1 / 1
第一章:零番隊
第一話
しおりを挟む
京の都には凄腕の剣客たちがいるらしい。
この話を聞いた鷲塚京次郎はすぐさま故郷を飛び出した。
幼いころからずっと剣と共にあった。すでにその腕前は藩内においてもはや、右に出る者は一人としていなくなってしまった。それが京次郎をひどく退屈させた。誰よりももっと強くなりたい。そのためにはやはり、自分よりも遥かにずっと強い者と闘わなければならない。たまたま舞い込んできた新撰組なる存在は、退屈極まりない京次郎にとっては正に最高の餌だった。
花の都と言われるだけあって、町の雰囲気は雅だった。
喧騒はなく、穏やかな時間が静かに流れている。
「ここが噂に聞く花の都……京か。確かに、なかなかいい街並みじゃないか」
京次郎はもそりと呟いた。
京次郎は農家の生まれである。武士の家系でないものが、いくら武士の真似事をしたところで所詮は農民にすぎない。
そうしたしがらみが、心底気に入らなかった。同じ人間なのに何故こうも階級などというものがあるのか。
証明してやればいい。農民でも武士よりもずっと強い者がいることを世に知らしめてやればいい。
さすればこのようなくだらない階級の価値も路傍の石に等しくもなろう。京次郎はそう信じて疑わなかった。
だからこそ、新撰組への興味が強くあったのかもしれない。
「新撰組は剣の腕と度胸さえあれば誰でも入れるって話だったな。今入隊しているやつらも大半も武士じゃないって聞いてる。俺みたいな奴にはもってこいじゃないか」
京次郎はにしゃりと笑った。
新撰組屯所に着くやいなや、怒声にも似たけたたましい声が聞こえてきた。
幾度となく金打音が鳴り響く。どうやら中で激しく斬り合っているらしい。
「――、失礼。ここは新撰組屯所ですが、何用でしょうか?」
門の手前、二人の若い隊士がいた。
まだ入隊仕立てなのか。彼らからは血の香りはほとんどしなかった。
あどけなさがどこか残る顔立ちも然り。京次郎は静かに口火を切った。
「この新撰組に入隊させてほしい。身分問わず剣の腕と度胸さえあれば入れると聞いたんだが……」
「えぇ、もちろんです。たった今その入隊試験を行っております。中へ入って右に進めば道場がありますので、そちらへ」
「わかった」
新撰組に所属する隊士は二百名を軽く超える。
その二百名以上が等しく剣の腕が立つ。これほどおもしろい環境はまずないといっても過言ではないだろう。
全員と死合ってみるというのも一興だ。京次郎はそんなことを、ふと思った。
道場の前では多くの隊士たちの姿があった。しんとした異様な静寂は、当事者でないのに妙な緊張感を与える。
どうやらここにきて正解だったようだ。自然と口角がくっと釣りあがるのを抑えられなかった。
皆に見守られる中、二人の男がいた。
片や若々しい女子のような少年だった。色白の肌に栗色の長髪を後ろに束ね、剣を握るその腕はとても細い。
誰かが、あのような細腕で満足に剣を振れるものなのか、とこう口にした。
言い分については京次郎も理解を示していた。剣を振るう以前に華奢な体躯では戦闘に不向きなのは言うまでもない。
片や対峙しているのは元からいる隊士である。少年とは違って鍛え抜かれた筋肉がとてもよく目立つ。
身長さについても隊士のほうがずっと大きかった。
「やぁぁぁぁぁぁっ!」
少年が先に動いた。
彼が地をとんっ、と蹴るとたちまち両者の距離は縮まった。
少年の間合いだ。手にした太刀がくんと跳ね上がった。銀色の残光を引いた白刃は天を差す。
わっと赤々とした血が舞った。あっという間に周囲は濃厚な鉄の香りに包まれた。
絞めた家畜のような声と共にのたうち回る隊士に、一人の男が静かに手を挙げた。
顔が厚い男だ。鍛え抜かれた肉体は鎧のようにとても分厚い。体格に恵まれ更にはその身より発する気は他隊士とは一線を画す。
彼が、何者であるかを京次郎はもちろん知らない。だが、おそろしいぐらいに強い。
それこそここにいる全員が束になったとしても勝てない。そうはっきりと結論を出してしまえるほどに。
男が手を挙げた途端、辺りは再びしんと静まり返った。
少年にばっさりと腕を斬られたあの隊士でさえも、口を堅く閉ざしてしまう――とはいえ、隊士の顔色ははっきりと言って最悪の一言に尽きた。血の気がどんどん失せていった顔はひどく青白く、今にも倒れてしまいそうな雰囲気をひしひしとかもし出す足など、生まれたての小鹿野ようである。
早く医者に罹るべきではないか? 京次郎はすこぶる本気でそう思った。
「それまで。ここでは身分ではなく実力がなによりも求められる。よって合格だ」
「ありがとうございました」
球を転がしたようなその声は、正しく玲瓏の二字が相応しい。
あのような女のような男が世の中にいるのか。京次郎はしばし少年の後姿をジッと見つめていた。
何者であるかはさておき。紛れもない強者を目前にしたことで、京次郎の心はいつになく高揚していた。
まずはあの少年と剣を交えてみるのもいいかもしれない。
「――、よし。ここは一つ、私が試験役を務めてみようか」
男が一歩前に出た。
たったそれだけのことに周囲からはどよめきの声があがった。
明らかに男の登場について激しく狼狽しているのは火を見るよりも明らかである。
「おい近藤さん、アンタが出る必要はないだろう」
一人の男がいった。ただならぬ気を纏う男だ。整った顔立ちをしているのに、その顔は常に険しい。
鬼の如き雰囲気をひしひしと放つ男にたしなめられた、近藤……そう呼ばれた男はにかりと笑った。
「まぁまぁトシ、たまには俺自らがこうしてやるのも一興だろう」
「アンタが出ると怪我人どころか死人が出るかもしれないんだよ」
からからと笑う近藤に、トシ……そう呼ばれた男は深い溜息を吐いた。
二人はどうやら親しい関係であるらしい。まるで兄弟のようだ。同時に京次郎は近藤の前へと歩み出た。
隊士たちのざわつきがさっきよりも強くなった。これは入隊するために必要な試験である。
試験を受けるのだから、腰の太刀を抜いていたとしてもなんらおかしくはない。京次郎は口を開いた。
「次は俺がやりたいんだが……」
「ほぉ。いい目をしている。さっきの者といい今回は期待できそうな者が多いと思わないか? トシ」
「……お前。先に言っておくが、ウチがどこか理解してはいるんだな?」
鬼がぎろりと睨んだ。これが普通なのだとしたら、隊士たちはさぞ肝をいつもヒヤヒヤとさせているに違いあるまい。
京次郎はふっと口角を緩めた。
「もちろんだ。俺は、強くなりたいために新撰組にきたんだよ」
「強くなりたい、か。では問おう。貴様のいう強さとはなんだ?」
「そんなの決まってるだろ?」
京次郎は切先を近藤へと向けた。
「身分だなんだのと、人をそんなちんけなものだけで偉そうにする奴らを見下してやるために俺は誰よりも強くなりたいんだよ」
近藤がほんの一瞬だけ目を丸くした。
隣にいた鬼も同様の反応を示している。
程なくして近藤がにかっと笑った。
「その意気やよし。ならば思う存分、貴様の武を振るうがいい。この近藤勇が見定めてやるとしよう」
「近藤勇? それって確か……新撰組の局長なのかアンタ!?」
「む? そうだぞ」
今更気付いたのか、などという声が次々と上がった。
何故他の隊士たちがこうも狼狽していたのか、ようやく合点がいった。
局長自らが相手をするのだから、彼らが驚くのは致し方がない。
これは、願ってもいない展開だ。京次郎は不敵な笑みをふっと浮かべた。
自然と太刀を握る手にも力が籠める。目前にいるのは新撰組最強と謳われた男だ。
一介の隊士ですらない者がいきなり手合わせできるなど、滅多にないといっても過言ではない。
その最強がすぐ目の前にいるのが嬉しくて仕方がなかった。
「いきなり局長とやれるなんて光栄だな……全力でいかせてもらうぜ?」
「むろんだ。手を抜けば貴様が死ぬことになるぞ」
「ならよかった。全力出して殺してしまったら……まぁ迷わず成仏してくれや」
「ふっ……名を聞いておこうか。貴様、名はなんと言う?」
「京次郎。鷲塚京次郎だ」
「京次郎?」
近藤勇がはて、と小首をひねった。
他の隊士たちも同様に不可思議そうな顔を浮かべている。
なにかがおかしい。特に変な発言はしていないはずなのだが。京次郎も遅れてはて、と小首をひねった。
「その、確かにウチは身分などは問わず誰でも入れるが……女人ではないのか?」
「…………」
またか。遠路はるばる京の都についてもまた、そのことで揶揄されるのか。
京次郎は拳を戦慄かせた。どこへいってもこの見た目には心底苦労させられる。
「俺はれっきとした男だよこの馬鹿!」
怒りを露わに京次郎は地を蹴り上げた。
この話を聞いた鷲塚京次郎はすぐさま故郷を飛び出した。
幼いころからずっと剣と共にあった。すでにその腕前は藩内においてもはや、右に出る者は一人としていなくなってしまった。それが京次郎をひどく退屈させた。誰よりももっと強くなりたい。そのためにはやはり、自分よりも遥かにずっと強い者と闘わなければならない。たまたま舞い込んできた新撰組なる存在は、退屈極まりない京次郎にとっては正に最高の餌だった。
花の都と言われるだけあって、町の雰囲気は雅だった。
喧騒はなく、穏やかな時間が静かに流れている。
「ここが噂に聞く花の都……京か。確かに、なかなかいい街並みじゃないか」
京次郎はもそりと呟いた。
京次郎は農家の生まれである。武士の家系でないものが、いくら武士の真似事をしたところで所詮は農民にすぎない。
そうしたしがらみが、心底気に入らなかった。同じ人間なのに何故こうも階級などというものがあるのか。
証明してやればいい。農民でも武士よりもずっと強い者がいることを世に知らしめてやればいい。
さすればこのようなくだらない階級の価値も路傍の石に等しくもなろう。京次郎はそう信じて疑わなかった。
だからこそ、新撰組への興味が強くあったのかもしれない。
「新撰組は剣の腕と度胸さえあれば誰でも入れるって話だったな。今入隊しているやつらも大半も武士じゃないって聞いてる。俺みたいな奴にはもってこいじゃないか」
京次郎はにしゃりと笑った。
新撰組屯所に着くやいなや、怒声にも似たけたたましい声が聞こえてきた。
幾度となく金打音が鳴り響く。どうやら中で激しく斬り合っているらしい。
「――、失礼。ここは新撰組屯所ですが、何用でしょうか?」
門の手前、二人の若い隊士がいた。
まだ入隊仕立てなのか。彼らからは血の香りはほとんどしなかった。
あどけなさがどこか残る顔立ちも然り。京次郎は静かに口火を切った。
「この新撰組に入隊させてほしい。身分問わず剣の腕と度胸さえあれば入れると聞いたんだが……」
「えぇ、もちろんです。たった今その入隊試験を行っております。中へ入って右に進めば道場がありますので、そちらへ」
「わかった」
新撰組に所属する隊士は二百名を軽く超える。
その二百名以上が等しく剣の腕が立つ。これほどおもしろい環境はまずないといっても過言ではないだろう。
全員と死合ってみるというのも一興だ。京次郎はそんなことを、ふと思った。
道場の前では多くの隊士たちの姿があった。しんとした異様な静寂は、当事者でないのに妙な緊張感を与える。
どうやらここにきて正解だったようだ。自然と口角がくっと釣りあがるのを抑えられなかった。
皆に見守られる中、二人の男がいた。
片や若々しい女子のような少年だった。色白の肌に栗色の長髪を後ろに束ね、剣を握るその腕はとても細い。
誰かが、あのような細腕で満足に剣を振れるものなのか、とこう口にした。
言い分については京次郎も理解を示していた。剣を振るう以前に華奢な体躯では戦闘に不向きなのは言うまでもない。
片や対峙しているのは元からいる隊士である。少年とは違って鍛え抜かれた筋肉がとてもよく目立つ。
身長さについても隊士のほうがずっと大きかった。
「やぁぁぁぁぁぁっ!」
少年が先に動いた。
彼が地をとんっ、と蹴るとたちまち両者の距離は縮まった。
少年の間合いだ。手にした太刀がくんと跳ね上がった。銀色の残光を引いた白刃は天を差す。
わっと赤々とした血が舞った。あっという間に周囲は濃厚な鉄の香りに包まれた。
絞めた家畜のような声と共にのたうち回る隊士に、一人の男が静かに手を挙げた。
顔が厚い男だ。鍛え抜かれた肉体は鎧のようにとても分厚い。体格に恵まれ更にはその身より発する気は他隊士とは一線を画す。
彼が、何者であるかを京次郎はもちろん知らない。だが、おそろしいぐらいに強い。
それこそここにいる全員が束になったとしても勝てない。そうはっきりと結論を出してしまえるほどに。
男が手を挙げた途端、辺りは再びしんと静まり返った。
少年にばっさりと腕を斬られたあの隊士でさえも、口を堅く閉ざしてしまう――とはいえ、隊士の顔色ははっきりと言って最悪の一言に尽きた。血の気がどんどん失せていった顔はひどく青白く、今にも倒れてしまいそうな雰囲気をひしひしとかもし出す足など、生まれたての小鹿野ようである。
早く医者に罹るべきではないか? 京次郎はすこぶる本気でそう思った。
「それまで。ここでは身分ではなく実力がなによりも求められる。よって合格だ」
「ありがとうございました」
球を転がしたようなその声は、正しく玲瓏の二字が相応しい。
あのような女のような男が世の中にいるのか。京次郎はしばし少年の後姿をジッと見つめていた。
何者であるかはさておき。紛れもない強者を目前にしたことで、京次郎の心はいつになく高揚していた。
まずはあの少年と剣を交えてみるのもいいかもしれない。
「――、よし。ここは一つ、私が試験役を務めてみようか」
男が一歩前に出た。
たったそれだけのことに周囲からはどよめきの声があがった。
明らかに男の登場について激しく狼狽しているのは火を見るよりも明らかである。
「おい近藤さん、アンタが出る必要はないだろう」
一人の男がいった。ただならぬ気を纏う男だ。整った顔立ちをしているのに、その顔は常に険しい。
鬼の如き雰囲気をひしひしと放つ男にたしなめられた、近藤……そう呼ばれた男はにかりと笑った。
「まぁまぁトシ、たまには俺自らがこうしてやるのも一興だろう」
「アンタが出ると怪我人どころか死人が出るかもしれないんだよ」
からからと笑う近藤に、トシ……そう呼ばれた男は深い溜息を吐いた。
二人はどうやら親しい関係であるらしい。まるで兄弟のようだ。同時に京次郎は近藤の前へと歩み出た。
隊士たちのざわつきがさっきよりも強くなった。これは入隊するために必要な試験である。
試験を受けるのだから、腰の太刀を抜いていたとしてもなんらおかしくはない。京次郎は口を開いた。
「次は俺がやりたいんだが……」
「ほぉ。いい目をしている。さっきの者といい今回は期待できそうな者が多いと思わないか? トシ」
「……お前。先に言っておくが、ウチがどこか理解してはいるんだな?」
鬼がぎろりと睨んだ。これが普通なのだとしたら、隊士たちはさぞ肝をいつもヒヤヒヤとさせているに違いあるまい。
京次郎はふっと口角を緩めた。
「もちろんだ。俺は、強くなりたいために新撰組にきたんだよ」
「強くなりたい、か。では問おう。貴様のいう強さとはなんだ?」
「そんなの決まってるだろ?」
京次郎は切先を近藤へと向けた。
「身分だなんだのと、人をそんなちんけなものだけで偉そうにする奴らを見下してやるために俺は誰よりも強くなりたいんだよ」
近藤がほんの一瞬だけ目を丸くした。
隣にいた鬼も同様の反応を示している。
程なくして近藤がにかっと笑った。
「その意気やよし。ならば思う存分、貴様の武を振るうがいい。この近藤勇が見定めてやるとしよう」
「近藤勇? それって確か……新撰組の局長なのかアンタ!?」
「む? そうだぞ」
今更気付いたのか、などという声が次々と上がった。
何故他の隊士たちがこうも狼狽していたのか、ようやく合点がいった。
局長自らが相手をするのだから、彼らが驚くのは致し方がない。
これは、願ってもいない展開だ。京次郎は不敵な笑みをふっと浮かべた。
自然と太刀を握る手にも力が籠める。目前にいるのは新撰組最強と謳われた男だ。
一介の隊士ですらない者がいきなり手合わせできるなど、滅多にないといっても過言ではない。
その最強がすぐ目の前にいるのが嬉しくて仕方がなかった。
「いきなり局長とやれるなんて光栄だな……全力でいかせてもらうぜ?」
「むろんだ。手を抜けば貴様が死ぬことになるぞ」
「ならよかった。全力出して殺してしまったら……まぁ迷わず成仏してくれや」
「ふっ……名を聞いておこうか。貴様、名はなんと言う?」
「京次郎。鷲塚京次郎だ」
「京次郎?」
近藤勇がはて、と小首をひねった。
他の隊士たちも同様に不可思議そうな顔を浮かべている。
なにかがおかしい。特に変な発言はしていないはずなのだが。京次郎も遅れてはて、と小首をひねった。
「その、確かにウチは身分などは問わず誰でも入れるが……女人ではないのか?」
「…………」
またか。遠路はるばる京の都についてもまた、そのことで揶揄されるのか。
京次郎は拳を戦慄かせた。どこへいってもこの見た目には心底苦労させられる。
「俺はれっきとした男だよこの馬鹿!」
怒りを露わに京次郎は地を蹴り上げた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる