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第二章 二度目の異世界
16.召喚
しおりを挟む第二章開幕です。
15話、加筆修正してます。
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「お兄ちゃん、最近ちゃんと食べてる? お正月は帰ってくるんだよね?パパとママが久しぶりに日本に帰ってくるからみんなで初詣に行こうって話してるんだけど、どうかな?」
「…………そうだね。考えておくよ」
「兄ちゃん!僕、待ってるからね」
「うん……」
ピッ(通話を終了する)
俺は瑠夏たちとのビデオ通話を切ってベッドへ倒れ込んだ。
「ユリウス……」
左手首にある金の腕輪を撫でる。
帰還して半年が経った。季節は夏から冬へ変わり、年の瀬が近づいてきた。
でも俺はあの夏から時間が止まっている。
あの日、元の世界へ帰還した俺は瑠夏たちにもう一度異世界に行けないか相談をしたが、現実は残酷だった。
それでも俺は諦めきれなくて、寝る間も惜しんでネットや図書館で調べ続けた結果、寝不足と栄養失調で倒れてしまった。
瑠夏と冬真にめちゃくちゃ怒られた。
しばらく入院していたが、その間病室でも俺は調べ続けた。そんな俺の姿をみた2人は見てられなかったのだろう、一緒に方法を探すと言ってくれた。
でも一日また一日と、日にちが経つにつれて、あの日々は夢だったのではないかと思うことが何度もあった。
その度にこの金の腕輪を見て、ユリウスとの思い出は本物だと証明してくれた。
この腕輪は俺の唯一の心の拠り所となっていた。
でも、もう限界だった。
「ユリウス……ユリウスっ あいたい、あいたいよぉ」
頭が痛い…もろくに寝れてもいない。
俺は自分の身体を抱きしめベッドの上で丸まって涙を流した。
その時だった。
———………っ
(?声が聞こえたような)
———…シ………こ…………れっ
「え?」
俺はベッドから体を起こして周りをキョロキョロと見渡した。
「気のせい?」
———…こた………くれっ
その時においがした。ずっと探していたあのにおい。俺は無意識に腕輪を握りしめていた。
「!?」
まさか、嘘でしよ?夢じゃない……よね? 俺の頭の中は混乱と期待で埋め尽くされていく
だってこのにおいは、俺がずっと会いたくてたまらなかった
「っ……」
俺は両手を上に向けて広げ、無我夢中に声を上げた
「俺はここだよ、ここにいるよっ」
涙が溢れて止まらない。
「ユリウスっ」
———見つけた
あの日と同じ金色の光が俺を包み込んだ。体が一瞬浮き、そして
彼が俺を優しく抱きとめてくれた。
「シュウ……やっと会えた。もう二度と離さない。ずっと俺の側に居てくれ……」
ずっと、ずっと会いたかったあたたかい陽だまりのような匂いと愛しい金色の瞳が俺を見つめる。
「俺も会いたかった」
こうして俺は二度目の異世界召喚されたのだった。
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ここからユリウスの溺愛と執着が始まります。
よろしくお願いします。
第二章がこの物語のメインになります。最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
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