【第二章開幕】男子大学生は二度召喚される

皇める

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第一章 一度目の異世界

14.帰還

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〈———すまない、シュウ。必ずお前と    は  できる。だから今は   〉


 誰かが俺に話かけている。この声は









 ピコンっ
 スマホのメッセージ受信音がする。


「んっ……うーん。あれ、ここは?」

 俺は慌てて飛び起きた。

「ここは俺の部屋だ。え?なんで?さっきまで異世界に居て、変な男と戦ってそしてユリウスを庇って俺は……」

 俺は無意識に自分の体を抱きしめた。
 あの時の体が引き裂けるような痛みも手の傷も無くなっている。

「え?もしかして、夢? いや、あんなにリアルなこと。夢とは考えられない」

 その時、シャラン……
 左手に付けていたあの金の腕輪が見えた。

「ああぁ……」

 涙が止まらなかった

「ユリウス、ユリウス! ごめん、ごめんね……」

 俺はしばらく金の腕輪に向かってユリウスの名前を呼び続けた。






◇◆◇





「うわぁ!お兄ちゃん何その酷い顔。 てかさっきLINKリンクみたけどどういう事なの?異世界に行ってたってマジなの??」

「え?何それ。マジなの兄ちゃん」

 瑠夏と冬真が玄関で出迎えてくれた。

「………その話を今からするから冬真の部屋に集まってくれないか」

 俺は異世界から帰還して2日後、実家に帰省した。







「———なるほど、お兄ちゃんは2日前、帰省するために荷造りをしていたら、どこからともなく子どもの泣き声がして、そしたらいきなり床が光った。んで、目を開けたら異世界で、そこで出会った獣人の子どもと一緒に暮らしてた」

「うん」

「兄ちゃんは魔力は無かったけど、妖精王様に魔法石を貰ってそれで変な奴らと戦ってた。でも男が変な魔法を使ってきて、その標的になった獣人の子どもを兄ちゃんが庇って気がつけばこっちに帰ってた」

「かいつまんで話したけど、その解釈であってるよ」

 俺は瑠夏と冬真にユリウスと暮らした日々を話した。

「正直なところ、信じられないって気持ちが強い。でもお兄ちゃんがそんな嘘を付かないのは私たちが一番よく知ってる」

「うん、僕もそう思う」

「2人ともありがとう……」

 俺を信じてくれた2人に感謝した。




「その世界でお兄ちゃんはどれくらい暮らしてたの?」

「だいたい3ヶ月くらいだったかな」

「3ヶ月……でもこっちに戻ったら3時間しか経ってなかったんだよね?」

 そう、3経ってなかったのだ。

「作品によっては異世界とこっちの時間の流れが違う場合もあるし、同じって事もあるよね。でも一番の謎は何で兄ちゃんが異世界に転移したって事だよ」

 さすが冬真、やっぱりそこに疑問を持つか。

「3ヶ月向こうで暮らしたけど、特に何か使命があって向こうに行ったわけではなかったよ。でも強いて言うなら、子守唄に不思議な力があった事だけだし」

「「子守唄?」」

 子守唄についても2人に話した。

「あの子守唄か~言われてみれば確かに不思議だったかも。なんか落ちつくっていうか、暖かかい何かに包まれて安心するんだよね」

「実は私もなのよね」

 なんと!まさかの新事実。

「もし子守唄が異世界に行った鍵ならまた異世界に転移するかもしれないけど、あまり期待はしないほうがいいよ」

 それでも俺は、2人に俺は聞かないとといけない事がある。

「………異世界って、どうやったら行けるのかな」

「お兄ちゃん……それは」

「無理だと思うよ」

 冬真がはっきり言った。

「ちょっと冬真!」

「ここははっきり言ったほうが兄ちゃんためだよ。 姉ちゃんもわかってるんでしょ?」

「それは……」

 瑠夏が言い淀む。

「それでも!……それでも俺は今すぐ行かないと行けないんだっ、ユリウスをまたひとりぼっちにさせてしまったことに後悔しているんだっ」

 涙がまた溢れてきた。
 瑠夏がそっと、俺の手を握った。

「お兄ちゃん……異世界に行けるなら今すぐそのユリウスって子のために行くべきだと、私は思う。でも…でもね、お兄ちゃんは本当はわかっているんでしょ?」

「………………」

 俺は言いたくなかった。言ったら認めないといけないから。



 しばらく沈黙が流れた。
 その沈黙を破ったのは冬真だった。

「はぁ…… 異世界に行ったら行ったきり、もし帰れてももう一度あっちには行けない」

 ビクっと俺の方が揺れた。
 わかってた、わかってたよ。そんな都合よく異世界に行けないってことに。それでも俺は

「………っ、あ”あああああああ」

 ユリウスにもう会いたい、今すぐ会いたい。そして謝りたい。でもそれが出来ない………ごめん、ごめんねユリウス……

 この事実だけはどうしても俺は受け入れることができなかった。


 そんな泣き叫ぶ俺に瑠夏と冬真がずっと抱きしめて側に居てくれた。










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次で第一章ラストです。
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