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あの子と出会って間もない頃の事

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(あー、来たねお母さん。僕見えないけど分かるよ)
(…うん、君本当鋭いもんね)


(うん、めちゃくちゃアレな目に遭って素質上がってるし、五感ほぼ全部ダメだから凄く第六感が鋭くなったんだよね)
(…うん、そうだよね)


(一応触覚はかろうじて残ってるけどさ。まあ全身常にかなり痛いから、やっぱほぼ分からないんだよね)
(…うん、ごめん君、絶対そう言われたくないだろうけどさ。凄く可哀想だよね)

(うんまあしょうがないよ。僕間違いなく、限りなく可哀想だしさ)
(…うん)

(でもほら僕って相当な中二だから、このほぼほぼ何も出来なくてほぼ全部分からないアレな体、痛々しくてかっこよくて大好きなんだよね)
(…そう思えてるなら、良かった)

(それにさー、お母さんだって僕程じゃないにせよ、超可哀想じゃん。もうアレ以外何一つ出来ないし、300年も年がら年中アレされまくって生きてたわけだし)
(…私はアレされるの大好きな変態だから、普通に幸せだったし大丈夫だよ)


(うんだからさ。僕もお母さんとはタイプは違えど超変態だし、この体大好きだから気にしないで。まあ気にするなって方が無理だろうけどさ。まあ少しずつでも)
(…うん、頑張ってみるね)


(あーごめん。お腹空いてきた。流動食食べさせて)
(…うん、良いよ。…君口真一文字に耳近くまで裂かれて、笑顔になるみたいに固く縫い閉じられてるから、ご飯喉からの流動食で可哀想だよね)


(んー別に良いよ。ほら僕超鋭いし、なんとなく美味しく感じるからさ)
(…そっか、じゃあ流すね)

(あー、やっぱ美味しい気がする。お母さんありがとね)
(…うん、気にしないで)


(…君さ、口縫われてるだけじゃなく、歯も舌も抜かれてるから本当可哀想だよね)
(うんまあでもテレパシーできるし、ご飯食べられるし別に良いよ)

(…体半分以上無いから、人工肛門と尿道だしさ)
(んー、別に手間かからないし、まあお世話の人には悪いけど取り換え楽だし良いよ。汚さなくて良いしさ)


(…残った部分も傷だらけで、女の子の部分全部無くなっちゃってるし)
(んー別に僕そういうのに興味なかったし良いよ)


(…顔もものすごく大きい傷あってさ、もう表情全く分からないし、鼻も穴しか残って無いし)
(うんまあでも僕超中二だし、痛すぎるこの顔大好きだし良いよ)


(…もう髪もほとんど無いし、かろうじて残った部分片耳だけだし)
(まあ、片方ピアス出来るしいいよ)


(…ずっと車輪の付いた樽の中にいるから、押してもらわないと動けないしさ)
(まあ、押してもらう団員さんには悪いけど、楽だしいいよ)


(…本当に、本当に接続されたフック動かすくらいしか何も出来なくて、可哀想だよね)
(まあ、超素質上がってるし、自在に動かせるし便利だし気に入ってるよ。実際僕かなり強いし)


(…うん、本当強いし、役立ってるよ。ありがとね)
(どういたしましてー。僕もお母さんと一緒に戦うの好きだし)


(あー、だからさ。まあ相当難しいのは分かるけど。そんなに僕見てしんどそうにしないで、もうちょっとフランクに接してよ)
(…うん、かなり難しいけど、頑張ってみる)


(あーごめんかなり全身痛くなって来た。お母さんごめん、痛み止めのアンプル2本くらい追加してー)
(…うん、すぐ刺すね。…痛み止めのアンプル常に刺していないと辛いから、可哀想だよね)

(まあでも僕超中二な訳で、痛みにうずくこの体めっちゃ好きだし大丈夫だよ)
(…そっか)


(まあそんな訳でさ。僕超絶中二だから、アレ過ぎる体なりに人生謳歌してるしもう全然平気だよ)
(…うん、平気で良かった)

(お母さんもさ、アレ過ぎるアレしかできない体で人生謳歌してるじゃん)
(…うん、謳歌してるね)


(だからさ、どんなアレ過ぎる体でもその人が気に入れば人生謳歌出来るわけだから、どうにでもなるよ!)
(…うん、そうだよね)


(あー痛み止め効いて眠くなって来た。ごめん寝るね。お母さんお休みー)
(…うん、お休み)


「…絶対、戦争早く終わらせなきゃ」
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