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番外編集 アレな世界のいろいろな話
クロが連れて行かれた後のスラム街
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例の大戦中の事。
「…ねえ兄ちゃん。あの子もうここ1年くらい見かけないけど、大丈夫かな」
「んー?あーあの子ってあいつか、ドブネズミか」
「…そんなひどい名前で呼ぶの止めてあげなよ。あの子そう呼ばれるとすごく悲しそうだったし」
「んーでもあいつ実際ドブネズミみたいにすばしっこくて小汚かったし。まあ小汚いのは俺たちもそうだけどさ。他に呼ばれてた名前だってゴキブリとかウジ虫とかそんなんばっかじゃん。虫よりかはまだネズミの方がマシだろ」
「…それはそうだけど、でもあんまりだよ」
「ってか毎日生きるので精一杯のこんな生活で他人の事なんていちいち構ってられないっての。そんな下らない事考えてる暇あったらさっさと食い物かっぱらうなり畑泥棒するなりして来いよ」
「…僕そんなに走るの早く無いし、仕方ないとはいえもう盗みとかやりたくないよ」
「あーもう本当役に立たねえダメ弟だなーお前。じゃーそんなに盗みが嫌ならそういう事して金貰ってこいよ。お前顔は結構可愛いしさ」
「…それも悲しいし、気持ち悪くて痛そうだしやだ」
「アレも嫌これも嫌ってじゃあお前どうやって生きてくんだよ。お前クソビビりだから舌噛んだりする勇気もないだろ。こんなクソな世界で生きてくには多少汚い事やったり我慢も必要だろっての」
「…うん。僕達、どうして生きてるんだろうね」
「最底辺な俺達がそんな頭良さそうな事考えてる暇なんてねえっての。あーもうしょうがねえな、俺も腹減ったしまたどっかの店から缶詰や果物かっぱらって来るから。最近戦争激化しててなかなか入荷もしねえけどー」
「…うん、ごめん兄ちゃん」
「あー。そういやお前が言ってたそいつ、ちょうど1年くらい前に兵隊さんにとっ捕まえられて連れてかれたって仲間が言ってた気がするな。軍に入れたなら俺達にしちゃ大出世だし、毎日ちゃんとした物食えるだろうし良かったじゃん」
「…そうなんだ。でも戦争すごく激しくなってるし、兵隊になった人って大概は生きて帰れないって言うよね。それも可哀想だね。…あの子、本当はすごく優しいし」
「でも戦争に出てちゃんと仕事や居場所もらえるなら、こんなゴミ溜めみたいなスラムで野垂れ死ぬよかよっぽどマシだろ。あー、俺も軍に入れたら良いのにな。兵隊さん来ないかな。そういやここ最近兵隊さんも見ないけど」
「……」
「…あれ、何かあっちの方騒がしいな。何だろ。へー、久しぶりに兵隊さんが来てなんかこの辺色々探し回ってるんだ。おー、じゃあ運が良ければご飯くれるかもだし、ひょっとしたらお菓子とか恵んでくれるかも。おーし弟、早く行こうぜ」
「…うん、そうだね」
「…全く、まさか白紙の彼まで敗れて捕らえられるとはね。挙句の果てには記憶を改竄し仲間に仕立て上げるとは。我々が言えた事では無いが、あの国もえげつない事をしてくれる」
「…ええ、相当に強固でアレな洗脳をしていたのに再洗脳するとは。例の部隊もそうですが、あの国の技術は実に恐ろしいですね」
「ああ、あの島国はこの全体的にアレな世界の中でも一際呪われて狂った、アレにもアレ過ぎる国だからな。こんな戦争でも無ければ、正直一生関わりたくないと閣下も思っているだろうさ」
「ええ、間違いなくあの国の者以外世界中そう思っているでしょうね」
「いやはや、白紙の彼もあんな忌み嫌われた恐ろしい国の子として生きなければならないなど気の毒だねえ。まあ洗脳されたとはいえ敵兵になってしまった以上、もう容赦する訳にもいかないが」
「そうですね。最強の戦力が奪われてしまったのでそれに代わる素体を探しにまたここにやって来た訳ですが。例の彼の処置や教育データは十分あるとはいえ、彼程の逸材はそうそういないでしょうね」
「うむ、あれ程にえげつないアレな投薬や強化処置に耐えられる強靭な子もそうはいないだろうね。だがまあ下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言うし、もう目に付いた子供を手当たり次第に連れて行くしか無いだろう。どうせ戸籍も無いような子達だ。いなくなったとて誰も困らないだろう」
「ええ、泥棒や乞食が一掃されて環境も良くなるでしょうし、この地区の支配者から感謝されるかもしれませんね」
「…ねえ兄ちゃん。あの子もうここ1年くらい見かけないけど、大丈夫かな」
「んー?あーあの子ってあいつか、ドブネズミか」
「…そんなひどい名前で呼ぶの止めてあげなよ。あの子そう呼ばれるとすごく悲しそうだったし」
「んーでもあいつ実際ドブネズミみたいにすばしっこくて小汚かったし。まあ小汚いのは俺たちもそうだけどさ。他に呼ばれてた名前だってゴキブリとかウジ虫とかそんなんばっかじゃん。虫よりかはまだネズミの方がマシだろ」
「…それはそうだけど、でもあんまりだよ」
「ってか毎日生きるので精一杯のこんな生活で他人の事なんていちいち構ってられないっての。そんな下らない事考えてる暇あったらさっさと食い物かっぱらうなり畑泥棒するなりして来いよ」
「…僕そんなに走るの早く無いし、仕方ないとはいえもう盗みとかやりたくないよ」
「あーもう本当役に立たねえダメ弟だなーお前。じゃーそんなに盗みが嫌ならそういう事して金貰ってこいよ。お前顔は結構可愛いしさ」
「…それも悲しいし、気持ち悪くて痛そうだしやだ」
「アレも嫌これも嫌ってじゃあお前どうやって生きてくんだよ。お前クソビビりだから舌噛んだりする勇気もないだろ。こんなクソな世界で生きてくには多少汚い事やったり我慢も必要だろっての」
「…うん。僕達、どうして生きてるんだろうね」
「最底辺な俺達がそんな頭良さそうな事考えてる暇なんてねえっての。あーもうしょうがねえな、俺も腹減ったしまたどっかの店から缶詰や果物かっぱらって来るから。最近戦争激化しててなかなか入荷もしねえけどー」
「…うん、ごめん兄ちゃん」
「あー。そういやお前が言ってたそいつ、ちょうど1年くらい前に兵隊さんにとっ捕まえられて連れてかれたって仲間が言ってた気がするな。軍に入れたなら俺達にしちゃ大出世だし、毎日ちゃんとした物食えるだろうし良かったじゃん」
「…そうなんだ。でも戦争すごく激しくなってるし、兵隊になった人って大概は生きて帰れないって言うよね。それも可哀想だね。…あの子、本当はすごく優しいし」
「でも戦争に出てちゃんと仕事や居場所もらえるなら、こんなゴミ溜めみたいなスラムで野垂れ死ぬよかよっぽどマシだろ。あー、俺も軍に入れたら良いのにな。兵隊さん来ないかな。そういやここ最近兵隊さんも見ないけど」
「……」
「…あれ、何かあっちの方騒がしいな。何だろ。へー、久しぶりに兵隊さんが来てなんかこの辺色々探し回ってるんだ。おー、じゃあ運が良ければご飯くれるかもだし、ひょっとしたらお菓子とか恵んでくれるかも。おーし弟、早く行こうぜ」
「…うん、そうだね」
「…全く、まさか白紙の彼まで敗れて捕らえられるとはね。挙句の果てには記憶を改竄し仲間に仕立て上げるとは。我々が言えた事では無いが、あの国もえげつない事をしてくれる」
「…ええ、相当に強固でアレな洗脳をしていたのに再洗脳するとは。例の部隊もそうですが、あの国の技術は実に恐ろしいですね」
「ああ、あの島国はこの全体的にアレな世界の中でも一際呪われて狂った、アレにもアレ過ぎる国だからな。こんな戦争でも無ければ、正直一生関わりたくないと閣下も思っているだろうさ」
「ええ、間違いなくあの国の者以外世界中そう思っているでしょうね」
「いやはや、白紙の彼もあんな忌み嫌われた恐ろしい国の子として生きなければならないなど気の毒だねえ。まあ洗脳されたとはいえ敵兵になってしまった以上、もう容赦する訳にもいかないが」
「そうですね。最強の戦力が奪われてしまったのでそれに代わる素体を探しにまたここにやって来た訳ですが。例の彼の処置や教育データは十分あるとはいえ、彼程の逸材はそうそういないでしょうね」
「うむ、あれ程にえげつないアレな投薬や強化処置に耐えられる強靭な子もそうはいないだろうね。だがまあ下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言うし、もう目に付いた子供を手当たり次第に連れて行くしか無いだろう。どうせ戸籍も無いような子達だ。いなくなったとて誰も困らないだろう」
「ええ、泥棒や乞食が一掃されて環境も良くなるでしょうし、この地区の支配者から感謝されるかもしれませんね」
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