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第三章
かんばせの過去
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「朔耶。分かってると思うけど、母さん2週間くらい帰らないからよろしくね」
「…ああ、分かってる」
そいつは今日も愛人と思う存分遊ぶために出て行った。
暴力こそ振るわないが、表向きは善人ぶって悪辣な事をするあいつが昔から大嫌いだった。
父も父で、隠しているつもりだろうが見え見えな愛人が何人かいた。
昔っから典型的な仮面夫婦だった。
そんな奴らがつけた、芥川朔耶という名前が大嫌いだったが、おかしな名前でも無いので改名出来ないのが本当に悔しかった。
けして不細工ではなく、むしろ綺麗な方の顔だったが、悪辣なあの女にそっくりな自分の顔も大嫌いだった。
整形したかったが、そんな金も無いしバイトの宛ても無く。親に頼んだところで必要ないでしょと断られるだろう。
そうしてこの大嫌いな名と顔を付け続けたまま、苦々しく生きていくのだろうと思うと本当に苦痛だった。
いっそ顔をぐちゃぐちゃにし、名も何もかも捨てて生まれ変わりたいと思ったが、そんな事出来る訳もない。
そんなある日、あの糞野郎に捕まり、本当にぐちゃぐちゃにされた。
その時。願いは叶ったが、やっぱりこんなぐちゃぐちゃは嫌だなあ、とぼんやり思った。
そのうち、何もかも分からなくなった。
「おーい、かんばせー」
「…ん」
「お前が居眠りなんて、珍しいね」
「…暖かくて、少し微睡んでしまった」
「まあ今日暖かいもんね。ここ居心地良いし。何か夢見てたの?」
「…よく覚えていないが、昔の夢を見た気がする」
「…そっか。早く思い出せると良いね」
「…おそらく、あまり思い出したくない気がする」
「それに、オレは今の名と顔が気に入っている。思い出したとしても一生このままでいると思う」
「…ああ、分かってる」
そいつは今日も愛人と思う存分遊ぶために出て行った。
暴力こそ振るわないが、表向きは善人ぶって悪辣な事をするあいつが昔から大嫌いだった。
父も父で、隠しているつもりだろうが見え見えな愛人が何人かいた。
昔っから典型的な仮面夫婦だった。
そんな奴らがつけた、芥川朔耶という名前が大嫌いだったが、おかしな名前でも無いので改名出来ないのが本当に悔しかった。
けして不細工ではなく、むしろ綺麗な方の顔だったが、悪辣なあの女にそっくりな自分の顔も大嫌いだった。
整形したかったが、そんな金も無いしバイトの宛ても無く。親に頼んだところで必要ないでしょと断られるだろう。
そうしてこの大嫌いな名と顔を付け続けたまま、苦々しく生きていくのだろうと思うと本当に苦痛だった。
いっそ顔をぐちゃぐちゃにし、名も何もかも捨てて生まれ変わりたいと思ったが、そんな事出来る訳もない。
そんなある日、あの糞野郎に捕まり、本当にぐちゃぐちゃにされた。
その時。願いは叶ったが、やっぱりこんなぐちゃぐちゃは嫌だなあ、とぼんやり思った。
そのうち、何もかも分からなくなった。
「おーい、かんばせー」
「…ん」
「お前が居眠りなんて、珍しいね」
「…暖かくて、少し微睡んでしまった」
「まあ今日暖かいもんね。ここ居心地良いし。何か夢見てたの?」
「…よく覚えていないが、昔の夢を見た気がする」
「…そっか。早く思い出せると良いね」
「…おそらく、あまり思い出したくない気がする」
「それに、オレは今の名と顔が気に入っている。思い出したとしても一生このままでいると思う」
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