はーとふるクインテット

kromin

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第一章 みんなとの出会い

番外編 シロの昔の話

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僕はこのクソ過ぎる世界に生まれた瞬間から生を呪っていた。

クソな国とは言え、よりにもよってこんなクソな体に生まなくたって良いじゃない。


クソな両親は生まれた瞬間から僕を忌み嫌い、世継ぎのためだけに本当に嫌々育てていた。

きちんと食事や風呂は与えられていたものの、明らかに使用人もゴミを見るような目で嫌々接していた。
読み書きも習えたし(書けないけど)、本も大体希望通りの物を読ませては貰えたけど。


こんなクソな体でクソな立場な物だから、当然外へ出しては貰えなかった。

存在がバレたらアレなので、窓も閉じっぱなしだった。

僕は結構な年齢まで、その部屋の外がどうなっているのか知らなかった。


そんな訳だから僕の見る夢は、大半があまり楽しい物では無かった。

でも時々、夢でとても綺麗な蝶々の男の子に会う事があった。

その子はとても優しく、僕の境遇を知って本当に同情して、慰めてくれた。

会うたびに彼の名前を聞いたが、教えられないんだと悲しそうに言った。


ある日君はとても可愛いねと言ってくれた。

そのクソな部屋には鏡が無かったから、僕は自分がどんな顔か知らなかった。

クソな体だけど、顔はクソじゃなかったのが嬉しかった。


ある日、僕を助けて、ここから出して欲しいとお願いした。

その子はちょっと困った後、なんとか相談してみると言ってくれた。

それからその子を夢に見る事が無くなり、とても悲しかった。



ある時どこからか僕の存在を聞きつけた国からのスカウトマンがやって来て、僕を軍に引き入れてくれた。

軍に所属して間もなく、夢と姿は違ったがその子に再会した。


現実世界の彼は、本当に酷くクソにクソを上塗りしたような姿だった。

僕よりクソな存在なんている訳ないと思っていたので、本当に衝撃だった。

それから僕はもっと彼が好きになって、ほとんどずっと一緒に居るようになった。


彼と再会した後、名前を教えて貰った。

彼みたいにクソ過ぎる状態で産まれた人は、大体似たような名前になるのだそうだ。

彼は御名と呼ばれていた。いやセンスクソ過ぎだろ。


そんなあまりにもクソな人生なのに、彼はとても明るく優しく、前向きに生きていた。

とても優しいので、クソな仕事をする時にはとても辛そうだったが。

僕はまあ自覚はあるが相当クソなので、クソ仕事をする時もとても楽しかった。


逃げ惑う女子供や老人をまとめてどうしようもなく狂わせて大炎上させるのは爆笑物だった。

まあやる度に仲間全員からドン引きされていたが。


騰蛇はまあ要するに名前の通り蛇だった。クソな人魚の真魚都と一緒に見世物小屋で働かされていた。
その見世物小屋も相当なクソで、まあ要するにアレな事もしょっちゅう行われていた。


騰蛇もクソ不細工とは言わないまでもかなり癖のある方なので、綺麗でかわいい系の真魚都が身代わりになる事が多かったようだ。
で、クソされた後はその度本当に心の底から真魚都に謝っていたようだ。

あーもうクソうぜぇ友情だな。 愛情じゃないっぽい。ちなみに真魚都の方が若干年上。


千里はまあ要するに両目がクソだったので千里眼持ちになった。
歴史ある名家に生まれ、物心ついた時から千里眼で人を導くクソつまんない仕事をさせられていた。
そこそこの年齢で軍にスカウトされ、結構な古株だった。
その能力と落ち着いた性格もあり、軍の参謀ポジションだった。

散歩程度は許されたものの、あまり外出は許可されなかったようだ。

僕程のクソでは無いものの、両目がクソでそれなりにクソな体だったので、僕とは割と仲良しだった。


御名は本当にクソ過ぎて何一つ身動きできないのが本当に可哀想だった。クソ研究者どもさっさとなんとかしろよ。


そんな訳で蝶になって飛ぶ時は、本当に楽しそうだった。
僕も一緒に飛ぶのは本当に楽しかった。

因みに僕はモンシロチョウだった。クソ地味なのがちょっと嫌だったけど、御名が可愛いと言ってからは好きになった。

僕はクソな両親がクソ嫌々付けた、志郎というクソな名前が大嫌いだった。
だから御名に別の名で呼んで欲しいと告げると、少し考えた後、じゃあモンシロチョウだしシロにしようか、と言ってくれた。
それから僕はその名前が大好きになった。


会った瞬間から大好きだったけど、一緒に仕事するうちにもっともっと大好きになった。

ある程度仕事に慣れた頃、御名に恋人になって欲しいとお願いした。

彼はちょっとだけ考えた後、快諾してくれて本当に嬉しかった。


その時からこのクソな世界にも、ちょっとだけ良い所あるじゃん、と思えるようになった。


それからというもの、毎日毎日体は相変わらずクソだけど幸せだった。
仕事も精度が上がって更に戦績を上げられるようになった。


クソ両親は相変わらずクソ嫌いだったので、いつか必ずぶっ殺してやろうと決意していた。


戦果を立てまくって、もう多少やらかしても大丈夫だろ、と確信に至ったその日、早速。
とりあえずそのクソ身代わりをどうしようもなくクソ狂わせ、クソ両親とクソ使用人共にクソ睡眠薬を飲ませ。
クソ使用人共は放置でクソ両親をクソな僕の部屋にぶち込みクソ扉の前にクソ椅子やらクソ家具を積み上げ。
クソ屋敷中に灯油をぶち撒き、マッチ着火。


「貴方、何でこんな事するの。ふざけないで。早く出して。熱い、熱い」
「あっははははははは。僕だよ。ばーか」

「僕って、あ、あなた」


あー、めっちゃ楽しかった! さー帰ろ。


は?お前今何て言ったの。


「…シロ、ごめん。君の事分かってあげたいけど、もう、分かれない」
「…何それ。何でそういう事言うの。お前の方がよりクソとは言え似たようなものじゃん」


「…ごめんね、シロ。もう、無理だよ。 …君とは、恋人でいられない」


「…へー、何、お前。そういう事言っちゃうんだ。何でそんなクソな事言っといてそんな悲しそうなの」


「…良い子ぶってんじゃねえよ。 良いよ。もうお前なんかこっちから願い下げだ」


とは言ったものの、クソ仕事の都合上完全な絶縁は出来ず。
相当クソなギスギス状態での仕事を余儀なくされ、数か月間本当にクソオブクソだった。


そんなある日、クロがとっ捕まえられてやって来た。


クロはまあ要するに殺人兵器に仕立て上げられたクソ可哀想な子で、そのクソ敵国最強の兵器だった。
そんな訳でとっ捕まえるのには相当手こずった。間違いなく今までの相手でも最強クラスだった。

数時間全員で死闘を繰り広げ、どうにかとっ捕まえるのに成功した。かなりギリだった。


超強かったので、速攻再洗脳して、元々昔から仲間だったという事にしてチームに入れる事が決定した。
96番目の実験体だったのでクロと呼ばれる事になった。いやだからセンスクソ過ぎだろ。


クロは殺人兵器だったものの、元々凄く優しい子だったので、クソな体の僕を凄く憐れんで、色々お世話してくれた。
まあ他のクソ仲間や、超絶クソな御名も同じく憐れんてたのはウザかったけど。


そんな訳で僕は速攻でクロの事が大好きになって、速攻で告白した。
クロはクソなあいつとは比べ物にならないほど速攻でいいよ、と言ってくれて、本当に嬉しかった。


それから僕の世界は完全にクソでは無くなった。
相変わらず体はクソなままだけどある意味それでクロに会えた訳だし、まあいっかと思えるようになった。


補助装置を装備して飛ぶときのクロはカラスアゲハだった。装置の影響かちょっと機械が混じっていたけど。
クロは自分の肌と髪色が嫌いだったので、黒いその羽根もあまり好きそうでは無かったが、僕が凄く綺麗だよと言ってからはそれほど嫌いじゃなくなったようだ。


クロは凄く優しい子だったので、やっぱりあいつと同じくクソな仕事をする時は凄く辛そうで、終わった後良く泣いていた。

お前何も悪く無いんだし気にすんなよとか言って、いつも慰めてやった。


洗脳の精度がクソなのか、仕事してる時たまに殺人兵器だった時の事を思い出しそうになる事があり、凄くしんどそうだった。
そういう時は速攻でクソ研究院に言ってがっつり洗脳し直してもらっていたが、僕が優しく狂わせてあげられればいいのにな、と思うようになった。

クソな狂わせ方しかしていなかったので、そんな事出来る訳無いのが悲しかった。


めっちゃ幸せだったけど、ある頃から暗雲が立ち込め始めた。
クロは可哀想な殺人兵器で超強いとは言え、やっぱり僕達程クソでは無いしクソな目に遭っていたわけでは無いので、どうしても僕達に一歩及ばない所があった。

クロも一生懸命特訓して能力を伸ばそうと頑張っていたが、それでもどうしても伸び悩んでしまっていた。


僕は心苦しかったが、クロにもっと強くなって貰うために、僕と一緒になってもらう事にした。


身体がクソなのでそのままでは出来ないが、まあ接続されている装置を応用するなりクソ研究員を狂わせるなりでどうとでもなる。 でもやっぱ自分でやってあげたいので装置かなー。

こういうクソ組織な訳でクソな器具や武器はいくらでもある。
えーっと大鉈と斧とー。あとノコギリも持ってくか。
あと死なない程度にクソな目にも遭ってもらうので、錐と刀とー。あと焼く系の物も持ってこ!


クロ、今行くからね。待っててね♪


「いたい、いたい、やめて、シロ。何で、こんな事をするの」

「んー?何ってほら。クロ伸び悩んでるじゃん。僕と一緒になれば絶対強くなれるよ!」

「やめて、いたい、やめて。お願い、そんな事、しないで」

「んー僕も本当は辛いけどさ。でもやめない!僕、クロ大好きだから!」

「いや、やめて、いたい」

「ほらほら、頑張ってクロ。お前のためなんだから。クロ、愛してるよ♡」

「…いや、お願い、やめて」

「じゃーほら、次は焼く系の奴ね!はーい、当てるよー」

「やだ、あつい、あつい」


「…シロ、何やってんの」
「んー?何って」



僕がアレしたのが発覚直後クソ上司からそれはもうこっぴどく叱られた。まあ覚悟はしてたけど。
クビはギリ免れたものの、相当な厳罰が下り、数か月間隔離され謹慎処分を受け、かなり降格もされた。
まあクロが強くなってくれたのでその程度どうでも良かった。

死なせる訳にもいかないので食事や風呂とか諸々の世話はきちんとされていたが、殺風景な小部屋にしばらく閉じ込められ、あまり美味しくない食事を取らされ、娯楽の類もほとんど与えられなかったし装置で何枚も反省文を書かされた。僕文章あんまり得意じゃ無いけど。

謹慎中クソ屋敷でクソな世話をさせられていたクソな思い出が蘇ったが、まあやっぱりその程度も覚悟の上だし愛するクロのためなら我慢できた。


数か月後どうにか謹慎が解け、僕と一緒になったクロに再会した時は本当に本当に嬉しかった。
まあ察しは付いていたが、アレされたのはあんまり過ぎるという事でがっつり洗脳し生まれつきという事にされていた。一緒になったのが嬉しかったので別にどうでも良かった。

がっつりやったとはいえやっぱりクソ精度洗脳なので、時折思い出しかけたり何で生まれつきなのに傷だらけなのとか疑問に思っちゃったりしていたが、その度クソ研究員に言ってがっつりかけ直した。

傷や火傷だらけになっちゃったのは可哀想だが、そんなクロの傷や火傷跡も可愛くて僕は大好きだった。
生まれつき(という設定)とはいえクロは傷跡とかを見られるのが好きじゃなさそうだったが、僕は可愛くて大好きだよとか言って装置で撫でたり舐めたりしてあげているうちに少しづつ平気になっていったようだ。

期待通りクロは超強くなっていた。羽根も完全に綺麗なカラスアゲハになっていた。
僕は完璧で綺麗なカラスアゲハのクロが大好きだった。
一緒に飛ぶ時、本当に楽しくて幸せだった。

やっぱり洗脳の精度がクソなのか、たまに飛ぶときしんどそうなのが可哀想だった。
まあでもやっぱり僕はクソな狂わせ方が大好きだったので、優しい系の狂わせ方の勉強はしなかった。


その後間もなく敵国の無敵艦隊を沈めたり巨大生物兵器を狂わせて大暴れさせたりマッドなクソドクターを発狂させてクソ過ぎる病原菌や化学兵器をぶち撒いたりまあ例のクソ爆弾を盛大に誤爆させたりして、クソ戦争は終結して評価SS花丸大勝利を収めた。


そんな訳で僕等は完全に英雄の神扱いだった。まあ僕は完全にやべー神扱いだけどまあどうでもいいや。
各地に立派な神社が建立し崇め奉られ、僕はまあ体はまだクソだけどとても幸せだった。

僕以外の仲間は本気でそういう扱いしないでって常日頃言ってた。クソ謙虚だなお前ら。


因みにまあお察しだったがアレ事件後以降クロ以外の仲間からは完全に絶縁を告げられた。もう仕事以外二度と話しかけんなとっとと死ねと言われた。死なねえよばーか。

絶縁された後もシロの名を使い続けるのがちょっとウザかったが他に良いのも思いつかないし、まあこれくらいは形見として持っててやるかと思い使い続ける事にした。


そんな訳で終結後はクソな体でお揃いなクロと綺麗な神衣を着て毎日毎日一緒に幸せに暮らしてウルトラハッピーだった。
やっぱりクソ精度洗脳のせいで時折しんどそうになっちゃう時はあったけどその時はクソ神官に速攻で洗脳してもらった。


それからさらに数十年後、アレな技術が発展し完全な体が得られる事になった。
僕は即決で普通の体を選び、クロもお揃いにしようよと言ったら少しだけ悩んだあとお揃いにしてくれてとても嬉しかった。

傷だらけのクロも可愛かったが、完璧な体で傷一つないクロは本当に本当に可愛かった。

それからは二人仲良く(僕等身分がアレで超裕福だったので)国内のあらゆる場所(当時この国アレ過ぎてまだ国外旅行は許されなかった)に行きまくり毎日毎日最高にメガトンハッピーな楽しい日々を過ごした。


さらにさらに数十年後のまあ要するに現代、僕達二人は流れ星学園に入学し、二人でユニットを組み活動を始め、まあ二人とも超狂わせられるわけで(クロが嫌がるのでアレな狂わせは自重したが)速攻で人気者となり最高だった。


クソウザい事にどういう訳だか元仲間のあいつらもまとめて入学しユニット活動初めてお察しの通り超人気者となった。実戦経験の差と頭数の問題でどうしても一歩及ばないのが最高にクソウザかった。


やっぱりお察しだが奴らの入学後超速で僕がアレした件は学園中に開示され、超速で全員からドン引きされ腐れ外道のクレイジーサイコホモ死すべし慈悲は無いぶっ殺す死ねとか言われた。


まあ僕がクソ過ぎるのはとっくに分かってたしクロが居るなら何言われようとどうでも良かった。


そんな訳でもう今は毎日毎晩最高にウルトラメガトン完全無欠マシマシチョモランマのハッピーなんだ!!!
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