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第四章 驚天動地のアレ事件
番外編 ある老婆のおとぎ話
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「ねーおばあちゃん、何かお話してー」
「ええ、良いわよ。何が良いかしら」
「んーじゃあ、よくお話してくれる蝶々の子の話が良いな!」
「ええ、分かったわ」
「…むかしむかし、可哀想な一人の男の子がおりました」
「男の子は、生まれた時から芋虫でした」
「男の子のお父さんとお母さんは芋虫のその子が大嫌いで、まったく愛してくれませんでした」
「…殺されはしませんでしたが、誰からも見られないようずっと隠され男の子は育てられました」
「男の子は、世界を呪っていました」
「その男の子、可哀想だよね」
「ええ、そうね。…まあそれにしても相当にアレなのだけれど」
「うーん、まああれ程アレな事しちゃったくらいだしそうだよね」
「…では続きね。そんなある日、男の子は夢で綺麗な蝶々の男の子に出会い、助けて欲しいと願いました」
「蝶々の男の子は使いをやって、男の子を助け出してくれました」
「そしてその可哀想な子も、少しの間ですが蝶々になれるようになりました」
「男の子は助けてくれた子にとても感謝し、二人は恋人になりました」
「うん、良かったね。…まあその後がアレだけど」
「そうね。…しばらくは幸せに暮らしていましたが、男の子はやはり家族が許せませんでした」
「そうして男の子が偉くなった後、男の子は自分の家を家族もろとも焼き払いました」
「それをとても悲しみ引いた蝶々の子は、もう君とは恋人でいられないと言いました」
「男の子は、再び一人ぼっちになりました」
「まあそんな事しちゃった男の子が悪いけど、その子もやっぱり可哀想だよね」
「ええ、絶対に駄目だけれど気持ちは分からなくも無いからね。…それから少し後、黒い男の子がやって来ました」
「黒い男の子は芋虫ではありませんが、彼もとても可哀想な子で、男の子はその子がすぐに好きになりました」
「そうして男の子は黒い男の子に告白し、二人は恋人となり幸せに暮らすようになりました」
「…うん、でもその後にひどい事になっちゃうんだよね」
「…そうね。全世界が引く程にアレな事にね」
「しばらくは幸せでしたが、男の子は黒い男の子にもっと強くなって欲しいと思い、彼も芋虫にしてしまいました」
「…どうして、恋人なのにそんなにひどい事できるんだろうね」
「…その子は愛しているからそうしたのでしょうけど、最悪な愛し方をしてしまったわね」
「うん、そんなの絶対に愛じゃ無いよね」
「…男の子はそれで蝶々の男の子やお世話してくれている人全員から嫌われとても怒られ、ずっと一人きりにさせようかとも話し合われましたが。彼はとても大事なお仕事をしていたので、少し後に許されました」
「…ひどいね」
「…そうね。どんなに大事なお仕事をしていたとしても、こんな事は許されるべきでは無かったと思うわ」
「…黒い男の子はとても可哀想なので、お世話していた人達は彼の記憶を変えて生まれた時から芋虫だったという事にしました」
「…その子、本当に可哀想だね」
「…ええ、あれ程可哀想な子は私も他に知らないわ。…それからまた少し時間が経ち、男の子達は神様となりました」
「男の子は同じ芋虫となった黒い男の子とずっと一緒で、とても幸せそうでした」
「…離れて暮らしていた蝶々の子とその仲間達は、いつか男の子を殺してやりたいと願っていました」
「…うん、当然そうなるよね。僕もその子許せない」
「…ええ、私も人の死なんて願いたくないけれど。その男の子だけは許せないわ」
「…それから長い時間が経ち、男の子達はずっと蝶々でいられるようになりました」
「男の子はとても幸せそうでしたが、黒い男の子はなぜか悲しそうでした」
「…うん、そうだろうね」
「…それからまた長い長い時間が経ち、男の子達はある程度自由に外に出られるようになりました」
「男の子はとてもとても幸せそうでしたが、黒い男の子はやっぱりどこか悲しそうでした」
「男の子の事を知っている人は皆、黒い男の子が本当に幸せになってくれる事を今も願っています」
「…はい、おしまいよ」
「うん、ありがとうおばあちゃん。僕悲しいけどこのお話好きだな」
「そう、それは良かったわ」
「あのさ、おばあちゃんのお話すごく面白いし、本にしたりすれば?」
「…ええ、私も昔そうしようと思ったのだけど。実はこのお話、元になった人達がいるの」
「え、そうなんだ」
「ええ。私が昔働いていた場所であった事を元にしたお話なのだけど。見る人が見れば誰の事かすぐに分かってしまうから、という事で本には出来なかったの」
「ふーん、そうだったんだ。そういえばおばあちゃん昔偉い博士だったんだっけ」
「そうよ。あの悲しい戦争より少し後の時代だけど、この国でもとても大事な研究をしていた所でずっと働いていたの」
「うん、おばあちゃん凄いもんね。やっぱこういう国だしアレ気味な研究もあるけど」
「まあ、こういう国だしそれは仕方無いわね。罪も無い人を犠牲にしたりは絶対にしなかったけれどね」
「うん、おばあちゃんすごく優しいもんね。…じゃあその黒い男の子も、元になった子がいるんだ」
「…ええ。本当に、本当に可哀想な子だったわ。とても長生きだから、まだ元気なんだけれどね」
「ふーん、そうなんだ。いつかは本当に幸せになれると良いのにね」
「…そうね。きっとこの国中の人皆、そう思っているわ」
「ええ、良いわよ。何が良いかしら」
「んーじゃあ、よくお話してくれる蝶々の子の話が良いな!」
「ええ、分かったわ」
「…むかしむかし、可哀想な一人の男の子がおりました」
「男の子は、生まれた時から芋虫でした」
「男の子のお父さんとお母さんは芋虫のその子が大嫌いで、まったく愛してくれませんでした」
「…殺されはしませんでしたが、誰からも見られないようずっと隠され男の子は育てられました」
「男の子は、世界を呪っていました」
「その男の子、可哀想だよね」
「ええ、そうね。…まあそれにしても相当にアレなのだけれど」
「うーん、まああれ程アレな事しちゃったくらいだしそうだよね」
「…では続きね。そんなある日、男の子は夢で綺麗な蝶々の男の子に出会い、助けて欲しいと願いました」
「蝶々の男の子は使いをやって、男の子を助け出してくれました」
「そしてその可哀想な子も、少しの間ですが蝶々になれるようになりました」
「男の子は助けてくれた子にとても感謝し、二人は恋人になりました」
「うん、良かったね。…まあその後がアレだけど」
「そうね。…しばらくは幸せに暮らしていましたが、男の子はやはり家族が許せませんでした」
「そうして男の子が偉くなった後、男の子は自分の家を家族もろとも焼き払いました」
「それをとても悲しみ引いた蝶々の子は、もう君とは恋人でいられないと言いました」
「男の子は、再び一人ぼっちになりました」
「まあそんな事しちゃった男の子が悪いけど、その子もやっぱり可哀想だよね」
「ええ、絶対に駄目だけれど気持ちは分からなくも無いからね。…それから少し後、黒い男の子がやって来ました」
「黒い男の子は芋虫ではありませんが、彼もとても可哀想な子で、男の子はその子がすぐに好きになりました」
「そうして男の子は黒い男の子に告白し、二人は恋人となり幸せに暮らすようになりました」
「…うん、でもその後にひどい事になっちゃうんだよね」
「…そうね。全世界が引く程にアレな事にね」
「しばらくは幸せでしたが、男の子は黒い男の子にもっと強くなって欲しいと思い、彼も芋虫にしてしまいました」
「…どうして、恋人なのにそんなにひどい事できるんだろうね」
「…その子は愛しているからそうしたのでしょうけど、最悪な愛し方をしてしまったわね」
「うん、そんなの絶対に愛じゃ無いよね」
「…男の子はそれで蝶々の男の子やお世話してくれている人全員から嫌われとても怒られ、ずっと一人きりにさせようかとも話し合われましたが。彼はとても大事なお仕事をしていたので、少し後に許されました」
「…ひどいね」
「…そうね。どんなに大事なお仕事をしていたとしても、こんな事は許されるべきでは無かったと思うわ」
「…黒い男の子はとても可哀想なので、お世話していた人達は彼の記憶を変えて生まれた時から芋虫だったという事にしました」
「…その子、本当に可哀想だね」
「…ええ、あれ程可哀想な子は私も他に知らないわ。…それからまた少し時間が経ち、男の子達は神様となりました」
「男の子は同じ芋虫となった黒い男の子とずっと一緒で、とても幸せそうでした」
「…離れて暮らしていた蝶々の子とその仲間達は、いつか男の子を殺してやりたいと願っていました」
「…うん、当然そうなるよね。僕もその子許せない」
「…ええ、私も人の死なんて願いたくないけれど。その男の子だけは許せないわ」
「…それから長い時間が経ち、男の子達はずっと蝶々でいられるようになりました」
「男の子はとても幸せそうでしたが、黒い男の子はなぜか悲しそうでした」
「…うん、そうだろうね」
「…それからまた長い長い時間が経ち、男の子達はある程度自由に外に出られるようになりました」
「男の子はとてもとても幸せそうでしたが、黒い男の子はやっぱりどこか悲しそうでした」
「男の子の事を知っている人は皆、黒い男の子が本当に幸せになってくれる事を今も願っています」
「…はい、おしまいよ」
「うん、ありがとうおばあちゃん。僕悲しいけどこのお話好きだな」
「そう、それは良かったわ」
「あのさ、おばあちゃんのお話すごく面白いし、本にしたりすれば?」
「…ええ、私も昔そうしようと思ったのだけど。実はこのお話、元になった人達がいるの」
「え、そうなんだ」
「ええ。私が昔働いていた場所であった事を元にしたお話なのだけど。見る人が見れば誰の事かすぐに分かってしまうから、という事で本には出来なかったの」
「ふーん、そうだったんだ。そういえばおばあちゃん昔偉い博士だったんだっけ」
「そうよ。あの悲しい戦争より少し後の時代だけど、この国でもとても大事な研究をしていた所でずっと働いていたの」
「うん、おばあちゃん凄いもんね。やっぱこういう国だしアレ気味な研究もあるけど」
「まあ、こういう国だしそれは仕方無いわね。罪も無い人を犠牲にしたりは絶対にしなかったけれどね」
「うん、おばあちゃんすごく優しいもんね。…じゃあその黒い男の子も、元になった子がいるんだ」
「…ええ。本当に、本当に可哀想な子だったわ。とても長生きだから、まだ元気なんだけれどね」
「ふーん、そうなんだ。いつかは本当に幸せになれると良いのにね」
「…そうね。きっとこの国中の人皆、そう思っているわ」
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