はーとふるクインテット

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第四章 驚天動地のアレ事件

ついに思い出してしまったクロ

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アレな騒動が巻き起こる波乱の夏休みが始まる少し前の事。


「…これじゃ駄目だ。もっと頑張らないと」
「あー、クロ最近睡眠時間削りすぎだよ。戦線激化してるとはいえまだまだ僕達優勢なんだし無理しないでっての。ほらちょっと前に例の筋肉モリモリマッチョマンぶっ倒して、かなり僕達恐れられてるしさ」
「…でも、僕だけ明らかに劣っているから。みんなの足を引っ張れないよ」

「…クロはさ、本当に仲間思いの良いやつだよね。…僕、会った時からそういう所が大好きだよ」
「…うん、ありがとう」

「でさ、恋人の僕からのお願い。今日だけはしっかり休んで、明日に備えて」
「…うん。でも明日、別に出撃の予定無いよ?」

「…あー、ちょっと個人的に大事な用事があってさ。しっかり休んで明日元気になったら、このクソ基地のはじっこにある〇〇号室に来て欲しいんだ。…秘密の話だから、悪いけど他の奴等には絶対内緒にしておいて」
「…秘密の話って?」
「んー、すごく大事で絶対他に知られる訳にいかないから今は言えない。悪いけど明日全部話すからさ。だからお願い。今日はちゃんと休んで」
「…分かった。…でも話すだけなら、少し寝不足でも良いんじゃない?」

「…いやー、かなり体力使うヘビーな話だと思うから。クロとはいえ寝不足だと危ないかもと思って」
「…そうなんだ。…うん、良いよ」
「ありがとね。…あのさクロ。僕、何があってもクロの事大好きで、どんな事したってそれが僕の愛だから。…だからさ、お願い」

「…クロだけは、ずっと僕の事好きでいてね」
「…うん、約束する。僕、シロの事ずっと大好きだよ」

「へへー、ありがと。じゃあ今日はおやすみ。また明日ね」
「うん、おやすみ」


そして、その翌朝。

「…シロ、大事な話は分かるけど、どうしてこんな人気の無い部屋に呼んだの?」
「あー、ちょっとすぐに見つかったらまずいからさ。滅多に人の来ない所にしようと思って」
「…見つかったらまずいって、どういう事?」

「んー、まあその。こういう事」
「…え、それ、何」

「んーまあ、見ての通り斧とか大鉈とかそれ系」

「…それで、何をするの」

「…こういう事。クロ、悪いけどちょっと我慢してね」

「え、い、いたい」


いたい、いたい、やめて。

シロ、どうしてこんなことをするの。

ぼくがだいすきであいしてるからって、どうして。

シロ、ぼくのこと、ほんとうにすきなの。

ねえ、シロ。


ぼくは、なんだったのかな。



「……っ」

「…クロ、大丈夫?かなり顔色悪いよ」

「…ごめん。…ちょっと、大丈夫じゃない」

「…クロ。君、思い出しちゃったの?」

「…うん、思い出した」
「…そっか。しんどいよね」
「…うん」

「…じゃあ、たぶんそっとしておいて欲しいよね。俺達外に出てるから」
「うん、どうせこれから授業だったし。先生達には話しておくから、ゆっくりしてて」
「ああ、先生達も分かってるし、お前なら数日休んでも平気だろうしゆっくり休みな」

「…皆、ごめんね。ありがとう」

「…あー、かなりしんどいだろうし、後で前野呼んでおこうか?あいつカウンセリングとかも出来るし、お前あんまり効かないだろうけど一応そういう薬とかもあるだろうしさ」

「…いや、大丈夫。辛くなったら僕から行くから。気を遣わせちゃってごめんね」
「…そっか、分かった。気にしないで」
「…うん、難しいだろうけどさ、寝れそうならまた寝ときなよ」
「…じゃあ、俺達行くから。無理すんな」

「…うん、ありがとう」


そうして、静かに俺達はクロを残して自室を後にした。

「…まあ近いうちにこの時が来るのは分かってたけど、あいつ本当に可哀想だな」
「…そうだね」
「…あいつがあれ程顔色悪くなるなんて、初めて見たな」

「…俺。久々にあいつの部屋行ってぶっ殺してやりたい」
「…うん、僕も。あの子本気で許せない」
「…ああ、俺も不死活かして壁役くらいしかなれないけど、一緒にぶっ殺しに行きたい」

「…でもさ。それやっちゃったら、たとえ奇跡的に勝てたとしてもやっぱりクロや佐紀さん達悲しむよ」
「…うん、だろうね」
「…本当、あいつ早く地獄に落ちて欲しいな」

「…まあでもさ。クロに振られて完全に孤立して、あいつもかなり転落して来てるし。あいつプライドクソ高いから自主退学は無いかもだけど、最近相当成績や授業態度ヤバいしその内代行も退学にするんじゃないの?」
「そうだね。最近結構授業サボってるらしいしね」
「だな。ステージも散々でかなりファンも離れて来てるしな」
「うん、最近俺達の方がランク上だもんね」

「で、ここ追い出されたらもう大嫌いな神社なり研究所なりに戻るしか無いだろうし、そこでも絶対超塩対応されるだろうし。出来る範囲で十分制裁は下るんじゃ無いのかな」
「そうだね。あの手のタイプの子は殺すよりそうやって生き地獄を味わわせた方がこたえるかもね」
「だなー。もう間違いなく事情知ってる奴等全員から嫌われてるし、クソとは言え相当な身分だから国外逃亡も出来ないだろうしな」

「…まあ、あの子はもう放置でもその内どん底に落ちるだろうしさ。僕達はクロを支える事だけ考えよう」
「…うん、そうだね」
「だな。もう良いだろうし、強制アレ事件知ってる学園中の奴等にも皆この事伝えとこうぜ」
「そうだね。皆協力してくれるよ」



「…ああ、君。ついに思い出したんだね」

「…本当に、可哀想に」

「…私も愛するあいつに最低な事をしてしまったが、こんな愛は許される物では無いよ」

「…だが、今の君には本当に愛してくれる者達がたくさんいる。…辛いだろうが、君ならきっと乗り越えられるはずだ」

「…どうか、今度こそ。本当に幸せになっておくれ」


「……シロ。僕は」
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