はーとふるクインテット

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番外編集 アレな世界のいろいろな話

ユニット合同お料理企画

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シロが山奥の神社に封印されしばらく経った頃の事。

「あ、カズサ君達。ちょっとお仕事の話いいかな」
「うん、転校生くんちゃん。どんなお仕事?」
「えっとね、調味料や調理器具を作ってるメーカーさんのPR企画で、その商品を使ってお料理して欲しいんだけど、どうかな?」
「あーうん、全然良いよ。俺はちょっとほら、持病があれだから物心ついてからほぼ包丁とか持った事ないんであんまり役に立てないかもで悪いけどさ」
「…ああ、そっか。配慮足りなくてごめんね。カズサくんがしんどかったら、この企画断ってもいいよ」

「いや、ここ最近はずっと元気だし、野菜とか洗ったり皮むきくらいなら出来ると思うから気にしないで。万が一収録中にしんどくなっちゃったら断ってみーなと一緒に休んでるかもだけどごめんね」
「…カズサ、無理はするな」
「うん、みーないてくれれば絶対平気だよ。たまにみーなの家でご飯仕込む簡単な手伝いくらいはやってるしさ」
「うん、カズサ君病気の事公表してるし、スタッフさん達も分かってくれると思うから本当に無理はしないでね。それで、今回は珍しくクロ君やてうてうの人達とも合同でお料理するからよろしくね」
「へー、珍しいね。うん、わかった」


そんな訳で数日後の放課後、調理室の一画を借りてPR動画の収録は始まった。

「えーっと、今回はタイアップのカレールーと調味料を使用して、ごく一般的なカレーライスを作ってもらうからみんなよろしくね」

「はーい」
「…うん、分かりました。みんな、よろしく」
「うん、よろしくねクロ。てうてうの皆さんも」
「ああ、よろしくね。ふふ、料理を作るなんてほとんど初めてだから楽しみだね」
「…あー、そっか。佐紀君みたいな境遇や身分じゃそうもなっちゃうよね。ごめんね」
「いいよ、気にしないで。転校生くんちゃんのせいでは無いんだから」

「あー、俺は大昔見世物小屋時代はたまに皮むきとか仕込み手伝わされてたが。まあ蛇臭くなったり鱗が入るとアレだからって、あんまり本格的な部分までは手伝った事ねえがな」
「…そうだったね。僕はほとんど歩けないから手伝った事はほぼないけれど」
「ええ、僕も見えなかったので一切そういう事はした事がありませんね。新鮮で楽しいです」

「…あ、あー。…みんな、配慮足りなくてしんどい思いさせちゃって本当ごめんね」
「いや、もう大昔の事だし、やっぱあんたのせいじゃねえし気にすんな」
「うん、転校生くんちゃんは何も悪く無いし、お仕事を持って来ただけだから。そんなに気に病まないで」
「ええ、その通りです。気にしないで下さいね」

「うん、みんなありがとう。…クロ君も、料理とかはほとんど初めてかな?」
「…いや、やっぱり大昔だけど、少しくらいならやった事あるよ」

「え、そうなんだ?意外。軍に入ってからはたぶんやった事ないだろうけど」
「…うん、元々の僕の国の軍にいた頃に時々作ってた。…あの頃の僕の戦い方はゲリラ戦みたいな奇襲戦が多かったせいで、結構長期間ジャングルや森の中で生活する事もあったから。その時に作り方教えられた」
「…あー、なるほどね。クロ君も辛い事思い出させちゃって、ごめんね」
「…いいよ、これも転校生くんちゃんのせいじゃないし。もう大昔の話だから、僕も平気」
「そっか、みんな本当強いね。…ありがとね」
「うん、すごく久しぶりのお料理楽しいし」

「ああ、僕も新鮮で面白いね。お料理番組とかは見た事があるけど、やっぱり自分でやってみると違ったものだね」
「ええ、そうですね。皮むき大変だけど面白いです」
「ふふ、そうだね。あ、ちょっと玉ねぎが目に染みたかも」
「あー、辛かったらゴーグルとかあるから言ってね。休憩してもいいしね」


「みーなはやっぱりお料理慣れてるだけあって上手だよね。愛もDKにしては上手い方だと思うし」
「ありがとね。僕もお母さんの夕飯作りたまに手伝うから。そんなに凝った事は出来ないけどね」
「そっかー。俺も包丁とか安定して持てるようになったら、もっと色々やってみたいのになー」
「…そうだな。いつかはそうなると良いのだが」
「…あ、しんみりさせちゃってごめんねみーな。野菜洗ったり皮むきだけでも楽しいし平気だよ。みーなと会えてからかなりメンタル安定してるし、全然平気だから気にしないで!」
「そうか、なら良かったが」

「…ってさっきから全体的にしんみりした話題大目になっちゃってるけど転校生くんちゃん、これ大丈夫?てうてうの人達は仕方ないけど俺達もごめんね」
「あー、大丈夫だよ。当然撮影スタッフさん達もそういう事情は分かってる人達だから、重めの話題は編集でカットしてくれるから気にしないで」
「そっか、ごめんねー」


そんなこんなで若干心元ない部分もあったが皆全体的に器用なのでつつがなく調理は進み、無事双方のユニットで美味しそうなポークカレーが完成した。

「はい、〇〇食品さんの新作ルーを使用してごらんの通り見事なカレーが出来ました~☆」
「ああ、上手く出来て良かった」
「付け合わせのサラダも作ったし、美味しそうだね」
「うん、どっちのユニットもすごく良い匂いで素敵だよ!」

「ありがとう、転校生くんちゃん。こんな機会でも無ければ料理なんてできなかったろうから、楽しかったよ」
「おう、俺も久しぶりにやったら結構楽しかったな」
「うん、僕もだよ」
「ええ、僕もです」

「…僕も、すごく久しぶりだけど楽しかった。転校生くんちゃん、機会を作ってくれてありがとう」
「いいよー、みんなしんどい事思い出させちゃったかと心配だったけど、楽しんでくれたなら良かったよ」

そうして撮影が終わった後は、みんなで美味しく出来上がったカレーを頂いた。

「うん、やっぱりみーなが玉ねぎしっかり炒めてくれたおかげで美味しいね!愛も仕込みありがとー」
「うん、カズサ君も皮むきや下ごしらえ頑張ってくれてありがとね」
「…うん、僕カレー好きだから、自分で作ったのも美味しくていいね」

「あー、クロ君カレー好きだもんね」
「…あ、そうだ。…転校生くんちゃん、できたらで良いんだけど、このカレー、分けてあげたい人がいるんだ」
「うん、誰かな?」



その数日後、シロが封じられている山深くの神社にて。

「…あー、今日もクソ質素なクソ夕飯なんだろな、マジでクソ。もっと味濃くて派手で美味しい物毎食用意しろよなクソ巫女がよー」

「あ?何だよ今日はカレーか。珍しく多少は気の利いたもん出すじゃねえかよ」

「…え、これクロが作ったやつで、クロがなんとか僕に差し入れして欲しいって頼んだから特別に許可された、感謝して食えって?…うっせえよクソ巫女が生意気によ」

「……クロ」
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