はーとふるクインテット

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第三章 アレな波乱の幕開け

少しずつ違う事をし始めたクロ

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ずっと前の事。

「ねえクロ。僕、今更だけどクロの事大好き。出会ったその瞬間から」
「うん、ありがと」

「クロもさ、僕達程クソでは無い物の十分にクソな生まれじゃん。でもそんな生まれを呪わないで、もっとクソな僕達を憐れんで優しくしてくれて。僕そういうクロの事大好き」
「うん、シロ達すごく可哀想だし。…ずっと小さい頃だったからよく覚えて無いけど、たぶん僕もひどい生まれだったとは思うけど。海外の子だし」

「だね。まあこんなクソな時代のクソな国で海外の子って事は、相当にクソな人生だったろうね。物心付くか付かないかの内に軍に引き取られて良かったよね。まあここはここで十分にクソだけどさ」
「…でも、ちゃんと仕事して美味しい物食べたりできるしまだ良いよ。…仕事は辛いけど」

「僕、クロのそういう境遇を受け入れて真面目に頑張る所も大好き。…ね、だからさ。僕クロの事宇宙一大好きなんだ。クロ、恋人になってよ」
「うん、いいよ」

「わーい。あのクソより遥かに超速でOKしてくれてありがと。クロ、愛してるよ!」
「うん、僕もシロの事大好きだよ」

「へへー。僕、クソな国で時代だけど、超幸せ!」
「うん、僕も」



「………」

「んー?どしたのクロ。なんか寝覚め悪そうだよ」

「…うん、ずっと昔の夢見てた」
「あー、まあ僕達過去がクソ過ぎるからたまにはそういうのも見ちゃうよね」

「…うん、でも、昔は幸せなはずだったのに、変だな」
「ふーん?そうなんだ。まあ今幸せなんだしどうでもいいじゃん」

「…うん、そうだね」


「………」



「…ああ、君。少しずつ気付き始めているんだね」

「…少しずつ、前へ歩み始めている」

「とても良い事だと思うよ。君は君の幸せを見つけなさい」


「…あの子もその時、己の過ちに気付くだろう」



数日後、食堂にて。

「おー、今日の日替わりメニューは牛すじ入り特製スパイシーカレーか。これも美味しそうだなー」
「ああ、面影君。これおすすめだよ。昨日の晩からじっくり煮込んだの。あ、当然アレなお肉とは別にして煮たから安心してね」
「はーい。まあおばちゃん衛生法はちゃんと守るもんね。俺も昔ちょっとだけ合法で食べた事あるけど美味しく無かったしー」
「ああ、君もやっぱり色々な世界を見て来てるね」
「まあ百年以上も生きてれば色々ねー。じゃあこれちょっとルー多めでチーズトッピングと、サラダとデザートのヨーグルト付けてくださーい」
「はいはい、950円ね」
「はいよー。俺長生きだし結構稼いでるし余裕」
「はいどうぞ。じゃあごゆっくり」

「ありがとー。おし、あいつらのテーブル行こっと」


「あー、面影日替わりカレーなんだ。美味しそうだったから僕もそれにした」
「あー、俺は魚好きだしサバ味噌煮定食にした。カレーも好きだけど」

「うん、サバ味噌も俺大好き。…あれ、クロじゃん。珍しいね」

「…うん、ちょっと気分変えたくて。一緒に食べてもいい?」
「あー、全然良いよ。ほらここ座りなよ」

「うん、ありがと。僕もカレー美味しそうだったからこれにした」
「クロ、カレー好きだもんね」
「うん、軍で良く食べてたから好き」

「じゃ、いただきまーす」
「…いただきます」

「うん、スパイス効いてて美味しいね」
「おばちゃんハーブやスパイスも自作してるもんね。アレな物栽培してそうで怖いけど」
「まあおばちゃん良識はあるタイプのアレだし大丈夫でしょ」
「まあ、ここの関係者一同大概そういう系のアレだもんね」
「…うん、そうだね」


「クロは大変だったのに、そういう系の植物とか一切手を出さないで偉いね」
「…うん、僕そう言うの嫌いだったし、てうてうの人達ってそういうのほぼ効かないらしいから」
「ふーん、そうなんだ」

「…でも、研究員さん達の話だと、僕軍に引き取られる前には、かなりそういう薬とか使われてたみたい」
「…あー、そうなんだ」

「…覚えてないくらい昔の話だし良いけどね。治療処置とか結構大変だったみたい」
「うん、大変だったね」
「あーうん、俺も昔一時そういう研究された事あったし。まあ生きるために同意の上だったけど」
「うん、僕も学園来るまではほぼそんな感じの研究施設にいたし。基本は善良な所で良かったけどね」


「…ここの学園の人皆そうだけど、みんなも大変だったね」
「まあこんなアレな国だししょうがないよ。昔なんてもう完全にアレだったし」
「まあ今も十二分にアレだけど、あの奥さんの怒りが少しだけ治まって来たのかもね」
「うん、そうだと良いよね。…どうして治まったのかな」

「…もしかしたら、それ以上に許せない事があったのかもね」
「…何かは、分からないけどね」
「…あー、そうだねきっと」

「…そっか」


「あ、でさ。学園来て少ししてから知ったんだけど、僕がいた研究施設、みなと同じ所だったんだよね」
「へー、そうなんだ。じゃあ病葉みなと会った事あんの?」

「…いや、みな本当に酷い状態で全く動けなかったし、存在自体トップシークレットだったから会った事は無かったよ。噂話くらいは聞いた事あったけどね」
「…ああ、そうなんだ」


「うん、で、みな研究してたって事は、昔てうてう部隊があった研究施設の後継だと思うんだよね」
「あー、なるほど。じゃあ遠縁だけどクロやてうてうの奴らとも関係者って事になるんだ」
「…ふーん、そうなんだ」
「まあこの学園の奴らほぼ全員相当な訳ありだしね。どうしてもそういう縁も出てくるよね」
「うん、この国広いようで狭いしね」
「…うん、そうだね」


「…は?ちょっとクロ何やってんの」

「…あ、シロ」

「あー、シロ。見ての通りこいつ俺達とご飯食べてるから」
「いや、ふっざけんな。何でクロが僕以外の奴とご飯食べてんの。ほらクロさっさと帰るよ」

「…ごめん、やだ」

「…は???」


「…悪いけど、たまには違う人とも食べたい」
「そーだよ。いっつもお前とべったりじゃ可哀想じゃん。たまには別の奴と交流させろよ」
「うん、いくら相思相愛でも、ずっと付きっきりじゃ気の毒だよ」
「そーそー。愛してるならそういうのも尊重しろよ」

「…いや、んな訳無いじゃん。クロは僕と一緒が宇宙一幸せだし大正義なの」


「…ごめん、最近正義じゃないかも」

「…え?」


「…悪いけど、何か最近シロといても、あんまり幸せじゃないんだ」

「…はあ?」

「うん、はっきり言うけどお前、全然クロを幸せに出来て無いよ」
「うん。僕もそう思う」
「だね。俺も。ってかこの学園の全員そう思ってるよ」


「…いや、お前らみたいなクソに何言われようと気にしないけどさ。クロ、何でお前そんな事言えんの」

「…何でだろうね」

「クロ、出会った瞬間から僕の事好きになってくれて、速攻で告白した時速攻でOKしてくれたじゃん。その事忘れたの?」

「…忘れてないよ」

「じゃ、何でそんなクソ過ぎる事言えんの。今更どうしたの。変な物でも食べたの。あー、そのクソババアが作ったカレーのせいか。保健所呼ぼっと」

「…カレーのせいじゃないよ」
「うん、おばちゃん食品衛生法は守るし、これ普通に美味しいよ」
「うん、僕も体は強いけど普通に食べれるし。これ美味しいよ」


「…あーもう、お前ら寄ってたかってクソウザすぎ。…クロ、帰ったらじっくり話したい事あるから」
「…うん」


「あー、かなりしつこかったけど帰ってって良かったね。クロ、やるじゃん」
「…うん」

「あのさ。もっかいはっきり言うけど、あいつクソだし、お前の幸せなんかこれっぽっちも考えて無いよ。だからこれからも、俺達や他の奴とご飯食べようよ」
「…うん。ありがと、そうする」

「…うん、クロ、あいつと少しづつ離れ始めたんだね。すごく良いと思う」
「だね。シロ離れ大事だよ。もう半世紀以上一緒だったんだしさ」

「…うん、皆、ありがと」


その夜。

「…おいクロ。昼の事だけど」
「…うん、ごめん。でもこれからもしばらくシロとは食べたくない」
「…あ?」

「…シロ。悪いけど、僕の事本当には好きじゃ無いでしょ」

「…はああ???いや、宇宙一好きだって戦時中から言ってんじゃん」

「…本当に好きなら、どうして僕の事一人占めするの」

「…いや、クロには僕だけいればそれで十分だし、昔からクロそれで満足してたじゃん」

「…ごめん、最近、なんか満足できない」

「…はー???」

「…悪いけど、僕最近シロの事、あんまり好きじゃないかも」
「…何でお前、今更そんな事言えんの。僕たちほぼ不老だけどボケ始まったの」

「…うん、そうかもね」

「…いや、マジで笑えないんだけど。明日速攻で前野のとこ連れてくから」
「…うん、分かった。じゃあおやすみ」

「いや、何でそんな状況で寝れんの。マジでボケ始まってるでしょ。やばいなこれ」

「…ごめん、静かにして」

「…いや、クソ過ぎでしょお前。マジクソ」

「………」


翌朝。

「…という訳でこいつ、確実に頭いかれてるからとっとと精密検査して」

「あー、分かった分かった。じゃあ精密だしかなり時間かかるから、シロは授業受けてな。俺から教師連中には言っとくから」

「…いや、マジでクソすぎ」

ガラガラピシャと、相当乱暴に保健室のドアが閉められた。


「あー、分かってると思うが、検査なんて必要ねえから。クロ、大変だったな」
「…うん、ごめんね巻き込んで」

「いや、お前何も悪く無いし気にすんな。お前も勇気出して良く頑張ったな」
「…うん、何か最近、別の事したくなって」

「おう、良いと思うぞ。お前半世紀以上もあいつに拘束されてたんだからな」
「…そうだね。今まではそれで幸せだったんだけど」


「まあ、お前も人生長いんだし、気が変わっても仕方ねえだろ」
「…うん、ありがと」


「…分かっちゃいると思うが、学園全員お前以外あいつの事が大嫌いで殺意すら抱いてる。もちろんお前の事もあるし、立場上実行はできねえがな」
「…うん、そうだよね」

「そういう訳で、常日頃あいつを合法的に締められる方法を考えてるし、結構上の奴らに相談してる」
「…そうなんだ」


「まあ想像は付いてると思うが、あいつ戦勝に導いた英雄とはいえ相当にクソな事やらかしてるからな。…絶対に言えないが、本気で許せねえ事も平気な顔してやってる」
「…そっか」

「そういう訳で、あいつ確かに英雄の現人神ではあるが、完全に悪霊の祟り神扱いだ」
「…うん、神官さん達からもそう聞いた」

「まあ神殿でも数十年ずっとあいつと一緒だった訳だし、とっくに知ってるよな」
「うん、祝詞僕と明らかに違ったし、長さも違ってシロ嫌そうだったし」

「国中そういう扱いでも一切動じないメンタルの強さは、ある意味見習いたいがな」
「…うん、そうだね」


「だからまあ、お前がどれだけ心変わりして何しようとも皆お前の味方だ。こればっかりは代行もな」
「うん、代行さん僕にはデコピン程度しかしないもんね」

「だから、安心してあいつ裏切りな。また連れて来られたら俺がどうとでも言ってやるから」
「うん、ありがと前野」

数時間後。

「あーもうマジクソウザすぎ。こんな時に限ってクソ教師難問ぶつけて来るしー。珍回答クラス中で笑って来るしー。僕英雄で神で超売れっ子だぞ。いくらネタとは言えんな扱いして良いと思ってんの。政府にチクって全員不敬罪で処刑してやろうか」
「あー、お疲れシロ。検査終わったぞ」


「あーもうクソウザすぎ。で、結果どうだったの。やっぱ脳みそいかれてたでしょ」
「あー、アルツハイマーとはちっと違うが結構深刻な奴かもな。一応投薬はしたがしばらく様子見だ。当分は変な行動しても大目に見てやんな」

「はー?マジで役立たずだな。お前天才児なんだしブラックジャックとかK並みの超医術でどうにかしろよ」
「いや、いくらアレな国の俺でもあんな漫画と一緒にするな」


「はあ?もうこの国クソな漫画並みにイカレてんだからいいだろ。ほんと使えねえな」
「そういうお前だって狂わせ以外は何も出来ない役立たずだろ」
「はあああ?お前何クソな罵詈雑言吐いてんの。もうキレた。速攻政府にチクってお前極刑な」

「あー、俺天才児で勲章も貰ってるし多少の毒吐いても余裕だから。代行にも言われてるし」

「…もうクッソウザすぎ。狂わせるぞ」
「お前入学時にライブ活動以外の狂わせは禁止って厳重注意されてるだろ。それ破ったらお前の方が処刑されるぞ」

「…マジクソオブクソ。ほらクロ、さっさと帰るよ」

「…ごめん、自分で帰る」


「…お前、いかれてるとは言えほんとクソだな。さっさと治せよ」
「…うん」


「あー、お疲れクロ。まあいつでも来な。面倒だろうがな」
「…うん、ごめんね前野。怖い思いさせて」

「まあ、流石にブチ切れて狂わせられたら太刀打ちできねえが、流石にどんなバカでもそれはしねえだろ。折角のアイドルの地位失いたくねえだろうしな。当然学園も追放だろうしよ」
「…うん、そうだね」

「相当な事やらかしてるし、あいつも今更神社や研究所には戻りたくねえだろ」
「うん、シロ研究所も神社も嫌いだったし」


「そういう事でさ、これから好きなだけシロに反抗しな」
「…うん、ありがとね前野」
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