はーとふるクインテット

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後日談 アレな大団円

てうてうと咲夜の後日談

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「…ねえ、隊長」
「…うん、なんだい千里?」

「…ふふ。隊長。貴方はやっぱり、僕の自慢の隊長だったよ。それだけ」
「…うん、ありがとうね」

「…でもあの人、隊長の事だからちゃんと加減して狂わせたんだろうけど。その後人格がまた戻ったりしないのかな?それは僕の予知でも分からないから少し心配で」
「ああ、それなら大丈夫だよ。加減が難しいのと相手の尊厳がアレだから僕も滅多にやらないけれど、彼にはサイコダイブの応用で、僕の精神体の分身を常に巣くわせておいた・・・・・・・・・・・・・・・・・・から」

「…ふうん、そうなんだ」
「うん、だからもし、また彼の邪悪な半面が牙を剥きそうになったらね」




「…咲夜坊ちゃま、お体の具合はいかがですか。ドクターの話では包帯はもう直に外れるとの事でしたが」
「うん、調子はいいよ。眩暈や吐き気も無い。気分も上々だ」
「左様でございますか。…その、ドクターも申しておりましたが。銃撃事件から随分穏やかになられたご様子ですな」
「そうだね、僕もまるで生まれ変わったような良い気分だよ。…今まで相当な事をしてしまったけれど、僕はこれから罪滅ぼしがしたいんだ。お父様は、僕が公務に戻るのをお許し下さるだろうか」

「…ええ、頭部を銃撃された・・・・・・・・ので、言い方がアレで失礼ですが精神鑑定やカウンセリングもこれから必要になると思われますが。経過次第ではご当主様も許してくださるでしょう」
「…うん、それなら良かった。…僕は、本当にこれから生まれ変わりたいから」

「…その言葉、私は信じておりますよ。では、失礼いたします」
「うん、ありがとうねじいや。下がってゆっくりしていて」


「…ふう」

(…ねえ、咲夜。いや、僕の半身・・・・。君はその程度で大人しくなる人間じゃないだろう?)

「…え、誰だい?」

不意に、僕の背後に僕と同じ顔をした、だが明らかに邪悪な誰かが立った気がした。

(誰とは失礼だね、今までずっと一緒だったじゃないか。僕は君の無慈悲の側面さ)

「…ああ、君がそうなのかい」

(そうさ。ちょっと自分を死なない程度に撃ってそれで禊が済んだなんて、都合の良すぎる考えじゃないのかい。黒葛原咲夜、君はその程度で終わる人間じゃないだろう。さあ、良い子のふりなんてやめて、また世界を混沌に陥れよう)


「こーら、めっ、だよ」
(え、ちょ、何??)

その時、さらに背後に何者かが現れ僕の半身をチョップで小突いた。

「うん、僕は大邑佐紀の精神体の一部。ごく一部分だけど彼は自身の精神を少しだけ切り離して、君の深層心理に巣くわせたんだ。今みたいにまた君の半身が暴れた時に、こうして抑えるようにね」

(ちょ、待って、僕をまた解放して、もがもが)

「…ふふ、ごめんね。まあ深層心理内で僕が寂しくないよう相手してあげるから。悪いけどこれからはもう出て来ちゃ駄目だよ」

「…大邑佐紀。君は僕が思ってた以上に、したたかな人間だったみたいだね」
「…ふふ、伊達にあの大戦をくぐり抜けていないよ。そういう訳で、まあこれからもよろしくね」

「…あはは、よろしく」

そうして彼は僕の半身とともに消えて行った。


「…坊ちゃま、失礼します。あの、今何か物音のようなものが聞こえたようですが大丈夫ですか」
「ああ、じいやごめんね。何でもないよ」

「左様でございますか、それならば良かったのですが。…ああ、貴方様の銃撃事件を聞いて金目と振子も心配しておりました。今はとても落ち着いてらっしゃると聞いて、諸国漫遊の旅から近いうち戻ってお見舞いに来ると二人とも言っておりましたよ」
「…ああ、そうなんだ。彼等にもたくさん謝りたい事があるし、早く来てくれると嬉しいね」




「…とまあ、そんな感じにね。だからもう大丈夫だよ」
「へえ、そうなんだ。すごいね隊長」

「まあ、負担はほぼ無いとはいえ自身の分身を常に巣くわせるから、ほんとうに今まででもほとんど・・・・やった事は無いけれどね。彼がこれで大人しくなるのなら安いものだよ」
「うん、隊長もそれほど負担がないのなら良かったけど」

「おーい千里、隊長ただいまっす。いやあ、前野の奴本当すごい物発明してくれたよなー」
「うん。あの封印術式を応用すれば、僕も船や飛行機内で安全に歌えるようになるって。ある程度力を抑える事はできたけど、遠慮なく全力でそういう所でもライブできるようになるのは嬉しいな」
「おー、まな兄がトラウマ平気なら船上ライブとかも楽しそうだよな」

「ああ、前野くんは本当にすごい物を開発してくれたよね。僕からも改めてお礼を言いに行かないと」
「ええ、僕も行きましょう」

「…うん、まだまだ問題はあるけれど、僕達もきちんと前に進めていて嬉しいね、千里」
「ふふ、そうだね」
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