はーとふるクインテット

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第四章 驚天動地のアレ事件

鬱憤晴らしをするシロ

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クロが色々な子の家に泊まったりしている頃の事。

「あーもう、今日もマジでクソオブクソ。食堂のクソババア珍しくまともなミートソースパスタ出したと思ったら鬼のようにデスソースかかってるし。僕確かに激辛系好きだけど限度ってもんがあるだろクソが」

「…ってか今までピザ嫌い過ぎて忘れてたけど、パスタもクソ屋敷生活中それなりに出てかなり嫌いなんだった。…クロが結構好きで、一緒に食べるの楽しかったから忘れてたけどさ」

「…あーもうほんとクソ。僕が強制アレしたの知ってる奴は皆指さして笑ってくるし、知らないクソ一般生徒もクソなりに察してるのか引き気味だし。クソ業者も部屋直してはくれたもののかなりの手抜きで修復跡明らかに色違うし。マジで全員不敬罪でぶち込めよなクソ裏政府」

「…僕がメンタルズダボロで頑張ってるっていうのにクソ教師たち情け容赦なく質問浴びせて来るしステージの評価フルボッコだし、最近ファンも引き気味であんまり来てくれないし。超可愛い僕が凹んでるんだぞ、ファンならこういう時こそ応援しろよクソ共が」

「ユニット名変えようかとも思ったけど他に良いの思いつかないしシロじゃ間抜け過ぎるし。かといって代行とか他の奴に決めさせたらもう確実にクソ過ぎる名前にされるだろうし。マジで最近この学園辞めたいんだけど」

「…でも、ここ出てっても他に行くところ無いし。もうクロにも嫌われちゃって全世界どこに行っても僕嫌われ者だし。無理矢理狂わせて僕の事好きにさせたらまたあのクソ神社ぶち込まれるし」

「…僕、もうどうしようも無いじゃん。ほんとクソ」


「あー、あの子今日も相当ブチ切れてるね。まあいい気味だよね鈴くん」
「ケケケー。そうだねー」
「…うん。シロには悪いけど、ちょっと僕嬉しいんだ」

「あークロ君、あんなクソな子に罪悪感なんてこれっぽっちも感じる必要無いって。まあまだ僕達からは言えないけど、もう最低な事君にしてるんだしさ」
「ケケケー。そうだよ、あんな子思いっきり笑っちゃって良いよ」
「…うん」

「まあ、君も相当複雑だろうしどんなにクソとは言え半世紀以上付き合ってた相方と別れたからしんどいだろうけどさ。もう全世界君のやった事は正解だと思うしあの子の事知ってる人は全員あの子大嫌いだし、君は何一つ間違ってないよ」
「うん、クロは良い子だし大丈夫だよー」
「…そうだね」

「あ、ちょっと遠くて電車で30分くらいで悪いけど、良かったら今度僕達の家にも遊びに来なよ。うちもそこまで豪邸って程じゃなくて悪いけどさ」
「うん、スズランのお母さんの料理すごく美味しいよ。食べに来なよー」
「…うん、ありがとう。今度遊びに行くね」

僕は食べ終わった食器を持って、スズラン達と別れた。


「シロ君やっぱり最近散々だねー。着実にユニットの順位下がって来てるし」
「うん、もうちょっとで俺達が抜かせるね。悪いけどやっぱいい気味だな」
「ああ、相当に性格に難ありとはいえ、あの人気ユニットを負かせるのは嬉しいな」
「だねー。僕達も毎日レッスンや活動頑張ってるしね」

「あ、ちょっと悪い事聞いちゃうけどみな君はステージで狂わせの力使ってるの?」
「…いや、俺は平和的な手段とはいえ出来るだけあの力は使いたく無いし、実力で勝負したいので一切使わない」
「あー、そうなんだ。うん、すごく良いと思うよ」
「うん、みーな真面目だもんね。俺みーなのそういう所も好きだよ…あ」

突然、カズサ君の表情が暗くなり、目から光が消えた。

「あれ、カズサ君どうしたの?」
「…あー、ごめん。久しぶりなんだけど、またアレな気分になっちゃって」
「…ああ、そうなんだ。大変だね」
「うん、お薬飲んどく。…最近元気だったから久しぶりなんだけどね。みーな、ごめんね」
「…ああ、気にするな」

「…じゃあ、そっとしておいて欲しいだろうし私達どこか行くね。ゆっくりしてて」
「うん、先生たちには言っておくから。無理そうならレッスンも別の日にしてもらおう。こういう学園だし先生たちも分かってくれるよ」
「…うん、二人ともごめんね。ありがと」

私達はそっと席を立ち、その場を離れた。

「…カズサ君がああなるの、初めて見たな」
「うん、僕も初めて見た時可哀想だった。…体に異常は無いけれど、あれはあれで辛いよね」
「…うん、こういう国だし体がアレなのよりも、ある意味辛いかもね」
「…そうだね。難しいけど、いつか対処法が見つかると良いんだけどね」


転校生くんちゃんと愛が去った後。

「…あー、最近本当順調だったのに、久しぶりだな」
「…そうだな」

「…まあ、でもみーな居てくれれば絶対最悪な事はしないしさ。もう10年以上の付き合いだし大丈夫だよ」
「…そうか、それなら良かった。…ここは人が多いし、どこか別の所に行くか?」

「あーうん、そうだね。…ちょっと遠くて悪いけど、久しぶりにあそこ行っても良い?」
「…ああ、あの神社か。良いぞ」


そうしてカズサに肩を貸し、ゆっくりと歩き数十分かけて裏山の神社へ辿り着いた。

「…あー、やっと着いた。みーな、ずっと肩貸してくれてごめんね」
「ああ、構わない。俺もここは好きだからな」

「…うん、ここ眺め良いし。みーながまともな体になれて間もなくここ来て、ここで一緒にアイドルになるの決めたもんね」
「そうだな、俺達の思い出の地だな」

「…あの時は、このアレな国のアレな町とはいえ、ここまで大変な事に巻き込まれるとは思って無かったけどさ。…でも怖い事も結構あったけど、やっぱこの学園に来て良かったと思うよ」
「ああ、俺もそう思っている。…アレだがたくさんの出会いがあったしな」

「うん。…俺も物心ついてこの国がアレな事に気付いて、それからメンタルがアレになった時はちょっとこの世界を呪った事あったけどさ。そのお陰でみーなと会って仲良くなれたし、ある意味強くなれたし。やっぱり今はこのアレな世界に生まれて来て良かったと思うんだよね」
「…そうだな、俺も自分の境遇を知った時は世界を呪った事もあったが。…やはりそれでお前と会って親しくなれたし、今はそれで良かったと思う」


「うん。やっぱり、このアレな世界も捨てたもんじゃないと思うんだよね。…あー、ちょっと良くなって来たけど今回の結構しつこいな。久しぶりなせいかな」
「…カズサ。前も話したし、お前はそう言った事は嫌いだとは思うが。…俺の狂わせの力なら、どうにか出来るかもしれない」

「…うん、ありがとう。…でもやっぱりそれやっちゃったら俺じゃ無くなっちゃうような気がするし、俺のためとはいえみーなしんどくなっちゃうだろうしさ。みーなこの力嫌いだもんね」
「…そうだな」

「…うん、これは俺の個性だと思うしさ。みーないてくれるだけで楽になれるし大丈夫だよ。何だかんだで上手く付き合えてるし、みーなと一緒にいられるようになってからはもう切ったりもしてないしさ」
「…そうだな。この体になれるまでは、ずっと話す事しか出来ずに済まなかったが」
「うん、それでも十分嬉しかったし良いよ。…あの姿のみーな見てると、やっぱ悲しくなっちゃったけどさ」
「…ああ、そうだろうな」


「…あ、だいぶ楽になってきた。ありがとねみーな」
「ああ、それは良かった」

その時、空からシロが飛んできて乱暴に降り立った。

「…あれ、シロ。今授業中なはずなのにどしたの」
「あー?んだよクソ新鋭うっぜえな。もうクソな気分過ぎて授業どころじゃねえし僕神だし少しくらいサボったっていいだろ」
「…そういう贔屓は可能な限りしないと、教師達も常日頃言っているだろう」
「そうだよー。ただでさえお前最近授業態度最悪でかなり評価下がってるんだしさ」

「うるせぇっての、ほんとお前等クソ失礼だな。そういうお前等だってサボってんじゃねえか」
「あー、俺はほら例の発作で。先生たちもこういう時は仕方無いって言ってくれてるしさ」
「ああ、俺も事情を話してこの時はカズサの付き添いを許可されている」

「あーあーもう可哀想なメンヘラぶりっ子うっぜえな。お前僕達と違って体は何も問題無いんだし遥かに恵まれてんじゃねえかよ」
「…まあ、それは確かにそうだけどさ。でもこれはこれでしんどいし」
「ああ、苦しさは人それぞれだ。…お前とはいえ、その発言は許容できない」

「…ほんっっとお前等ド平民のクソ若造のくせして口が減らねえな。あーもうお前等見てるとクソウザいしどっか別のとこ行くか。もうお前等さっさと死ね」


そう言い捨ててシロはまた乱暴に飛び去って行った。

「…あいつ、本当相変わらずだね。クロにあれだけ嫌われて少しは反省するかと思ったのにさ」
「まあ、もう救いようの無い外道という事だろう。…お前にあれ程無神経な事を言ったのは、俺も許せない」
「…あー、みーな相当ブチ切れ寸前だったよね。みーな滅多な事じゃ怒らないのにね」

「…俺も感情を荒立てるのは好きでは無いが。…あれ程の奴には、腹を立てる事もある」


クソ無礼な若造と別れ、僕はクソムカつきながらあてども無く空を飛んでいた。

「…あーもうほんとクソ過ぎ。こんな気分で学校戻りたくも無いし、教室行ったらクソ教師絶対説教してくるだろうしどうしようかな」

「…何かカフェとか行って美味しいお菓子食べようにも、クソな気分じゃ楽しめないだろうし。授業時間中にお菓子写真インスタとかに上げたらサボってるってバレるしなー。もうマジでクソ」

「…あー、超珍しいけどたまにはクソな奴ぶっ狂わせて鬱憤晴らしでもするか。実際自由に外出できるようになってからたまにアレな奴クロと狂わせて戦ったりしてたし。在学中もそういう狂わせならOKってクソ裏政府から許可されてるし」

「…じゃあ手近なクソな奴いないかな。あー機種変したばっかだからこのスマホ操作まだ慣れねえなクソ」


そうイラつきながらスマホをいじっていた時、眼下から悲鳴が上がった。

「あー?何だあのバールのような物持ったJKぽい奴等。典型的な底辺の半グレ集団か」

いかにも底辺そうな半グレJKっぽい奴等は、やっぱりいかにもな武装したチンピラ風の男10名くらいに囲まれていた。

「な、何だよあんたら。どっか行け」
「この前てめえらに事務所襲撃されたBブロックの住民だよ。あの時はよくもやってくれたな」

「…う、お仕事だし仕方ないだろ」
「それはこっちのセリフだ。てめえぶん殴り過ぎて後遺症残った仲間いんだぞクソが。お前それ以上の目に遭わせてやるよ」
「アレな国とは言え俺達も底辺で、ろくな治療受けられねえからな。身動き取れなくしてクソな風俗店に売り飛ばしてやるよ」

「…や、やめろ。私達底辺だけどそういうのは嫌いなんだよ」
「…うん、底辺でもプライドはあるし。貞操は守りたい」


「…あーマジでクソ。僕クソとはいえこんなの放置したら寝覚めが悪いじゃん」

僕はやっぱりイラつきながら底辺共の前に降り立って、話すのも面倒なので速攻で鱗粉をチンピラ共に振りまいて遠慮なく狂わせまくった。

「ひ、ひっ。何だこれ」
「…な、なんかもう全部どうでも良くなってきた」

「…何だこれ。すごくイラつくけど、何か、すごく悲しい」

男たちはあっという間に一切抵抗しなくなり、その場にくずおれた。

「…ど、どうもありがと」
「…うん、助かった。ありがとね」

「あー、お前等みたいな底辺にお礼言われても嬉しく無いんだけどー。まあ放置するのも寝覚めが悪いし」

「…うん、まあ底辺な自覚は十分あるけど。面と向かって言われるとだいぶ悲しいんだけど」
「…君あれだっけ。あの学園の人気アイドルだっけ」

「あーうん、まあね。お前等の仲間なんてやっぱたかが知れてる底辺だろうけどさ、超尊い僕の活躍しっかり拡散しとけよこの半グレJK共」


そう言って僕はさっさと飛び立って、その場を去って行った。

「…び、びっくりしたあ」
「…うん。あの子例の英雄の一人だよね。戦時中から相当アレだったらしいけど」
「…うん。流石に私達だとはっきりは知らないけど、もう裏の世界中ドン引きするくらいアレな事やらかしたらしいし」

「…あの子が私達みたいな奴助けるなんて、何かあったのかな」
「…まあ、長く生きてればたまにはそういう事もあるんじゃない?…とりあえずお礼も兼ねて、仲間の子達に拡散しとこうよ」
「うん、そうだね」


それから少し後、放課後の職員室にて。

「…ふむ。シロ君、また授業を放棄したので明日来たらきっちりお説教してしばらく廊下に立たせようかと思っていたのですが。…そういう善行を積んだのならば、まあ今回だけは大目に見てあげますか」
「ええ、あの子がそんな弱者を救うなんて明日は雪が降るかもしれませんねえ。今夏ですが」

「まあ、この国アレだから天変地異もわりと起きるし、たまに実際真夏に大雪が降ったりしますがね」
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