たっくんとゆうちゃん

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第二章

たっくんの残念な親

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「達磨ー。…あっごめんたっくん。ちょっとお母さん今日もパート長引きそうだから、悪いけどご飯作って貰っていい?」
「うん、良いよ。俺料理好きだし」
「ありがとねー。ごめんねお母さん、またドジしまくって今度もクビになりそうなんだけど」
「うん、もう知ってるし別に良いよ」
「ほんとごめんね。なるべくお仕事続けられるように頑張るからね」
「うんまあ、俺最近お仕事で結構稼げてるし無理しないで」
「ごめんね。じゃあ行ってくるね」
「行ってらっしゃい」

「さて、何作ろうかな。確かひき肉とナスあったし、それ系にするか」

「あれ、電話だ」

うちはド貧乏ゆえに電話を引いてなかったしスマホも無かったが、仕事始めてからは職場からスマホが支給されていた。
とても嬉しかったので、個人的にもよく遊んでいる。

「はい、俺です。どうしました」
「あーたっくん。急で悪いんやけどお仕事入ってね。今平気そう?」
「あーはい。ちょっとだけ家事頼まれたけどすぐ終わるし、今日土曜なんで平気ですよ」

「ごめんね。じゃあ早速現場教えるね。LINEも送っておくから皆で行ってね。まあ簡単やしすぐ終わるよ」
「はーい。大丈夫ですよ」

俺はささっと美味しい麻婆茄子を作ってご飯を炊き、中華スープも仕込んでおき家を出た。

「えーっと、今回は大きめの民家か」


「二人ともお待たせ」
「こんにちはたっくん。それ程待ってないよ」
「ああ、大丈夫だ」

「で、ここに住み込んでた家政婦さんが、結構若いのに病気で亡くなった後も忠誠心強すぎてずっと奉公しちゃってるのか」
「悪い人じゃないんだけど、仕事邪魔したりお祓いしようとすると怒って攻撃してくるみたい」
「弱める結界を貼っておく」

「じゃあ入ろうか」

「坊や達、わたくしのお仕事の邪魔をしないでくださいまし。怒りますよ」
「うーん、お仕事中申し訳ないんだけど、他の人のご迷惑になっちゃうんですみませんがお引き取りください」
「そうですね。あの世でたっぷりお仕事してください」
「…祝詞を唱える」

そうして、ホウキやハタキで引っぱたいてくる彼女の攻撃を難なくかわし、俺はお札を貼り付けた。

「ああ、お掃除の途中なのに。奥様ご主人様、申し訳ありません」
「ご主人様達も、ちゃんと理解してますよ」
「あっちでたくさんお掃除してくださいね」
「安らかに」

「じゃあ家の人に終わったの伝えて、帰ろうか!」
「うん、本当速攻終わったしそうしよ」
「ああ、帰ろう」

「あ、お礼にお昼ご飯用意してくれるってさ。頂いてこ」
「おー、良いね。ちょうどお腹空いてきたとこだし」
「ありがたいな」

「わー、色んな種類のおにぎりとお味噌汁だ。美味しそうだね」
「うん、ぬか漬けも色々あって美味しそうだね」
「ズッキーニが美味そうだ」


「あーお腹いっぱい、美味しかった!」
「お味噌汁も美味しかったね」
「赤味噌が良かった」

「じゃあ僕達これで。ありがとうございましたー」
「お邪魔しましたー」
「さようなら」


「ただいまー。ごめんやっぱり今日もレジ打ちミスって超怒られた。ヤバそう」
「あーうん人間適正あるしもうしょうがないよ」
「ほんとういつもいつもごめんね達磨、じゃないほんとごめん。麻婆茄子美味しそうね」
「うん、自信あるよ。たくさん食べてね」
「ありがとね。頂きまーす」


また別の日の休日。

「達磨くん。…あ、ごめんたっくん。お父さんちょっと今日飲み会参加しなきゃいけなくてさ。悪いけどお掃除とかやってもらってもいい?あとお母さんもパート忙しそうで、大丈夫ならご飯もごめん」
「うん、どっちもいいよ今日暇だし早朝だし。気にしないで」
「ごめんねたつ、じゃないたっくん。まあお父さん今回のとこもやらかしまくって危なそうなんだけど」
「うん、もう慣れてるし気にしないで。あーほらこのパンとお茶持って行って」
「いつもありがとうね。じゃあ行って来まーす」
「あーほらお父さんネクタイ着け忘れてる」


そんな訳で俺はささっと掃除を済ませ、料理も適当に仕込んだ頃。

「あ、また電話鳴ってる。はーい」

「あーたっくんいつも休日にごめんね。ちょっとまた急に案件入ってね」
「はい、大丈夫ですよ今やる事全部終わったんで。今度はどんな所です?」
「うん、まあ所謂超ブラック企業でね。使い潰されて自殺しちゃった社員さんが離れられなくて今も働き続けてるの」
「あー、それは可哀想に」
「うん、まあ思いは強いけど今回もさほど強くは無いから、悪いけど行って来て」
「はーい、了解です」


そんな訳で。

「お待たせー」
「こんにちはたっくん」
「どうも」

「じゃあこの会社の25階だってさ、行こ」
「立派なビルだね」
「表向きは有名企業だからな」


「あああ上司先輩すみません。反省文書きます。100回復唱します。私は無能です。私は無能です。私は無能です」

「すみません20時間働けます。サビ残余裕です。未来永劫お勤めします」

「うわあお気の毒に。早く解放してあげよう」
「そうだね、お仕事辞めさせてあげよう」
「終業しよう」

そうして彼のぶん投げてくるPCやら机やら事務用具やらを、オフィス内を駆け回って俺達はかわした。
そうして俺は彼の脳天にやさしくチョップした。

「ああ、私、辞めてもいいんでしょうか」

「うん、こんなとこ速攻辞めなよ」
「向こうではちゃんとした所に就職できると良いね」
「向こうにもハロワはあるだろうし大丈夫だろう」

「よし成仏したね。お清めしとこうね」
「こんな所早く潰れればいいのにね」
「労基に通報しておく」


そうして俺達は問題なくブラック企業を後にした。コーヒー出されたけどお断りして皆でスタバに行った。


「ただいまー。た、じゃないたっくん。お掃除とご飯ありがとうね。このカレーお野菜色々入ってて美味しそうだね」
「うん、この前食べたズッキーニが美味しかったから入れてみた」
「…それでさごめん。お父さん今日も数字2ケタ間違えちゃって相当怒られてさ、次の更新危なそう」
「あーうんいつもの事だしさ、気にしないで次探して。まあ転職歴多すぎるのも危ないんでしばらく休んでもいいよ。少しならたぶん平気だし」
「本当、どうしようもない両親でごめんね」
「いいよ。まあ確かにかなり残念だけどお父さん達悪い人じゃないし」
「ありがとね、大好きだよたっくん。じゃあカレー頂くね」
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