はーとふるクインテット

第三章 アレな波乱の幕開け

番外編 蓬と椿の昔の話

俺達はくっついて生まれ、一人残念ながら生まれて来れなかった以外はとても幸福だった。

もう一人の子もたまに一緒にいる気配がしたり、夢に同じ顔で出て来てくれたりするのでそれ程悲しくは無かった。


だがある時父親が受け持っていたそこそこの規模の会社が倒産し酒浸りになり、しばらくは母親も頑張って慰めたり慣れない仕事をして家計を助けていたが、一向に立ち直らない父親に嫌気がさしその内家を出て行ってしまった。

その後離婚が成立しある程度の慰謝料も取り立てられ、経済状態は更に困窮した。


俺達は小さい頃からそれなりに身体能力はあったので、その頃から仕事人を始め、無理の無い範囲の相手を選び堅実に稼ぎ報奨金を家に入れていった。

まだ中学生上がりたてくらいの俺達にそこまでさせて父親も流石に反省したのか、それからは酒を止めて真面目に働くようになり、社会的信頼はかなり失ってしまったが少しずつ信頼も回復していった。


かなり後になって、すっかり経済的に落ち着いた頃若干アレだけど基本的には真面目な興信所に母親の事を調べて貰った所、別れた少し後に良い相手と再婚したらしいが、その相手が実はかなりアレだったようでDVに耐え切れず逃げ出した所、運悪くアレな通り魔に刺されて亡くなってしまったらしい。

父親を見捨てて逃げ出したので複雑な感情を抱いていたが、そこまでされる謂れは無いと思ったので俺達は彼女を気の毒に思った。

すぐにその通り魔を殺して仇を取りたいと思ったが、そいつはもう別の仕事人が処刑してしまったらしく残念だった。


そしてそろそろ受験勉強本腰入れないとなーという頃、蓬くんはある日突然暴走クソトラックに跳ね飛ばされ、そのままどうしようもなくあっさりと死んでしまった。

俺は失意のどん底に陥り、正直自殺も考えた。

だが夢で三人目の子が励ましてくれたので、どうにかそれは思いとどまった。

その少し後、かなり倫理的にはアレだがある研究所（後日知ったがみな君のいた所らしい）が可哀想過ぎるのでとクローン体を作成してくれ、家庭が荒れた時も家族写真とかは当然アレだが俺達二人の思い出は大切に保管していたのでデータも十分あり誤差レベルの記憶以外は完璧に復元できた。人格もばっちりだった。


カプセルが開けられ全裸で目覚めた蓬くんは当然驚いたが、経緯を説明した所アレな国だし速攻で把握し受け入れ、再会を心から喜んだ。

父親も若干引きつつも喜び、それからは一層俺達を大切にしてくれるようになった。

その後俺達は大変過ぎて受験勉強どころじゃ無かったし、歌って踊るの好きだしルックスもそれなりに自信はあったので流れ星学園への入学を志願した。

俺達はそこそこ勉強は出来たので偏差値的にも問題もなく、素質も十分だし蓬くんの経歴は話題性があり面白いという事ですぐに合格した。


俺達は中の下くらいだが、息の合ったパフォーマンスとやっぱり蓬くんの話題もあって入学直後に結成したにしてはなかなかの評価を収めていた。

だがその少し後、入学して来たてうてうの人達からシロの犯したとんでもない罪を聞かされ、彼を許せなくなった。

相当な立場で強さの相手だから難しいとは思うが、いつかはこの手で断罪してやりたいと思った。夢で会うもう一人の子も相当怒っていた。

それからは活動や体に無理の無い範囲でさらに鍛えるようになり、仕事人仲間の子達ともよく組んで仕事に行くようになった。


あと、かなり最近になって知った事だが母親を刺した通り魔は金目先輩が内蔵されたブレードで全身メッタ刺しにした後小指一本残して滅却砲で塵一つ残さず消し飛ばしてくれたらしい。

それからとても感謝し、金目先輩とはかなり仲良くなった。まあ代行の指示でアレな事をしてきた時は怒るけど。