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未来新聞
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「また未来新聞が、貼られていたよ!」
大声で、なるべく目立つように。
そして、勢い良く教室のドアを開けた。
多分隣の教室にまで、聞こえていたと思う。
先生が来るまでのわずかな朝の時間。
そんな朝の時間で、各々が好きに過ごしている。
黒板の前で話をしている女子達や、窓辺から外を見ている男子達。
そんな風に朝の時間を過ごしていたみんなが、僕を見ている。
そんな勢いで、入ってきたから当然6年1組の奴らは、教室の入り口を見るだろう。
いつも教団の前で、大声で話している三人組だって何事?とこちらを見ている。
大成功。
梔子 晴人(くちなし はると)は、大変上手くいったぞと思い、両手に力を入れた。
注目を集めたぞ!
まぁ大きな音で、入ってくれば誰だって目立てる。
そして、入ってきたのが梔子だと分かればすぐに興味が無くなるだろう。
だが、今回は違う。
「本当なのか?クチアリお前どこで、見つけたんだ」
やったぞ!
この6年1組の中心人物であり、まとめ役。
彼が走れば、歓声が湧き、笑えばクラスの雰囲気が明るくなる爽やかイケメン。
その中村 勇(なかむら いさむ)が、教室の窓辺からこちらを興味ありげに見ている。
勇が、クチアリと言ったのは先生が僕をそう呼んでいるからだ。
「梔子!お前は本当におしゃべりが好きな奴だ。梔子じゃなくてクチアリだな」
先生の言葉が、クラスでウケてそれでめでたくあだ名が、クチアリに決まった。
そんな事よりも、勇が求めているのはもちろん梔子が左手に持っているものだ。
それは、いかにも手作りってかんじのペラペラの紙に書かれた新聞。
「さっき西階段の壁で見つけたんだ」
この学校は、東階段、西階段がある。
東は、僕達6年生から4年生の下駄箱があり、用がない限りは東階段を使う。
だから、みんなに見られない場所だったのだろう。
「そんな所に貼られてたのか。下級生の奴らは、新聞の事なんて知らないだろうし、話にも上がらなかったんだな」
「じゃあ、なんでクチナシは、西階段にいたの?」
黒板の周りに集まっていた三人組の内の1人の
大森 和江 (おおもり かずえ)がこちらに聞いてきた。
三人組の中では、一番背が低く4年生くらいと言っても気付かれないだろう。
そんな彼女は、眼鏡を掛けていて頭が良さそうに見えるから、委員長と呼ばれている。
「流石が委員長。細かい所に気がつきますね。でも、そんな事はどうでも良くて、気にするべきはこの未来新聞に何が書いてあるかだよ」
和江の疑問をスルーした形になったので、不満そうな顔しているが、どうでもいい。
クラスが注目している未来新聞。
大きな画用紙にクレヨンで描いた絵が載っている。
その絵についてなんの説明も、何の為に書いたのか分からない。
ただ上の方に未来新聞と書き殴ってように書かれている。
誰が張り出しのか、いつ貼っているのか。
誰にも分からず、正体不明の未来新聞。
最初にこれが貼られたのは、今年の3月だった。
もう少しで、春休みになるとみんな浮かれていた頃にこの新聞は、この教室の前に貼られていた。
教室の壁には、様々なポスターが貼られており、いつのまにかその中の一枚として紛れ込んでいたのだ。
描いてあった絵は、沢山の人が一つの空間に集められて、その一番前にいた人物の頭から黒いものが落ちている。
そんな感じだった。
最初は、その謎な新聞に興味を持った。
誰が貼ったのか?
クラス中で、話題になって犯人探しのようなものも始まった。
しかし、一向に名乗り出るものがおらず、未来新聞の話題も旬が過ぎてしまい、ほとんどのものが忘れてしまった。
だが、僕らが6年生に進級する入学式に事件は起きた。
春休みが終わりって、入学式の時の事だった。
全校生徒が体育館に集まり、学校の始まりを再確認する。
前方には、自分達から見ても子供だなぁと思う新入生がいる。
そんな新入生に向けて、言葉を送る校長先生。
うちの小学校の校長は、ちょっと古臭い。
話は長いし、口うるさい。
だから、ちょっと生徒からは人気はない。
そんな校長の話と春の暖かさのコンボで、梔子は半分で聞いていると周りが、ざわざわしている事に気がついた。
前の方が一番ざわついてるように思ったから、前の方を見てみると慌てた様子で校長か頭をいじっていた。
「校長は、何をしているの?」
「クチアリ見てなかったのかよ。あの校長ヅラだったんだよ」
「まじか。眠くて気づかなかった学校
隣に座っている中村に聞いてみると、どうやら校長が少し首を下げた時に髪がズルリと床に落ちてしまったらしい。
眠くて目も半開きだったから、その瞬間を見れなかった。
絶対校長慌ててただろうな。
慌ててヅラを頭に乗せた校長は、何事もなかったと言うばかりにそのままステージから降りていた。
しかし、いくら校長が何事もなかったように振る舞いしても、僕たちは小学生。
体育館は笑い声と共にお祭り騒ぎになった。
先生達も、突然の事に驚いてしまいこの騒ぎを止めるのに随分と時間をかけていた。
これだけなら、春のちょっとしたハプニングで終わり。
だが、僕らが新しい教室6年1組に戻ってきた瞬間に誰が言った。
「もしかして、未来新聞って未来を予言しているんじゃ」
大声で、なるべく目立つように。
そして、勢い良く教室のドアを開けた。
多分隣の教室にまで、聞こえていたと思う。
先生が来るまでのわずかな朝の時間。
そんな朝の時間で、各々が好きに過ごしている。
黒板の前で話をしている女子達や、窓辺から外を見ている男子達。
そんな風に朝の時間を過ごしていたみんなが、僕を見ている。
そんな勢いで、入ってきたから当然6年1組の奴らは、教室の入り口を見るだろう。
いつも教団の前で、大声で話している三人組だって何事?とこちらを見ている。
大成功。
梔子 晴人(くちなし はると)は、大変上手くいったぞと思い、両手に力を入れた。
注目を集めたぞ!
まぁ大きな音で、入ってくれば誰だって目立てる。
そして、入ってきたのが梔子だと分かればすぐに興味が無くなるだろう。
だが、今回は違う。
「本当なのか?クチアリお前どこで、見つけたんだ」
やったぞ!
この6年1組の中心人物であり、まとめ役。
彼が走れば、歓声が湧き、笑えばクラスの雰囲気が明るくなる爽やかイケメン。
その中村 勇(なかむら いさむ)が、教室の窓辺からこちらを興味ありげに見ている。
勇が、クチアリと言ったのは先生が僕をそう呼んでいるからだ。
「梔子!お前は本当におしゃべりが好きな奴だ。梔子じゃなくてクチアリだな」
先生の言葉が、クラスでウケてそれでめでたくあだ名が、クチアリに決まった。
そんな事よりも、勇が求めているのはもちろん梔子が左手に持っているものだ。
それは、いかにも手作りってかんじのペラペラの紙に書かれた新聞。
「さっき西階段の壁で見つけたんだ」
この学校は、東階段、西階段がある。
東は、僕達6年生から4年生の下駄箱があり、用がない限りは東階段を使う。
だから、みんなに見られない場所だったのだろう。
「そんな所に貼られてたのか。下級生の奴らは、新聞の事なんて知らないだろうし、話にも上がらなかったんだな」
「じゃあ、なんでクチナシは、西階段にいたの?」
黒板の周りに集まっていた三人組の内の1人の
大森 和江 (おおもり かずえ)がこちらに聞いてきた。
三人組の中では、一番背が低く4年生くらいと言っても気付かれないだろう。
そんな彼女は、眼鏡を掛けていて頭が良さそうに見えるから、委員長と呼ばれている。
「流石が委員長。細かい所に気がつきますね。でも、そんな事はどうでも良くて、気にするべきはこの未来新聞に何が書いてあるかだよ」
和江の疑問をスルーした形になったので、不満そうな顔しているが、どうでもいい。
クラスが注目している未来新聞。
大きな画用紙にクレヨンで描いた絵が載っている。
その絵についてなんの説明も、何の為に書いたのか分からない。
ただ上の方に未来新聞と書き殴ってように書かれている。
誰が張り出しのか、いつ貼っているのか。
誰にも分からず、正体不明の未来新聞。
最初にこれが貼られたのは、今年の3月だった。
もう少しで、春休みになるとみんな浮かれていた頃にこの新聞は、この教室の前に貼られていた。
教室の壁には、様々なポスターが貼られており、いつのまにかその中の一枚として紛れ込んでいたのだ。
描いてあった絵は、沢山の人が一つの空間に集められて、その一番前にいた人物の頭から黒いものが落ちている。
そんな感じだった。
最初は、その謎な新聞に興味を持った。
誰が貼ったのか?
クラス中で、話題になって犯人探しのようなものも始まった。
しかし、一向に名乗り出るものがおらず、未来新聞の話題も旬が過ぎてしまい、ほとんどのものが忘れてしまった。
だが、僕らが6年生に進級する入学式に事件は起きた。
春休みが終わりって、入学式の時の事だった。
全校生徒が体育館に集まり、学校の始まりを再確認する。
前方には、自分達から見ても子供だなぁと思う新入生がいる。
そんな新入生に向けて、言葉を送る校長先生。
うちの小学校の校長は、ちょっと古臭い。
話は長いし、口うるさい。
だから、ちょっと生徒からは人気はない。
そんな校長の話と春の暖かさのコンボで、梔子は半分で聞いていると周りが、ざわざわしている事に気がついた。
前の方が一番ざわついてるように思ったから、前の方を見てみると慌てた様子で校長か頭をいじっていた。
「校長は、何をしているの?」
「クチアリ見てなかったのかよ。あの校長ヅラだったんだよ」
「まじか。眠くて気づかなかった学校
隣に座っている中村に聞いてみると、どうやら校長が少し首を下げた時に髪がズルリと床に落ちてしまったらしい。
眠くて目も半開きだったから、その瞬間を見れなかった。
絶対校長慌ててただろうな。
慌ててヅラを頭に乗せた校長は、何事もなかったと言うばかりにそのままステージから降りていた。
しかし、いくら校長が何事もなかったように振る舞いしても、僕たちは小学生。
体育館は笑い声と共にお祭り騒ぎになった。
先生達も、突然の事に驚いてしまいこの騒ぎを止めるのに随分と時間をかけていた。
これだけなら、春のちょっとしたハプニングで終わり。
だが、僕らが新しい教室6年1組に戻ってきた瞬間に誰が言った。
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