はーとふるクインテット

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第四章 驚天動地のアレ事件

ある決意をしたクロ

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アレ計画から数日後。


「おし、クロ。もう完璧だ」
「うん、ありがとう前野。…せっかく義肢付けてもらったのに、すぐ戻しちゃってごめんね」
「あー気にすんな。こういう超カジュアルに身体改造出来るアレな国だし、手術してみたもののやっぱ違うな―って即戻す奴結構いるしな。この国アレ改造も基本クーリングオフ認められてるし」

「…そっか、でもわがまま言っちゃってごめんね。今後はあんまり困らせないようにするから」
「あー、大丈夫だって。お前普段すごく慎ましいし相当な身分なんだし、たまにはわがまま言ったっていいんだぞ。まあお前の相方は言い過ぎだがな」
「…うん、そうだね」

「で、ほらもう怪我も完治して普通に動けるし、メンタル大丈夫なら授業行って来な」
「…うん、そうする。行ってくるね」


そうして頻繁にぶっ壊されるので相当強化したドアを静かに閉め、クロは出て行った。

「…まあ爆発はやり過ぎだが、俺もあのクズにはそのくらいやってやりたいから業者の気持ちも良く分かるな。クロには本当に気の毒な事をしちまったが」

「…で、洗脳もう相当解けて来てるから、そろそろ完全に思い出すだろうな。…おそらく、あと数週間って所か」


「…シロ。僕は」


少し後、シロとクロの教室にて。

「…あ、クロおはよ。もう体大丈夫?」
「…うん、もう全然平気。シロも少しだけど怪我してたけど平気?」

「あーうん、かすり傷程度だったし速攻治った。なんとなく前野に治してもらうの嫌だから自分で適当に手当てしたけどさ」
「…そっか、良かった。…あのさ、大事な話があるんだ」
「ん、何?」

その時、授業を始めるチャイムが鳴った。

「…あ、授業始まるね。じゃあ時間かかるだろうし、放課後僕達の部屋で話すから。ごめんね」
「…うん、分かった。…どうしたの改まって」
「…後で、話すね」


その日の昼食時。

「あ、クロ君元気そうで良かった。体普通に戻してもらったんだ」
「…うん、用意や手術してくれた前野には悪いんだけど。義肢壊れた時昔の事思い出して、少し辛くなっちゃって」

「…あー、そりゃそうだよね。うん、仕方ないよ」
「…うん、当然そうなるだろうし前野も分かってるから大丈夫だよ」
「ああ、俺もそう思う」
「うん、クロ君いつもすごく良い子だし、皆分かってるから大丈夫だよ」

「…うん、ありがとう」


「じゃ、またご飯私達と食べる?しんどいだろうしたくさん楽しいお話しようよ」

「…ううん、ごめんね。今日は久しぶりにシロと食べようかと思って」

「え、そうなんだ?まあアレとはいえ大事な相方だもんね。あいつも最近多少は懲りてるだろうしたまには良いんじゃない?」

「…うん、少しね。放課後話したい事あるし、最後に食べておこうと思って」
「…え、最後って?」

「…ごめんね、何でもない。今度ちゃんと皆にも話すから」

そう言ってどこか悲しそうに、料理を持ってクロ君は去って行った。


「…最後って、どういう事だろうね」
「…俺、何となく想像付くかも」
「…ああ、俺もだ」
「…うん、僕も」


「あーもうあのクソババアいつもいつもクソウザ過ぎ。今日もミートボールパスタ頼んだら20分くらい茹でた超べっちょべちょの麺出しやがるしミートボール黒焦げだし、ってかマグロの目玉混入してるしどこをどうやったら間違えるんだよあのボケババア、速攻解雇しろよな」

「…シロ、ここ良い?」
「…え、クロ。どしたのいきなり」

「…うん、久しぶりに一緒に食べようと思って」
「…そっか、ありがと。うん、もちろん良いよ。隣座ってよ」
「…うん。今日もご飯ひどいね。僕またカレー大盛で食べきれないから、少し食べて」

「うん、ありがとねクロ。僕クロと食べるご飯大好きだよ」
「…うん、良かった」


「…あのさ。最近クロおかしいしひどい事ばっか言って来るけどさ。でもやっぱり危ない時は助けてくれたし、僕クロの事大好きだよ」
「…そっか」

「…あのさ、僕クロに酷い事なんてしてないから。信じて」

「…」

「…クロ、何か言って欲しいな」

「…うん」

「…僕さ。まあクソな自覚は十二分にあるから分かってるけど、クロ以外の全世界から嫌われてるし。…クロから嫌われたら、僕もうこの世界に居場所無くなっちゃうし。…だからさ」

「…うん」

「…だからさ、お願い。クロだけは僕から離れないで」

「…」

「…クロ?」

「…ごめんね、シロ。今はご飯食べよう」

「…うん、そうだね」



少し後、学園長室にて。

「…代行様、例の工事業者どうなったの?」
「うん、やはり責任者の主導で仕様書よりかなり派手に工作していたようだね。気持ちは分かるけれど指示を無視してクロ君にこれほどの傷を負わせてしまったし、極刑までは行かないものの責任者には相当な期間の実刑は付くだろうね」
「あー、やっぱそうなりますよね。僕もあいつ爆殺してやりたいし気の毒だとは思うけど、無関係なクロ巻き込んじゃったのはまずいですよねー」
「ええ、僕も気持ちは良く分かるので何とか口添えしたい所ですが。流石に英雄にあれ程の行いをしてしまってはどうしようも無いでしょうね」

「うん、責任者もクロ君に相当な怪我を負わせたと知った瞬間に極刑を覚悟したそうだしね。当然今回の計画を明るみには出来ないから彼の独断という事にはなってしまうけれど、なるべく優秀な弁護団を付けてあげるつもりだよ」
「あー、それは良かった。代行様も相当アレな面あるけど鬼じゃないですもんね」


「…それで、僕の機能を阻害したジャミング電波の出所は分かったのでしょうか」

「…いや、残念ながらまだ突き止められていないんだよ。相当強力な電波で、まなと君のような一種の呪いにも近い類のもののようだね」
「へー、そうなんですか。でもあの場にまなとさん居なかったですよね」
「うん、彼の仕業ではないだろうね。…もしかすると、彼よりも強い力かもしれないとの事だ」

「え、国内最強クラスのまなとさんの能力上回るってどんだけですか。そんな事出来るのそれこそガチの神様くらいしかいないんじゃないですか」
「…もしかしたら、本当に神様が手助けしたのかもね」


その時学園長室のドアがノックされ、静かにクロが入って来た。

「おや、クロ君。今度はどうしたんだい」

「…代行さん。相談したい事があるんですが」



「…人の子が勇気を出してあの子に制裁を加えるという事で、私も少しばかり手助けをしたのだが。…君は本当に優しい子だ」

「…だが、もう君の記憶も戻るだろう。…辛いだろうが、真実と向き合いなさい」

「…君が本当に幸せになれるのを、祈っているよ」

「…そして、私も人の子を呪いたくなど無いのだが。あの子だけは、この上無く悲惨な最後を迎えて欲しいね」



そして放課後、シロとクロの自室にて。

「…あ、クロ。遅かったね」

「…うん、少しここ来るまで時間かかっちゃって。ごめんね」

「いいよ、クロ最近相当おかしいしそのくらい今更だし。んで話って何?」

「…ごめん、やっぱり部屋の中で話すの辛いから。外に出て話しても良い?」
「…うん、別に良いけど。どこ行くの?」

「…入学して間もない頃一緒に行った、あのお社に行こうか」
「あー、ここの裏山のてっぺんにある小さい神社ね。まあ近いし僕達飛べるし良いけどさ。じゃあ行こ」

「…ごめん、歩いても良い?」
「えー、めんどいなー。まあたまには良いよ。僕達体強いしね」

「…うん」


そして数十分後。

「あーやっと着いた。クロ超素早いのにやたらゆっくりだったね。まあ病み上がりだし仕方ないか」
「…そういうのとも、違うんだけどね」

「んー、そうなの?あーもうすっかり日が暮れちゃったね。まあここからの景色好きだし良いけどさ」
「うん、学園やこの町が見渡せて綺麗だよね」

「うん、アレ過ぎる町と学園だけど、ここから見渡す分には綺麗だよね。少し遠いけど海も見えるしさ」
「…うん、そうだね」

「で、もういい加減良いでしょ。朝から言ってた大事な話って何なの?」

「…あのね、シロ」

「うん、どしたの?」


「僕達、しばらくユニット解消しよう」

「…え?」

「…ごめんね。…でも、僕もうシロと一緒に歌いたくないんだ」

「え、ちょ、ちょっと待って、何言ってんの。お前おかしすぎでしょ。速攻撤回しろよ」

「…ごめん、撤回出来ない」

「い、いやいやいやふざけんなマジふざけんな。ってかソロ活動基本認められないしお前他に行くところ無いだろ馬鹿なの死ぬの」

「…代行さんにもう相談して、てうてうの人達としばらく組んで良いって承認も貰えた」

「…は?」

「…だから、ごめん。僕、部屋も出て行って当分別の部屋で暮らすから」

「い、いやそれどころじゃ無いだろお前、ってか僕もソロになるじゃん無理でしょ。僕どうすんの」

「…シロも当分ソロ活動して良いって、代行さん言ってたよ」

「…い、いやマジで代行クソ過ぎだろ。ってか僕だけじゃユニット名詐欺になっちゃうじゃん」

「…ユニット名も、好きに変えて良いってさ。良いの思いつかなかったら代行さんが考えてくれるって」
「い、いやだからあいつに決めさせたら絶対クソ過ぎる名前になるに決まってんだろふざけんな」

「…うん、そうだろうね」

「ってかマジでお前何言ってんの頭末期症状過ぎでしょ。…昼間も言ったじゃん。クロが離れたら、僕世界のどこにも居場所が無いって」

「…そうだね」

「…いや、そうだねじゃねえだろ。何か他に言う事あんだろ」

「…」

「…おいこら、何とか言えよ」


「…ごめんシロ。君が僕に何したか、僕想像付くんだ」
「…え」

「…ずっとおかしいと思ってたんだ。生まれつきなのに何でこんな傷だらけで火傷まであるのかなって」
「…い、いやだから、それはその」

「…言ったよね。僕、嘘つき大嫌いだって」
「…う」

「…君の事嫌いにはなりたくなかったんだけど、ごめんね」


「君の事、かなり嫌い」

「…っ」


「だから、そういう事。…ごめんね、僕達当分離れて生活しよう。…ばいばい」

「…ま、待って、クロ」

僕は必死に背を向けたクロに手を伸ばし呼び止めたが、クロは立ち止まらず静かに僕の前から去って行った。


「…い、いやクソ過ぎでしょ。クロがいなくなったら、僕マジで独りぼっちじゃん」

「…誰か、助けて」
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