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第二章 二度目の異世界
19.空白の時間
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———俺、どうやってまた異世界へ来れたの?
そう、まずはこの謎を解きたい。
「そうか……そっちが先かぁ」
ユリウスがぼそっと小声で何か言った。
「ユリウス?」
「あぁ、ごめん。シュウは俺が召喚したんだ」
「しょう、かん?」
召喚って、それこそノベライズや漫画で異世界へ行く最も多い方法。
てことは俺の二度目の異世界は召喚なのか。
「そんな力が使えるようになったなんて、ユリウスはすごいね!」
俺は尊敬の眼差しでユリウスを見た。
「いや、使えるようになったというか……そもそもこの召喚は一般的なものとはちょっと違うんだ」
「どう違うの?」
「一般的な召喚は魔物や悪魔、精霊などを呼び出して契約するためのものだ」
「そうなんだ。 あれ?それなら俺は召喚出来ないんじゃないの?」
「あぁ、一般的な召喚では出来ない」
「え?俺ってもしかして魔物や悪魔として召喚されたりしたの?」
「いや、シュウは人間だ。俺が行った召喚は特殊でそれとは全く違うから安心してくれ」
「よかったぁ~ちなみに特殊な召喚って?」
「それについては今から順を追って話す」
「うん」
ユリウスは膝の上に置いた両手をグッと握りしめ、俺を真っ直ぐに見つめた。
そしてユリウスは話し出した。あの日、俺たちが離れ離れになってからの15年間を———
◇◆
まず俺が元の世界に帰還する原因となったあの出来事の顛末を話してくれた。
例の影たちはやはり妖精の力を集めていて、その力を良くないことに使っているのがわかったそうだ。
俺が受けたあの黒くて嫌なものの正体は【精霊石】と呼ばれているもの。しかし、あの日見た石は本来の色とは異なっていて黒く濁っていた。
妖精石は何百年もの間、神域に力が集まって少しずつ結晶となった物の事だという。
あの時の妖精石はそれとは真逆 “負” が集まって塊となったものだそうだ。
それは【呪詛】と呼ばれていて、これを作り出す方法は妖精から無理矢理力を奪う、もしくは傷つけることによって生成される。
つまり、妖精たちの怨みの感情が固まったものが呪詛。
しかし、妖精を傷つけるという事は妖精王の怒りを買うことになる。だから作った者、妖精を傷付けた者は必ず報いを受けると昔から言われている。
だから禁忌を破る愚か者はここ1500年は居なかったのにもかかわらずだ。
「ひどい……妖精たちを傷付けるなんて」
「シュウ……」
ユリウスは俺の肩を抱き寄せ、続きを話した。
呪詛で今にも死にそうな俺を必死にユリウスは救おうとした。
しかし、ユリウスには救うことが出来なかった。
ユリウスはその時の事を今でも後悔しているみたいで、拳を強く握り締めていた。
そんな俺を妖精王が異世界に返すことで救ってくれたそうだ。
なぜ救えたかは妖精王にしかわからない。そのあと俺を異世界に返した妖精王は眠りに入ってしまったらしい。
いつ目覚めるかわからないと。
「妖精王が……」
「あの日、妖精王は俺に言った」
“ユリウス。大丈夫だ、私を信じてくれ。シュウとは必ず再会出来る、だから
それまでに力をつけるのだ、そして時が来たらもう一度召喚するんだ————” と
「もう一度召喚……」
「だから俺は力をつけるために父の元へ戻ったんだ」
その後駆けつけたお父さんの部下達によって、影は撃退されたそうだ。
「じゃあ、ここはお父さんの家なんだ」
「あぁ」
「もしかして……貴族?」
「…………あぁ」
ん?
「俺は父の元でいろいろ学んだ。魔法、語学、剣術、馬術、帝王学などを知れば知るほど俺の無知と無力さに心底嫌気がしたよ……」
「ユリウス……」
「俺は必ずシュウに会う。それだけのために今日まで生きてきた」
真っ直ぐ俺をみる。
「……っ」
あの呪詛でアトラさんは亡くなった。そして同じもので俺も死にかけたんだ。ユリウスの心の傷は考えられないくらい深く傷ついただろう……
「ごめんね……」
「シュウは悪くない。俺に力がなかったんだ……」
「ユリウス……」
ユリウスは俺の額に自分の額をくっつけた。
「あの日、俺を必死に守ってくれてありがとう。今度は俺がシュウを命に変えても守る」
金色の瞳で真っ直ぐに俺を見て言った。
「……っ、それは俺の台詞だよ。またユリウスと会えて嬉しい……ありがとう。でも命は大事にして」
「あぁ、約束する」
◆◇
「シュウは変わってないなぁ、あの時のままで優しくていい匂いだ」
ユリウスは俺をベッドの上で後ろから抱きしめて首筋を吸っている。
「んっ、ユリウス。くすぐったい」
ぐりぐりと頭を擦り付けてくる。こういう所はほんと変わってないなぁ。可愛い。
「15年ぶりのシュウなんだ。堪能させてくれ」
(15年……)
「妖精王は時が来たらシュウを召喚しろと言った。しかしそれがいつかわからなかった。幸いだったのは召喚方法を父上が知っていたことだ」
「お父さんが?」
それからユリウスは何度もその方法で俺を召喚しようとしたが、召喚は失敗続き、お父さんには「まだ時ではない」と言われたが、それでもユリウスは何度何度も召喚しようとした。しかし無情にも気がつけば15年経っていた。
(そんなに長い間、ユリウスは俺を召喚しようとしてたなんて)
「ユリウスの15年に比べたら俺の半年なんて……」
「半年?」
「?そうだよ」
「あ~だからシュウの姿は変わってなかったのか、てことはシュウは19歳?」
「うん。あれ?じゃあユリウスは」
「あぁ、20歳になった」
まさかの年上になってたーーっ
「いつの間にか年上になってたね。まだ幼い男の子で、可愛かったのに」
ちょっと残念な気持ちになりながら俺はユリウスの頭を撫でた。
(久しぶりのユリウスの髪の毛はサラサラで気持ちいい~)
うっとりしながら撫でていると。
「もう子どもじゃない」
と、ムッとし俺の指をカプッと甘噛みしてからペロッと官能的に舐めた。
「なっ!ユリウス!?」
「シュウ、俺はもう子どもじゃない」
「う、うん。ごめんね」
「そういうことじゃなくて」
小声でユリウスは何か言い、ベッドから降り俺の前にひざまついて
「さっきの続きだけど、シュウは特殊な召喚されたって言ったよね?」
「う、うん」
「俺が行った召喚は花嫁を呼ぶものだ」
「え?」
「シュウ、愛してる。俺と恋人になってくれ。そして俺と本当の家族になってほしい」
と、蕩けるような眼差しで囁いた。
え?ちょっと待って?俺が花嫁??
何が一体どうなってるの??
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お気に入り100!ありがとうございます。
今日中にもう一話いけそなら更新します。
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