思うと本当に苦痛だった。


いっそ顔をぐちゃぐちゃにし、名も何もかも捨てて生まれ変わりたいと思ったが、そんな事出来る訳もない。


そんなある日、あの糞野郎に捕まり、本当にぐちゃぐちゃにされた。


その時。願いは叶ったが、やっぱりこんなぐちゃぐちゃは嫌だなあ、とぼんやり思った。

そのうち、何もかも分からなくなった。



「おーい、かんばせー」
「…ん」

「お前が居眠りなんて、珍しいね」
「…暖かくて、少し微睡んでしまった」

「まあ今日暖かいもんね。ここ居心地良いし。何か夢見てたの?」

「…よく覚えていないが、昔の夢を見た気がする」
「…そっか。早く思い出せると良いね」

「…おそらく、あまり思い出したくない気がする」


「それに、オレは今の名と顔が気に入っている。思い出したとしても一生このままでいると思う」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...