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第一章 一度目の異世界
12.腕輪と作戦
しおりを挟む誤字脱字のご報告ありがとうございます。
第一章は残すところあと3話です。
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〈——なるほど、それは災難だったな。 おぬしたちが無事でなによりだ〉
次の日、俺たちは妖精王に報告しに妖精界にやってきた。
「はい。しかし、大したお力になれず誠に申し訳ございません」
俺は頭を下げた。
〈よいよい。もとより無理難題を言っているのは私の方だ。それに無駄足という訳でもないぞ〉
実はそうなのだ。それはルルが俺から離れた理由に関係している。
〈アタシがシューヤから離れた理由はあの時と同じ気配とにおいを感じたからなの〉
「気配とにおい?」
ルルの話だと、気配は人間とは違い妖精に違いものだということと、酔うような甘いにおいがしたかららしい。
(においに酔う……猫がまたたびに酔う感じなのかな?)
「その原因の元は見つかったの?」
〈いいえ、隠れるのが上手いみたいで姿は確認出来なかったわ。でもそのにおいに誘われて集まった妖精を見つけたの〉
においに誘われてきた妖精は、少しだけ精霊力を奪われて幸い意識はあった。その妖精は妖精王にこう話したらしい。
影がいきなり自分の力を奪っていったと。
「力を奪う……ですか。その妖精には怪我はなかったのですか?」
〈あぁ、今回はな。おそらく向こうは私が動いたことに薄々勘づいているのであろう。だから警戒して精霊力を全部奪わなかった。という感じだろう〉
(精霊力を奪う理由……)
「何かに必要? もしくは集めている?」
ぶつぶつと考える俺に。
〈恐らくその両方であろう〉
妖精王は確信をもって言った。
「一体何のために……」
益々意味がわからない。
〈それはそうと〉
妖精王が紅茶を飲みながら俺を見た。
〈それはなんだ? おぬしの腹に抱きついているのはユリウスであろう?〉
はい、そうです。
ユリウスは今コアラのように抱きついている。
〈昨日帰ってからずっとシューヤから離れないそうですよ〉
人の姿のルルがクッキーに齧りつきながらユリウスを横目で見る。
ちなみにクッキーは俺の手作りだ。立って話すより座った方がいいと妖精王はテーブルとイスを用意してくれた。それなら茶請けで何か持っていこうと思い、今朝焼いたのが、このバタークッキーだ。
〈んぐっ!〉
ルルがクッキーを喉に詰まらせた。
「ルル、そんなに慌てて食べるからだよ。はい、お茶」
俺は花の香りがする紅茶をルルに差し出した。それを慌てて飲むルル。
ゴクゴクゴク……
〈ふぅ~助かったわ。ありがとう、シューヤ〉
そんな俺とルルのやりとりを見ていたユリウスは
「シュウはぼくのなのに……」
コアラ状態のユリウスが拗ねた声で言う。昨日俺がガラの悪い男たちに襲われかけたことに、ショックと怒りでユリウスはさらに俺から離れようとしなくなった。
〈シューヤはアンタのものじゃないでしょ!そんな我儘言ってたら嫌われるわよ〉
「!!??」
ショックを受けた顔で俺をみるユリウス。
「嫌いにはならないよ。でもちょっと離れてくれると嬉しいかな~(主に胸の問題でね)」
と言うと、ユリウスはさらに俺に抱きついてぐりぐりと頭を擦りつけてくる。
(ちょっ、ユリウス!それやめて、乳首が…乳首があああああ)
仕方ない、ここは秘技・子守唄
~♪
「すぅ……」
ユリウスは俺に抱っこされたまま眠ってしまった。
〈やっと静かになったわね。にしてもアナタの子守唄、凄いわね。アタシたちの精霊力を回復させれるだけじゃなく、ユリウスにも効果があるのなんて〉
「最近謎が増えすぎて俺の頭はパニックだよ」
〈………〉
(妖精王?どうしたのかな?)
俺は自分の紅茶を飲みながらユリウスの頭を撫でた。
きらん——
〈あらシューヤ、綺麗な腕輪ね。昨日は付けてなかったわよね、どうしたの?〉
ルルは俺の左手に付けている金の腕輪を見ながら指差した。
「あぁ、これね。昨日ユリウスに貰ったんだ。お守りだって言ってた。でもすごく高価なものっぽかったから貰えないって言ったんだけど、ユリウスに押し負けちゃって」
〈ほぉ……これには加護の魔法がかかっているな〉
妖精王が腕輪を興味津々で見て言った。
「加護ですか?ユリウスも同じものを付けてますが、それは一体どんな加護ですか?」
〈うむ……それはユリウスに直接聞くが良い〉
何故か歯切れの悪い妖精王の言葉に疑問を持ったが、俺たちは次の作戦を考えた。
◇◆◇
〈今回の事で、影とやらはさらに警戒するはずだ〉
「そうですね。影を誘き出せればいいのですが……」
〈それならアタシが囮になるわ!〉
ルルが立候補した。
「それはダメだよ!危険すぎる」
慌てて俺は却下したが
〈アタシは一度捕まっているし、奴らのやり口も知っているから対処もできる!アタシ以外、適任は居ないでしょ?〉
「確かにそうだけど……もし、失敗したらルルが傷つく。俺はそれを見たくない」
〈シューヤはほんとお人好しよね〉
ルルが呆れたように言った。
「お人好しって、そこは心配って言ってほしいな」
〈ふふっ。でも、もしもの時に備えて魔法が使えないと不利よねぇ。アタシはまだ攻撃魔法は使えないし〉
確かに、魔法はあるとないとじゃ全然違う。
〈ならこれを持っていけ〉
妖精王が机に何かを置いた。
〈魔法石だ。各属性の魔法が一回ずつ使える〉
「ありがとうございます!!!」
妖精王は世界の理で、人間界に安易に来てはいけないらしい。なので今回、魔法石を俺たちに授けてくれた。
〈無駄撃ちしなければ、十分なはずだ〉
「わかりました」
そして俺とルルは明日、もう一度街へ行くことになった。今日はそれでお開きになったのでユリウスを連れて妖精界を後にした。
これがユリウスと過ごす最後の夜となるとも知らずに——
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金の腕輪は対になってます。
腕輪の加護は追々出てきます。
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