上 下
31 / 33
第二章 二度目の異世界

29.護る

しおりを挟む

ユリウスside

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「俺は本当に身勝手だな………」

 シュウとまた離れたくない、俺の手元にずっと居てほしい、俺だけを見て、俺だけを愛してほしい……
 そう思ったらシュウの気持ちを考えずに身勝手な愛を押しつけてしまった。

「殿下、自分で気づけたことは凄いことです。だからシューヤ様にちゃんと謝罪されて今後についてしっかり話し合ってください」

 そう言ってオーウェンは微笑んだ。

 俺は小さく頷き、膝の上に置いた両手を握りしめた。

「………刻印については、シュウを怯えさせたくなかったんだ」

「妊娠が出来ることについてですか?」

「それもあるが…………まだもう一つ、シュウに相談無しに刻印を付けた理由がある」

「どういうことですか?」

「…………ディルバルドがシュウに興味を持ったからだ」

「! そんな、まさか! もしかしてこれから手を出してくる可能性があるというわけですか!?」

「そうだ」

「一体どうして! ディルバルド様は失礼ながら、シューヤ様と同じ人間を見下しています。ですので、興味を持たれないはずですっ」

 オーウェンは肩で息をし興奮した様子で叫んだ。

「ああ……だが、状況が違う。あいつは……俺の大切にしているものを奪いたがるだろ」

「っ! まさか……」

 俺はコクリと頷いた。

「昨日父上の執務室でのことを思い出せ」

「……………殿下が、シューヤ様を大切に抱きしめていたのを見たからですか?」

「あの時のあいつの目は今でも殺したいと思うよ。あれはオモチャを見つけた時の目だ、そしてシュウに邪な考えをもったはずだ」

 そうだ。あいつは昔から俺に対抗心剥き出しだった。そして俺の周りにある物や人を欲しがり、そして飽きたらあっさり壊して殺しての繰り返し。
 もちろん父上も知っているが、王妃が上手く処理をして証拠が掴めていない。いつか絶対に尻尾を掴んでやると思っていたが……

「オーウェン、お前もしつこく自分の元に来いと言っていただろう」

「はい。あれはそういう意味だったのですね」

 まぁ、それだけじゃないが。
 オーウェンの剣の腕は父親の騎士団長
に次いでのNo.2だ。それを従えていることで、自分の権威を周りに知らしめたいのだろう。オーウェンはほっといても大丈夫だが……

「シュウに手を出すなら手段は選んでられなかった。そして何よりシュウを怖がらせたくなかったんだ……だから」

「殿下……もしかして」

 オーウェンは気づいたのだろう。刻印のもう一つの秘密に

「あの刻印は俺が改良したものだ。邪な気持ちや無理やりシュウに触れることは出来ない。無理に触れようすれば加護が発動する」

 俺はずっと15年前のあの日の事が忘れられない。頭にこべり付いて離れない呪詛に侵食されるシュウの姿を、守れなかった自分の未熟さをまた繰り返さないように。


 今度こそシュウを護るために———





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
BL大賞お疲れ様でした。
投票してくださった方々、本当にありがとうございました。

結果はどうあれ、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

次回、秋也視点に戻ります。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

BL
 16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。    僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。    目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!  しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?  バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!  でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?  嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。 ◎体格差、年の差カップル ※てんぱる様の表紙をお借りしました。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

処理中です...