はーとふるクインテット

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番外編集 アレな世界のいろいろな話

あまり使用者のいない流れ星学園喫煙室にて

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「さーてと、清掃とアレな奴がいないかの見回りも一段落したし、ちょっと一服するかね」


そうして俺はいつもの学園の片隅にひっそりとある喫煙ブースに向かうと、珍しく先客が居た。

「おや、元指弾使いのアレ教師さん。あんたも吸う人だったとはね」
「ああ、これはアレ清掃員さん、いつもお疲れ様です。ええ、時々ですが電子煙草を少々嗜んでいまして。昔の仕事人時代の名残ですな」
「ああ、確かに仕事中は緊張するしリラックスは必要だからな。俺はどうにも電子は好きになれないんで、いまだに紙派だがな」
「ははは、そう仰る方も多いですね。しかし貴方程の伝説の傭兵がまさか清掃員として雇用された時は驚きましたな。まあ、清掃員というのは半分くらいは建前で、やっている事は特別強い警備員のようなものですがね」

「ああ、しょっちゅうアレな奴とっ捕まえたりはするものの俺もまさかこんな職で雇用される日が来るとは驚いたね。ははは。そもそも俺は本来この国の人間じゃ無かったしな」

「ええ、そうでしたね。確か国防の為非常に重要なミッションを成功させるのを条件にこの国への亡命と永住を許されたのでしたっけ」


「ああ、元々俺は世界中のならず者が集まる世界最強とも呼ばれる傭兵集団で日夜ドンパチやってたが。こんな俺でも最低限の良識はあるつもりだったが、ある日難民キャンプの女子供老人もまとめて皆殺しにしろと雇い主から司令が出てな。流石にそんな最低な頼みは聞きたくなかったので脱退を願い出たが、俺の力を惜しんだ奴らが聞いちゃくれなくてな」

「それでその傭兵集団の本拠地を跡形も無く爆破した後即座に亡命できそうな国を探したが、俺は傭兵時代世界中でやらかしてたからな。世界中から丁重に受け入れをお断りされた後唯一残ったのがこの島国だったってわけさ。アレな噂は前々から聞いていたしかなり俺も迷ったが、背に腹は代えられないのと数代前の母方にこの国の人間の血が混ざっていると知って、引きつつも亡命を要請したって所だな」

「そうだったのですね。それで身柄の安全と自由を保障されるのを条件に先ほどの重要なミッションを課せられたのでしたね」

「ああ、そうさ。例の子達が戦時中大暴れしたせいでまともな国の連中はもう戦う気すら無いくらい恐れていたが、それでも頭のネジが飛んだ奴ってのはどこにでも一定数居るもんだからな。そういう国が仕立てた完全自立稼働型アレ爆弾搭載巨大兵器を某国の実験プラントに単身潜入して、起動前にぶっ壊せってなかなかの無理難題を吹っ掛けられてな。まあこっちに拒否権はねえからやるしか無かったが」
「小国にも匹敵する広大な面積の某プラントを単身でほぼ制圧されるとは、貴方も伝説と呼ばれるだけの事はありますよね。あの時は見事なお手前でした」

「ははは、ありがとうよ。あの時は最新兵器から段ボールまであらゆる物を駆使してどうにかやり遂げたからな。だが最後の最後でしくじっちまったが、例のあの子の救援のおかげで助けられたな」
「ああ、金目くんも例の作戦の時に急遽参戦したそうでしたね」

「ああ。巨大アレ兵器をどうにか爆破してあとは脱出するだけって時に敵の親玉とドンパチやって負傷しちまってな。プラントもどんどん倒壊して満足に動けなくなって、俺ももうここまでかって時にあの子が壁をぶち破ってジェット噴射で助けに来てくれてな。応急処置をしてすぐに俺を抱えて脱出してくれた。彼には今も感謝しているよ」
「ええ、あの子も単身の戦闘力ではあなたに匹敵する強さを誇りますし、性格も若いのによく出来た良い子ですからね。貴方のようなアレながら立派な人間の助けになれて喜ばしいことでしょう」


「で、そんな訳で金目くんの助けもあってどうにかミッション成功したんで無事俺はこの国に迎え入れられ、しっかりした戸籍とこの学園の清掃員兼用心棒って職も用意してもらって今に至る、って感じだな。まあ今も今でアレな殺人鬼や狂人と毎日のようにやりあってはいるがな。まあおかげ様で退屈はしねえな、ははは」
「ははは、そうですね。ですがまあ貴方ほどの猛者ならばそうそう寝首をかかれる事も無いでしょう。いつも本当にお疲れ様です」


「はは、どうもな。そういやあんたはどういったきっかけでこの学園に来たんだい。まあこんな国のアレな学園だし、色々あるだろうがな」

「ああ、私ですか。まあこの学園や国ではよくある話ですが、以前はそれなりの有名私立中学で教鞭を取りつつ仕事人と二足の草鞋を履いておりまして。ですがある時前の学校でトラブルを起こし解任されてしまった所を、ここの学園長様にお声をかけて頂き教師として着任いたしました」
「へえ、そうだったのかい。まあ先生の事だからきっと理不尽な目に巻き込まれちまったんだろうな」

「ええ、まあそうですね。やはりよくある話なのですが、地位と親が多額の献金をその学校にしているのを鼻にかけ好き放題していた、良家の子息の暴虐に耐えられなくなりまして。しかも同じクラスで貧しい身分ながら自身の努力と親の献身で必死に推薦入学してきた少年を目の敵にし虐めており、ある日あまりに目に余る虐め方をしていて私も思わずそのいじめっ子に手を上げてしまったのです」
「ああ、そんな親の七光りな卑怯者は俺も大嫌いなタイプだな。虐められた子も気の毒に」

「そうして直ちに私は一方的に時代錯誤の暴力教師として悪のレッテルを貼られ、虐められていた子や私を慕ってくれていた教え子たちの弁明も空しくすぐに解雇されました。当時の私は血の気が多かったので、そんな卑怯者がのさばる学校など辞めさせられて上等だと思っていました」
「ははは、先生にも若い時期があったんだな。だが俺もよく分かるよ」

「ありがとうございます。しかし先ほど言ったようにその騒動を聞いた学園長様がこの学園の新任教師としてスカウトして下さり、前職を解雇されてからものの数週間程で再び教職に就く事が出来ました。あまり大きな声では言えませんが学園長様が裏から手を回して下さり、そのいじめっ子と親や私を解任させた理事連中にも仇討ちを許可してくださったのでしっかりとお返しをしてきましたしね、ふふ」

「ははは、まあ悪い事は出来ねえよな。学園長さんも多少アレながらも恩情のある方だもんな」

「ええ、私も本当にあのお方には感謝してもしきれません。…ああ、すっかり話し込んでしまいましたが、そろそろ授業が始まりますので私はこの辺りで。どうもお疲れ様です。では失礼します」
「おう、先生もお疲れさん。話せて楽しかったよ」


「さて、俺も良い時間だし腹も空いて来たし、またあの食堂へ美味い飯でも食いに行くかな。おばちゃんが特別メニューの蛇のから揚げもまた仕込んどいてくれてるだろうしな。いやああそこのから揚げは絶品だぜ。例の英雄の子が見たら若干複雑な気分になるから、配慮して隠しメニューだがな」
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